軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

神の成長⑦

神界にある神域ではよく開催されているお茶会が行われていた。そこではクロムエイナが、ベビーカステラを食べながらシャローヴァナルの話に耳を傾けていた。

「……という形です。以前貴女から聞いたことをそのままやってみただけですがね」

「悪くないと思うよ。ただ教わるだけよりも、自分で考えて気付く方が成長に繋がると思う。でも、そのやり方をする時に気を付けなくちゃいけないのは、失敗だけが続かないようにすること」

「と、いいますと?」

「自分が分からないものを分かろうとするのって、結構大変なことなんだ。フェイトちゃんはすでに一回失敗しちゃった。また失敗したらって恐怖を押さえ込んで、いっぱい考えて焦りながら二回目の挑戦をしている。ここはひとつの分岐点だね。ここでなんの成果もなく失敗しちゃうと、思考がマイナス方向に傾いちゃう。そうなると悪循環にはまっちゃうかもしれないね」

「……ふむ」

多くの者を育て導いてきたクロムエイナの言葉を聞き、シャローヴァナルは考え込むように顎に手を当てた。

シャローヴァナルはいま様々な面で成長している最中であり、特に最近は神族の成長を促そうとしている。そしてそういった指導において経験の深いクロムエイナに、お茶会の席で相談することも増えている。

「必ずしも二回目で成功する必要はないけど、フェイトちゃんにとって、なんらかの手応えが欲しいところだね。いまはまだ混乱だとか焦りだとかの気持ちが強いだろうけど……失敗を重ねちゃうと自己嫌悪が強くなっちゃうからね。少しでも前に進んだ実感を得られるかどうかは、フェイトちゃんの今後にも大きく関わって来るよ」

「なるほど……どうすればいいと思いますか?」

「う~ん。なにもなくても上手くいくのが一番だけど、それ以外だと少し切っ掛けを作ってあげるのもいいかもしれないね。できれば気付かれないように、フェイトちゃんが自分自身で得たって実感を持てたらなおよしかな?」

「参考になりました。感謝します」

クロムエイナに感謝の言葉を告げたあと、シャローヴァナルは軽く指を動かした。

「……お? 『未来に干渉』……へぇ、いいね。大きすぎる手助けじゃなくて、それでも変化の切っ掛けにはなる可能性があるし……99点だね。これなら上手くいけば今回で解決するかもしれないし、フェイトちゃんも大きく成長できそうだね」

「満点ではないということですか?」

「誰かを指導することに満点なんてないよ。ううん、あっちゃいけない。だからこそ、教える側もいろいろ考えて工夫できるんだよ」

「なるほど、流石にこの分野ではまだクロには敵いませんね」

そう告げたあとで、シャローヴァナルは紅茶を口に運び、カップを置いてから神域の景色に目を向けた。

それに釣られてクロムエイナも景色に視線を映しながら、静かに呟いた。

「……そういえばさ、相談があるって言ってたけど、さっきの話?」

「先ほどの話も相談ではありますが、本題は別件です。少し、考えていることがありましてね、貴女の意見が聞きたい」

「考えてること?」

「えぇ、最高神のフェイト、クロノア、ライフ、上級神ではシア……大きく成長しているのはフェイトですが、他の者にも大小の差はあれど変化は表れています。それを見て思いました。神族は少々、内輪で固まり過ぎていると……」

「たしかに、それはあるかもしれないね。人族や魔族とよく関わってるのは、人界に神殿を構えている数人だけだし、いまシロが挙げた四人もカイトくんがこの世界に来るまでは、あまり人界や魔界を訪れることはなかったしね」

神族は基本的に神界の外へは出ない。10年に一度の勇者祭には参加するが、人族や魔族の知り合いが居るという神族はあまりにも少ない。

シャローヴァナルは、それこそが多くの神族が創造以来成長していない原因だと感じていた。

「……神族主体で祭りを行うことを考えています。下層には住居が多く広いスペースが取りにくいので、当日のみ中層を解放し、本祝福を受けていない者も訪れることができるようにするつもりです」

「初めてだね。神族が招待側じゃなくて、主催側に回るのは……なるほど、それで六王祭を企画したボクに?」

「えぇ、といっても今回は私がアレコレするつもりはありません。クロノアとライフのふたりに主に動いてもらうつもりです。彼女たちにもよい切っ掛けになるでしょう」

「……そっか、まぁ、ボクで相談に乗れることならいくらでも聞くよ」

成長という点でフェイトに離されているふたりの最高神を主軸に祭りを企画するという話を聞き、クロムエイナは深く笑みを浮かべた。

そしてベビーカステラをひとつ食べたあとで、優しげな表情でシャローヴァナルに話しかけた。

「……シロ、本当に変わったね。なんていうのかな、優しくなったというか……『同じ価値じゃなくて、個別の価値』を見ようとしてる気がするね」

「神族の者たちは、私にとって子のようなものですからね。成長してほしいとは、思えるようになりましたよ」

「……やっぱ、カイトくんはすごいなぁ」

「えぇ、本当に……昔の私がいまの私を見たら、驚きそうです」

「でも、ボクはさ……いまのシロの方が好きだよ」

「残念ながら私には快人さんという恋人がいるので、その想いには応えられません」

「そういう意味じゃないからね!? あぁ、もう、こういうところは変わってないよ!! ほんと……しょうがないなぁ」

確かな成長をしつつも、それでも『らしさ』は失っていない。どこか天然な神を見ながら、クロムエイナは呆れたような笑みを浮かべた。