軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ただいま

シロさんとのデートも終わり、遊園地の出口から外に出ると、そのタイミングでアリスが俺たちの前に現れた。

「それで、どうしますか、アリス? 引き続き貴女と快人さんがデートを行うなら、時間を巻き戻しますが?」

え? アリスとデート? いつの間にそんな話になったんだ……あっ、もしかして、あの時シロさんがアリスに耳打ちしてたのは、それだったのか?

いや、それよりも重要なのは、なにサラッとまた時間を巻き戻すとか言ってるんだこの神様……俺は、いったい何回今日を繰り返すことになるんだ?

「う~ん、ではお言葉に甘えて……と言いたいところなんですが、どうせならちゃんと遊園地を改造してからデートしたいですね。ある程度調整は加えましたが、この遊園地……『常人なら数百回ぐらい死ぬレベル』ですし……」

「なるほど……では、どうしますか?」

また今日を繰り返すことになるのかと思っていたが、アリスからフォローもとい提案が告げられた。なんだかんだで、アリスはデートだとかそういう恋愛関係に関してはマトモなので安心感がある。

いや、というか……この遊園地そんなに危険だったの!? いや、確かにえげつない速度のジェットコースターとか、竜巻起こしそうな速度で回るメリーゴーランドとかあったけど……。

まぁ、それは置いとくとして、この話の流れならアリスとのデートは後日になりそうだ。ただ、ひとつ問題なのは、ド天然なシロさんがその後日まで遊園地を残しておいてくれるかどうか……。

「えぇ、そういうわけなんで、シャローヴァナル様。『この遊園地ください』。『持ち運びできる状態』で!」

「かまいませんよ」

……俺の認識が甘かった。シロさんのスケールのデカさもそうだが、当たり前のように「遊園地くれ」という発想ができるアリスもさすがである。

シロさんはアリスの要求に二つ返事で応じたあと、指を軽く弾いた。すると巨大な遊園地は消え去り、シロさんの手には小さな箱が出現する。

「……名付けて、どこでも遊園地ボックスです。今回の貴女の働きを称え、差し上げましょう」

「ありがとうございます!」

どこでも遊園地ボックス……すごいアイテムであることはわかるが、大丈夫なんだろうか? あの巨大な遊園地がいきなり現れたら、周囲への影響とか凄そうなんだけど……。

「その点は問題ありません。このどこでも遊園地ボックスを使うと、遊園地がある異空間に自動転移しますので、周囲に影響はありません。遊園地の出口から外に出れば、元の場所に戻れます」

「……な、なるほど、さすが……シロさん」

「もっと褒めてもいいのですよ? 褒めると、私が喜びます」

うん、とりあえず、凄いものだということで納得しておこう。たぶんそれが一番賢い選択だと思う。

神界から母さんと父さんが居るリリアさんの屋敷へ向かう。なお、シロさんの力による転移なので、直接リリアさんが母さんと父さんに説明をしている部屋に転送された。

「……す、すみません、急な登場で」

「いえ、大丈夫ですよ。ちょうどおふたりへの説明もひと段落したところです……えぇ、ひと段落……なんでしょう? 不思議と同じ説明を『5回ぐらい』した気がするのですが、気のせい……ですよね」

いきなり部屋に出現したことをリリアさんに謝罪したが、リリアさんは笑顔で大丈夫だと答えてくれた。そして、ちょうどいいタイミングだと告げたあと、不思議そうに首をかしげてから懐中時計を見て、もう一度首を傾げた。

あと、ごめんなさい、リリアさん……たぶんそれ気のせいじゃないです。世界の時間が何度か巻き戻ってるみたいなんで……。

そんなことを考えながら振り返ると、椅子に座り微笑まし気な表情を浮かべている母さんと父さんの姿が見えた。

……あれ? なんだろうこれ……二人に会ったら、話したかったことがいっぱいあったはずなのに、報告しなくちゃいけないことも沢山あるはずなのに……言葉が出てこない。

母さんと父さんがそこにいる。ただ、それだけで胸がいっぱいになって、なにを話していいか分からない。

そんな俺を見たあとで母さんと父さんは顔を見合わせて微笑み合い、そして俺の方を向いて口を開いた。

「「おかえり、快人」」

「ッ!?」

それは本当に何気ない言葉だった。……ただ、それは、ずっと聞きたかった言葉でもある。

当たり前のように告げられるその言葉が、どうしようもなく嬉しい。ここに、本当に母さんと父さんがいるんだって、実感できた。

「……ただいま」

震えることでそう返すと同時に思い至った。あぁ、そうだ、ふたりとの再会の言葉にこれ以上相応しいものはないと……。

だってそう、俺はあの仮想世界でふたりと最後に話したとき……「行ってきます」と告げたのだから……再び会ったのなら「ただいま」が、一番正しい言葉のはずだ。