軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新築パーティを行おう⑥

快人が王城へ出発したころ、快人の屋敷の一室では一組の男女が頭を抱えていた。

快人の母である明里と父である和也である。ふたりが座る椅子の前に備え付けられたテーブルには、大き目の袋が置いてあった。

「……なぁ、母さん? これ、いくらあるって言ってたっけ?」

「全部で20万Rくらいって、いってた……」

「1Rって……日本円で100円ぐらいだよね?」

「そうね」

「……」

「……」

ふたりの前にある袋には、快人が「買い物とかに使って」と渡してきたお金が入っていた。白金貨等はよほどの高級店でない限り使えないので、様々な硬貨が混ざっているが……合計の金額は20万R……日本円でおよそ2000万円である。

「……どう、思う?」

「私の快人が……凄すぎる」

「……だよねぇ」

和也の言葉に、明里もなんだか最愛の息子が遠い存在になってしまったような感覚を覚えつつ言葉を返す。

「さすがに、このままというのはマズい気がするんだ……息子の建てた家に住ませてもらって、息子からお小遣いをもらって……さ、さすがにこのままだと、父親としていたたまれない気持ちが強すぎる」

「そうよね。私もなにかしたい気持ちでいっぱいだよ」

「君はまだ家事とか……ほら、あのイルネスさんって方の手伝いをしたりとか?」

「……駄目、あの人は……あの御方は、家事の神様。私が手伝っても邪魔にしかならないし、かえって仕事増やす結果になっちゃうからね」

そう、ふたりが悩んでいるのは現在の待遇についてだった。まず大前提として、現在の快人は明里や和也の基準から考えると、とてつもない大富豪である。

正直このまま働かなかったとしても、快人は気にせずふたりを屋敷に住まわせてくれ、必要に応じてお金も渡してくれるだろう。

だがまだ若い明里と和也にとって、なにもかも息子のお世話になるというのはいたたまれない気持ちだった。しかし、だからといっていい案が浮かぶわけでもなく、ふたりは気分転換に庭にでも出ようと、二人そろって部屋を出た。

広い廊下をふたりが歩いていると、前方から見知った人物が歩いてくるのが見えた。

「おや? アカリ殿にカズヤ殿……なにやら浮かない表情をされていますが、どうされましたか?」

「……アニマちゃん」

「……実は……」

歩いてきたのは従士長を務め、快人の屋敷のまとめ役といっていい立場にあるアニマだった。もちろん、明里と和也も顔合わせは済んでおり、印象としては「快人からの信頼も厚い腹心の部下」という存在である。

そしてアニマの方も、明里と和也に対しては快人の両親であることもあり、しっかりと礼をもって接しているので、ふたりから見えれば相談しやすい相手ともいえた。

そのためふたりは、先ほどまで考えていた内容をアニマに相談してみることにした。

一通りふたりの話を聞き終えたアニマは、顎に手を当てて考えるような表情を浮かべながら口を開いた。

「……なるほど、お話は分かりました。しかし、現状ではおふたりの希望を叶えるのは難しいですね」

「うっ、やっぱりそうなっちゃうかな?」

実際ふたりで話し合ってもいい案が浮かばなかったので、アニマの返答は予想通りともいえるもので。明里は軽く肩を落とす。

「仕事をするというだけであれば、いくらでも方法はありますが……まだおふたりは、この世界に馴染み切れていない状態でもあります。常識の差異というものに馴染むには、やはりある程度の時間が必要かと考えます。ご主人様もこの世界に馴染むまでには、それなりに時間がかかったと仰っておりましたし……そう考えると、現状で外に出て働くというのは、余計な負荷も多くなるでしょう」

「「……」」

「であれば、屋敷の中の仕事というのも案に上がりますが……こちらはイルネス殿が居る以上、やはりどうあっても、おふたりが懸念するように足を引っ張る形というのは避けられないでしょうね」

「「……はい」」

しっかりと選択肢を上げつつ説明をしてくれるアニマの言葉に、ふたりには反論の余地はなく揃って肩を落としながら頷いた。

そんな二人の様子を見て、アニマは少し困ったように苦笑したあとで言葉を続けた。

「……ですが、おふたりの気持ちは理解しました。自分ではよい方法は思い浮かびませんが、ご主人様であればよい方法を提示してくださるかもしれません。自分の方でご主人様に相談しておきますよ」

「ア、アニマちゃん……ありがとう!」

「いえ、どうかお気になさらず。では、自分はこれで失礼します」

「どこかに出かけるのかい?」

快人に相談してみてくれると告げるアニマに明里がお礼を言うと、アニマは軽く微笑みながら告げたあと、玄関の方に向かおうとして、その前に聞こえてきた和也の質問に返事をする。

「えぇ、王都内でいくつか融資を希望している商会や店舗がありますので、可否の判断のために視察にでてきます。ご主人様が王城からお帰りになられるまでには戻るつもりですので、おふたりのお話はその際にでも……では」

そう言って軽く頭を下げてから歩き出すアニマの背中を見送りながら、明里はポツリと独り言のように呟いた。

「……う~ん。アニマちゃん、カッコイイね~仕事のできる女性って感じがするよ。アレで、私より年下なんだよね?」

「だね。快人が頼りにする気持ちもよく分かるよ」

両親がそんな話をしていたタイミングで、王城に向かう馬車に乗っていた快人は、例によって近くに居るであろうアリスに話しかけた。

「……なぁ、アリス」

「なんすか?」

「俺もこっちの世界にずっと住むって決めたわけだし……やっぱり、仕事とかしたほうがいいのかな?」

それは奇しくも両親がアニマに相談していたのと似た内容だった。

その言葉を聞いたアリスは、快人の隣に姿を現し……いっそ聖母と呼べるほど優しい笑みを浮かべた。

「アリスちゃんは全面的にカイトさんの味方ですし、基本カイトさんの望みは全力で肯定してサポートする所存です。でも、その上で私の意見を言わせてもらうなら……」

「言わせてもらうなら?」

「……『過去類を見ないほど世界が大混乱』に陥りますし、『場合によって世界経済が崩壊』するでしょうし、『えげつないほど死者が出る可能性』もある上、『アリスちゃんが過労死一直線』レベルで忙しくなるので……マジ、馬鹿な考えはやめてください」

「………………え?」