軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スカウトされた

透き通る様に晴れ渡った空の下、宝樹祭に向かう予定の俺達の前には今、大きなゴンドラと白色のドラゴンが二匹居る。

エルフの森に向かう為の飛竜便、所謂空を飛ぶ馬車の様なもので、浮遊石と呼ばれるなんだか空中に城が現れそうな素材を使ったゴンドラは、魔力を込めると浮遊するらしく、それを二匹のドラゴンが引くと言う形になるらしい。

この白竜と呼ばれるドラゴンは、飛竜の中でもトップクラスのスピードを持つらしく、エルフの森まで数時間で到着するとの事だ。

それだけ運賃も高く、何より白竜の便は貴族から大人気で、ルナマリアさんはかなり手配に苦労したらしい。

航路について打ち合わせをしているリリアさん達を尻目に、俺と楠さんと柚木さんは白竜の方ばかりを見ていた。

いや、俺は前にノインさんが狩って来た飛竜を見たんだけど、この白竜はそれより大きく7メートルはある体躯に、雪のように白い鱗がとても美しい。

一応分類としては魔物と言う事になるらしいが、人に慣れているからか俺達に敵意を向けてくる様子は無い……まぁ、飼い犬の様に懐いてくれる訳でも無く、我関せずと言った感じで無視しているだけだけど……

何か女の子と言うのは爬虫類は苦手というイメージがあったが、見た目がカッコ良ければ問題無いらしく、楠さんと柚木さんは白竜に近付いて触ってみたりしているが、白竜の方は完全にノーリアクションである。

俺はそれを遠目に眺めて居たが、二匹の白竜の後ろから1メートルに満たない小さな竜がチラチラとこちらを見ているのを見つけた。

白竜の子供だろうか? まだあまり人間に慣れてないのか、親に隠れて警戒心剥き出しでこちらを見ていた。

楠さんや柚木さんはもう一匹の白竜に夢中で気付いていないみたいだ。

「フゥッ!」

「……」

一歩近づいてみると、凄まじい程敵意の籠った目を向けられた。

何と言うか臆病な犬が威嚇している様な感じで、このまま近づけば噛みつかれてしまいそうだ。

そこでふと思いつく、クロは俺の感応魔法なら言葉を発せない生物とも交流が出来ると言っていた。

折角の機会だし、試してみるのも良いかもしれない。

そう考えた俺は、出来るだけ友好的な感情……君と仲良くしたいと言う意思を魔力に乗せ、感応魔法として子竜に放ってみる。

「キュ?」

すると子竜は首を傾げて一鳴きし、ジッと俺の方を見つめてくる。

まだ若干怯えている感情を感じ、俺は再び友好的な感情を込めて感応魔法を放つ。

それを何度か繰り返していると、子竜は俺の興味を持ったのか、小さな羽をはためかせながら俺の方に近付いてくる。

「キュク、キュイ。キュキュイ?」

「大丈夫、虐めたりしないよ」

小さな声で鳴く子竜に笑顔を向け、ゆっくりと手を伸ばす。

最初はビクッと身をすくめた子竜だが、友好的な俺の感情を感じ取ったのか、逃げる事は無く伸ばした俺の手が触れると少しずつ警戒を解いてくれた。

一度警戒が解けてしまえば相手は子供、懐くのは早いもので子竜は素直に撫でられてくれる。

てっきり鱗があるので硬いのかと思っていたが、まだ子供だからか意外と柔らかい。餅程まではいかないがゴム位の柔らかさで触り心地が良い。

「キュク~」

撫でられて心地良さそうに鳴く子竜……か、可愛い。ドラゴンって大きいトカゲみたいなものかと思ってたが、この白竜は割と本気で子猫のように可愛い。

そのまま子竜を両手で掴むと、もう子竜は抵抗したりはせず素直に抱きかかえられる。

「キュキュイ! キュクル!」

「あはは」

子竜は俺の胸にグリグリを頭を押し付けてくる。

甘えてくるその姿が可愛らしいのと、擦りつけてくる頭がくすぐったくて笑みを浮かべる。

すると子竜は楽しそうな表情を浮かべた後、小さな手を使って俺の服をよじ登ってくる。

「うん?」

「キュ、キュ、キュ」

手にある鋭い爪が若干恐ろしかったが、服の素材が良い物だからか穴が空いたりする事は無く、子竜は鳴き声を上げながら体を登り、俺の右肩に辿り着くと満足した様に寝転がる……結構重い。

「キュク~」

子竜が俺の肩でくつろぎ始めると、丁度リリアさん達の話も終わったのか飛竜便の御者が俺達の方を向いて口を開く。

「そうそう、言い忘れておりましたが、今回は航路を覚えさせるためにこの二匹の白竜の子供も連れてきています。まだ人に慣れておらず危険なので近付かない様にお願い……しま……す?」

「……えっと」

「キュイ?」

こちらを向いた御者の女性は、俺の肩に乗る子竜を見て目を見開く。

「そ、そんな。あ、貴方一体どうやって……その子竜は、まだ私にも懐いていないんですが……」

「あの、気にしないで下さい。その方は、えと、ちょっと特殊なので……」

「ついに魔物まで……ミヤマ様は、本当に……」

唖然とする御者に、リリアさんとルナマリアさんが呆れた様な表情を浮かべながら俺の方を見る。

感応魔法のお陰ではあるが、普通は子竜がこれ程早く懐く事は無いらしい。

「うわ~可愛いですね。私も……」

「フゥゥゥ!!」

「ひっ!?」

その証拠にこの子竜は俺にこそ懐いてはいるものの、柚木さんが触れようとすると、低く唸って威嚇している。

「大丈夫、この子も虐めたりはしないよ」

「キュイ?」

「うんうん。だから、唸ったりしないであげて」

「キュ……キュク、キュイ!」

俺が柚木さんも虐めたりはしないと説明すると、子竜はしばらく首を傾げた後、納得した様に頷く。

どうやら分かってくれたみたいで、柚木さんに対する敵意の感情も和らいできた。

「柚木さん、触っても大丈夫だよ」

「え? あ、はい……」

「キュ!」

「ふわぁ、柔らかい……この子、すっごく可愛らしいですよ!」

俺の言葉を受けて再び柚木さんが手を伸ばすと、子竜は今度は唸ったりせず、大人しく柚木さんに撫でられる。

その様子を見て御者の女性は、あんぐりと口を大きく開けてしばらく茫然とした後、俺に近付いてきた。

「貴方は、異世界の方でしたよね?」

「あ、はい。そうですが?」

「……もし異世界に帰らず、この世界に残る事があれば、是非連絡を下さい。うちは好条件で貴方を雇い入れることを約束します!」

「……へ?」

「これは、素晴らしい才能ですよ! これ程早く飛竜を手懐けられるのなら、世界一の飛竜御者になれます!」

「は、はぁ……」

どこか興奮した様子で、いかに飛竜を手懐けるのが難しいかを説明し始める女性。

その勢いに若干押されながら助けを求める様にリリアさん達の方を見ると、リリアさん達は諦めた様な表情で苦笑を浮かべていた。

拝啓、母さん、父さん――飛竜便の白竜と出会って、子竜に懐かれた。後何か、物凄い勢いで――スカウトされた。