軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

神の成長④

アニマに相談に乗ってもらうことになり、立ち話もということで家の地下にあるバーに向かうことにした。その道中で、アニマが不思議そうな表情で尋ねてきた。

「……ご主人様。前からお伺いしたかったのですが……なぜ、屋敷の地下にバーなのでしょうか?」

「……え?」

「お酒を飲むというのでしたら、別にバーである必要もないと思いますが……」

いつか誰かに突っ込まれるだろうとは思っていたけど、ついに来ちゃったよ。なぜ、屋敷の地下にバーが存在しているのか……いやもうこれ、アリスの悪ふざけ以外の解答なくないか?

「あっ、いえ! もちろんご主人様に深い考えがあるのは理解していますが、浅慮な自分ではその意図を推し量ることができず……」

なるほど、どうやらアニマは俺にはなにかの考えがあってこのバーを造ったが、従士長である自分は知っておかなければならないと考えて、恥を忍んで質問したみたいだ。

……いや、俺も理由なんて知らないんだけどね!?

「……えっと、いや、バーはアリスが独断で作ったものだから、なにか俺に考えがあるわけじゃないんだ」

「なるほど、そうでしたか……アリス殿が作ったのであれば、一件意味はわかりませんが必要になるということですね!」

「……」

いぜんから時々思うことはあったが、なんかアニマってアリスの事滅茶苦茶評価してる気がする。なんでだろう? 馬鹿に見せかけた有能かと思いきや、やっぱただの馬鹿だけど有能みたいなやつなんだけど……。

「……アニマは、ずいぶんアリスを評価してるんだな」

「もちろんです! アリス殿は自分の目標です!」

「……そ、そうなの?」

「はい! 圧倒的とすらいえる武力、未来を見通してさえいるかのような知性、大軍を従えるカリスマ、そしてご主人様を陰に日向に支える果てなき忠誠心! まさにアリス殿は、従者の理想というべき御方でしょう。とても高い頂ですが、いつかそこに辿り着きたいと願っています」

高評価極まりない……そういえば、アニマってあんまりアリスが馬鹿やってるとこを見たことないんだったっけ?

シグマとの一戦や、神界での決戦に関しては見てるし、思い返してみれば以前アニマはアリスに劣等感を感じていたみたいだし、そういうのが合わさって高評価に繋がっているのかもしれない。

そんなことを考えていると、俺に聞こえるだけの小さな声で姿を消しているアリスが話しかけてきた。

「……これはさすがのアリスちゃんも予想外なんすけど……こんな憧れの人みたいに語られると、今後アニマさんの前でふざけ辛いじゃねぇっすか」

「お前、アニマの夢を壊すなよ……」

「……善処します」

そんな会話をしたあとでアニマに視線を向けると、アニマはグッと両こぶしを握っていた。頑張るぞとでも言いたげな姿は、見た目以上に幼く感じられて、なんか可愛かった。

「……アニマ、性格は似なくていいからね。というか、お願いだから似ないでくれ」

「え? あ、はい?」

「じゃ、行こうか」

「かしこまりました?」

不思議そうに首をかしげながら俺に続くアニマだが、これは釘を刺しておかなければならないことだ。アリスみたいに有能になるのはいいが、性格まで似たら俺までリリアさんの如く胃痛がマッハになってしまう。

バーに入ると、そこの店主を務めているイリスさんがカウンターからこちらに振り向いた。細かく言えば、イリスさんも俺の家に住んでいる人ということになるのかもしれない。

「うん? ミヤマカイトに……たしか、従士長のアニマだったかな? よく来た、カウンターに座るといい」

「お邪魔します、イリスさん」

「イリス殿、失礼する」

軽く微笑みを浮かべて出迎えてくれたイリスさんに挨拶をして、アニマと共に席に着く。

「えっと、カクテルはあんまり飲んだことが無いので、飲みやすいものをいただけると」

「自分はできれば、甘口のものを……」

「うむ……では、先にミヤマカイトから……少し苦みがあるものでも大丈夫か?」

「ええ、大丈夫です」

俺はあまり酒の好き嫌いはないのでお任せをし、アニマは辛口の酒が苦手なので甘口のものを頼んでいだ。たしか、キャラウェイさんは逆に辛口のお酒が好きで、甘口のものは苦手と聞いた覚えがある。

そんな俺たちの前で、イリスさんは容器を用意したあと……いまだ名前のわからない、シャカシャカするやつで酒混ぜ、俺の前に出したグラスに注いだ。

まるで水みたいに透き通った、綺麗な透明色のお酒だ。

「……アリスから聞いた、お前の住んでいた地方の言葉が名になったカクテル……『カミカゼ』という、ウォッカ、ホワイトキュラソー、ライムジュースを混ぜたもので、口当たりは鋭く辛口だが飲みやすいカクテルだ」

「へぇ、ありがとうございます」

「うむ、次はアニマだな……」

そう呟くとイリスさんは手早く酒を用意しシェイク……アニマの前に置いたグラスに注いだのは、まるで吸い込まれそうなほど美しい淡い赤色のカクテルだった。

「……『スカーレットオハラ』だ。度数自体はやや高めだが、柑橘系の甘酸っぱさがあるので飲みやすいだろう」

「感謝する」

「うむ、いくつかつまみも用意しよう」

う~ん、いままであまり足は運んでなかったけど、意外とこのバーいいところかもしれない。薄暗く静かな店内の雰囲気もいいし、手際を見る限りイリスさんの腕も相当なものなのだろう。

また今度、ゆっくり飲みたいときとかに来るのもいいかもしれない。

「それじゃ、アニマ……乾杯しようか」

「あ、はい!」

相談に来たはずなのに、ソレも忘れて楽しんでしまいそうな雰囲気の中で、俺とアニマは軽くグラスをぶつけた。