軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

アニマと釣りに行こう④

一泊することを決めて食事が終わると、アニマは手早くハミングバードを飛ばして連絡をしてくれた。こういった気遣いと素早い行動は流石である。

その間に俺はマジックボックスの中からずっと使ってみたかった例の魔法具を取り出して準備を始める。

それは以前俺が六王祭のオークションで買った携帯式ペットハウスに似た魔法具で、正式名称は小型携帯式仮設住宅設置魔法具、そのログハウスタイプである。

これはその名の通り、魔法具を設置して起動させることで家を出現させる凄い魔法具である。ペットハウスを買ったので、人が泊まれる同タイプの魔法具も買っておこうと思い購入したのだが、なかなか使う機会が無かったものだ。

あとから知ったことではあるが、この小型携帯式仮設住宅設置魔法具は、実はかなり一般的というか沢山の種類がある人気の魔法具だったりする。

特に冒険者の人たちには必須級の魔法具らしく、ある程度お金がたまるとまず始めにこの魔法具を買うことが多いとのことだ。

野営をするにしてもテントより雨風もしっかり防げるうえに、設置の手間がほとんどないので最適らしい。

俺が購入したログハウスタイプとかになるとかなり高価だが、小屋タイプなどの小さなものであれば値段も手ごろで手が出やすいらしい。

実際元冒険者であるルナさんも、小型の家タイプのものを所持していると言っていた。

まぁ、それでも同じサイズの家より遥かに高い上に連続稼働……仮設住宅を出現させておける時間にも制限がある上、マジックボックスと違い追加でなにかを収納できたりはしないので使いどころは限られる魔法具ではある。

ちなみに俺が購入した最高級ログハウスタイプは、二階建てでお風呂も付いてて二日ぐらいは連続で出現させることができる高級品で……お値段は白金貨400枚。日本円にして40億円である。例によってアリスから購入したものなので、通常より高いのだが高品質である。

「えっと、この補助魔法具を設置したいところに置いて、一度起動っと」

「障害物はないようですね」

使い方としては補助魔法具を起動させると、周囲を探知して仮設住宅を出現させることができるだけの空間があるかどうかと、障害物の有無を調べてくれる。補助魔法具の色が赤から青に変われば設置可能ということだ。

「……あっ、でもこれたしか大型のものは、設置場所と設置期間を国の専門部署に連絡して許可を貰わなくちゃいけないんだっけ?」

「そうですね……ご主人様は国の法に関しては適応対象外なので大丈夫かと思いますが……ハミングバードでライズ殿あたりに連絡はしておいた方がいいかもしれませんね」

「だね。じゃ、実際の設置はあとですることにしてライズさんにハミングバードを飛ばして……返事を待つ間に釣りの続きをしよう」

「はい!」

というわけでハミングバードをライズさんに飛ばして、改めて釣りを再開――って、早っ!? もう返信きたよ!?

釣りを再開するまでもなく即座にライズさんからハミングバードが返ってきた。内容を要約すると『連絡ありがとう、全然問題ないよ。というかキャンプとか立場的になかなかできないから羨ましいよ』といった感じだった。

機会があったら一緒に行きましょうと返信をして、起動途中だった魔法具を起動させる。

「……おぉ、凄いな。いや、分かってはいたけど本当に突然家が出てくるとは……魔法ってやっぱりすごいな」

「立派なログハウスですね……どうしますか、先に中を確認しておきますか?」

「そうしようか、部屋とかも決めないといけないしね。アリスの話では、最低限の家具類は最初から搭載されてるらしいけど……」

「アリス殿が作ったのであれば、間違いはないでしょう」

……本当にアニマはアリスを高く評価しているみたいで、発言からも厚い信頼が伺える。

ともあれまずは中の確認ということでアニマと一緒にログハウスに入る。木の匂いがなんとも心地いい。

一回は広めの部屋が大きく、キッチンやリビングもかなりのもので、大人数でもまったく問題なさそうな造りだ。二階には個室が並んでおり、こちらが寝室になっているらしい。

二階は四部屋……リビングとかも合わせると、10人ぐらいでも問題なく泊まることができそうな感じだ。

お風呂は……檜風呂っぽい! さすがアリス、分かってる。

「……なるほど、この広さであれば……問題ありませんね」

「アニマ?」

「あっ、いえ! 申し訳ありません、少し決意を固めていただけです」

「……うん?」

ただ、なぜかお風呂の確認をした際にアニマが見せた真剣な表情だけが……気にかかったが、初めてのログハウスにテンションが上がっていたこともあり、深く確認することはなく次の場所へ向かってしまった。

そしてそれは、致命的な失敗だった。真面目でしっかりしたアニマが相手だからと、ついつい油断してしまったというのもあるかもしれない。

ここでしっかり思い出しておくべきだった。俺がいままで『風呂という場所』を楽観視した結果、どんなことを経験してきたかを……。