軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

神の成長②

手順を間違えている。そう告げたあとでシャローヴァナルは、フェイトを見つめながら静かに語り始めた。

「フェイト、貴女が興味を持っている相手……それはアリスと快人さんで間違いはありませんか?」

「は、はい! その通りです」

「それが、貴女が『勘違い』してしまった要因でもあります」

「……勘違い……ですか?」

シャローヴァナルの告げた言葉の意味がわからず、フェイトはやや戸惑ったような表情を浮かべた。同時に、クロノアとライフも理解ができないのか、首をかしげている。

「貴女は、アリスと快人さんに対し、すぐに興味を持った。それは貴女の持つ運命の権能が通用しなかったから……快人さんに関しては最近なので、むしろ、原因はアリスと親しくなったことにあります」

「そ、それはいったい……」

「貴女は一番初めに興味を持ったアリス、そして次いで興味を持った快人さんを……『己が他者と親しくなるための基準』にしてしまったのです」

「ッ!?」

その鋭い言葉は、フェイトの胸に突き刺さるかのようだった。フェイトは決して馬鹿ではない、むしろ頭の回転も優れている。

ゆえに彼女は理解した。シャローヴァナルの言葉の意味を……。

「逆なのですよ。『アリスと快人さんが特別』であり、本来貴女が他者に興味を抱くには一定の手順を踏まなければならないのです。しかし、貴女はアリスと快人さんを基準にしてしまった……だから快人さんの両親に接するにあたって、ただ漠然と興味を抱こうとした。その前にある手順を無視し『興味を抱かなくてはならない』と己に言い聞かせただけ……上手くいかないのは必然です」

そう、フェイトは明里と和也に漠然と興味を抱こうとした。しかし、興味を抱く基準をアリスと快人に定めたままで臨んでしまったため、どう頑張っても興味は抱けなかった。

シャローヴァナルは告げる。すぐに興味を持てたアリスと快人が特別なだけで、本来はもっと手順が必要なのだと……。

「シャ、シャローヴァナル様……その手順、興味を抱くために必要なこととは……」

「それは貴女自身で考えなさい。なにもかも教えては貴女のためにはなりません。ただ、ひとつ指針を示すなら・……『なにが足りない』かを考えなさい。新たになにかを用意するわけではありません。快人さんの両親に貴女が興味を抱くためには足りないものがある。それをしっかりと考えることです」

「……はい」

その背中を促すような言葉を聞き、フェイトは真剣な表情で頷いた。

そしてシャローヴァナルはそんなフェイトを見て一度頷いたあと、今度はクロノアとライフに視線を向けた。

「時空神、生命神」

「「はっ!?」」

「貴女たちはいまフェイトが悩んでいる内容を理解できない。そして私がフェイトに告げた言葉の意味も理解できない……そうですね?」

「はい……その通りです」

「お恥ずかしながら、時空神と同様に私も理解が及びません」

シャローヴァナルが見抜いた通り、クロノアとライフにはフェイトの悩みは理解できなかった。「なぜそんな配慮をする必要があるのか?」とそんな疑問が浮かんだ程度だ。

そんなふたりに向け、シャローヴァナルは静かに告げる。

「いま分からないことは恥ではありません。分からないまま、理解できないままでいることは恥と思いなさい。なぜフェイトは悩んでいたのか、なぜそれを貴女たちは理解できなかったのか……その原因をしっかりと考えてみなさい。それは貴女たちの成長に繋がるでしょう」

「「はっ!!」」

「ならば、貴女たちにもヒントは与えましょう。貴女たちとフェイトの違いは、『視点』です。貴女たちはフェイトに比べ、視野が狭いと言えるでしょう。ならば、なにを見るべきなのか、見たうえでどうするべきなのか……それは今後しっかりと考えなさい」

そう告げたあと、シャローヴァナルはさんにんの最高神に背を向け、最後に少し優しさの感じる声で告げた。

「……貴女たちはふたりはまだ私が創造したまま変化していない。しかと成長することです……私に貴女たちを愛しいと、それぞれが唯一無二の存在であると思わせなさい。クロノア、ライフと……そう呼べる日を楽しみにしていますよ」

そう言って微かに微笑んだあと、シャローヴァナルは姿を消した。

シャローヴァナルは本当に凄まじいほどに成長した。己だけでなく、周囲に目を向け、同時にそれらを導き、成長を促すことが出来るほどに……。

かつてと比べシャローヴァナルからの威圧感は弱まった。それでもいまのシャローヴァナルはかつてより遥かに大きく、偉大に見えた。まさに世界の頂点であると……。

さんにんの最高神は、その偉大なる背が消えたあともしばらくの間頭を下げ続けていた。