軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

終わりの神が謳う愛②

シロさんと無事に想いを通じ合わせ、恋人同時になれた。本当に嬉しいことではあるが、非常に残念なことに今日は母さんと父さんとの話もあるだろうし、あいさつ回りをしていたので時間もかなり遅い。そうなると、ゆっくりする時間は……。

「では、さっそくデートをしましょう」

……あれ? おかしいな、いま帰る流れじゃなかったっけ? い、いや、シロさん。もちろん俺も、シロさんとデートはしたいと思いますが、もうすでに夜の10時なわけですし……。

「まだ『朝の9時』ですよ」

「はっ!? え? いや、そんな馬鹿な――あれ?」

いくらなんでもソレは無理があるだろうと思いつつ懐中時計を見てみると、なぜかシロさんの言う通り時刻は9時を示していた。

神界には基本的に夜がないので、昼か夜かまではわからないが……どっちにしろさっき見た時は、たしかに10時を示していたはず……あれ?

俺が首をかしげていると、神域にかなり慌てた表情でクロノアさんが出現した。

「シャローヴァナル様!? いま、『世界の時間が巻き戻された』のですが!」

「巻き戻しましたが、なにか?」

「……は? い、いや……その……」

「巻き戻しましたが、なにか?」

「……」

「巻き戻しましたが、なにか?」

「……事後処理をしてきます」

「任せます」

世界の時間を巻き戻しちゃった!? い、いや、確かにシロさんならそんなことは朝飯前だろうけど……クロノアさんが、死んだような目をしてるのでたぶん事後処理には手間がかかるのだろう。

しかし、例の如くシロさんに逆らえないクロノアさんは、がっくりと肩を落としつつも、事後処理を行うために神界を去って……。

「……時空神」

「は、はい!」

「苦労をかけます、頼りにしていますよ」

「~~~~!?!? はい! この身はすべてシャローヴァナル様のために存在します! すべて、我にお任せください!!」

ク、クロノアさん……ちょっと、チョロすぎるのではないだろうか……。シロさんが明後日の方向を見ながら、労いと一言かけただけで、感動で涙を流しながら嬉々として事後処理に向かっちゃった。

いや、まぁ、神族のクロノアさんからしたら、シロさんに頼られるのは最大の栄誉ってことなんだろうか? う、う~ん、まぁ、本人がいいなら……いいかな?

「……というか、世界の時間を巻き戻したって……」

「合わせて、快人さんの体力なども回復させました。これでデートができますね」

「……えっと、まぁ、いろいろ言いたいことはありますが……いいんですか? こんなことして?」

「私が、ルールです」

そして再びシロさんの背後に現れる『ドヤァァ』という立体文字……今度はさっきと違ってカラフルに光っていたりと、何気に芸が細かい。

「はぁ……まぁ、こうなった以上、せっかくですしデートしましょう。俺ももう少しシロさんと一緒に居たかったですし」

「なるほど、これが口説かれているという現象ですね」

「完全に勘違いとはいえないのがアレですが……それはそれとして、シロさん、もしかしてかなりテンション高かったりします?」

「はい。とても浮かれています」

……その時、俺の研ぎ澄まされた第六感が力強く告げた。「あっ、これ、駄目なやつだ」と……。

「……あの、シロさん?」

「なんですか?」

「もうどこから突っ込んでいいのか分からないんですけど……なんで、神域に突如『遊園地』が出現したんですか?」

「造りました」

シロさんが浮かれているという時点である程度は察していたが、流石に突如目の前に巨大テーマパークが出現すると、言葉を失ってしまう。

わざわざ遊園地を創造したってことは、シロさんの要望は遊園地デートということだろうか?

「その通りです」

「……一応、聞きますけど、なんで遊園地?」

「クロはすでに快人さんと数回デートを行っています。というわけで、クロだけでなく快人さんと他の恋人がまだ行っていない遊園地デートを行います。快人さんの遊園地デートは私が初めての相手というわけです」

分かるような、分からないような……。あれ? けど、遊園地だけあっても、アトラクションとかは自動で動くんだろうか? 係員とかいなくても大丈夫なのかな?

「問題ありません。幻王……いえ、アリス。近くに居ますね。貴女なら問題なく務まるでしょう。係員及び、マスコットキャラクターを命じます」

「……なんで私が貴女の命令に従わなくちゃいけないんすか? そこはお得意の神族使ってくださいよ、ほら、苦労神もとい、時空神さんとかいるじゃねぇっすか」

やめろぉぉぉ!? クロノアさんのことをナチュラルに苦労神って呼ぶんじゃない!? 俺も苦労神って聞いた時点ですぐにクロノアさんの顔が浮かんじゃったけど……可哀そうすぎるだろう!?

ま、まぁ、それはともかくとして……シロさんに呼ばれて姿を現したアリスは、露骨に不満そうな言葉を返す。それでも、俺以外には基本辛辣な彼女が、問答無用で却下だとか言わないあたりは、シロさんに対して最低限の敬意は持っているということだろうか?

とそんなことを考えていると、シロさんはどこからともなく黒いビー玉のようなものを出現させ、アリスに手渡した。

「それを報酬として差し上げましょう」

「……なんすかこれ? こんなもので私を買収――ッ!?」

用途のよく分からないそのビー玉を訝しげに見ていたアリスは、突如大きく目を見開き、何度もビー玉とシロさんを交互に見る。

「え? マジっすか? コレ貰ってもいいんですか?」

「差し上げます」

「……任せてください! シャローヴァナル様とカイトさんが楽しめるよう、アリスちゃんがこの遊園地の係員を引き受けました!」

「よろしくお願いします」

……まぁ、完全に予想できていた結果ではあるが、アリスはアッサリと買収された。予想と違ったのは、買収に使われたものがお金ではなく、謎のビー玉ということだけ……。

もちろん俺も馬鹿ではない、アレがマトモな物体じゃないことぐらいは分かる。けど、なんなんだろう?

気になった俺は、アリスが姿を消したあと、シロさんに先ほどのビー玉について聞いてみることにした。

「……シロさん、アリスになにを渡したんですか?」

「分体に埋め込むことで『生者と同じように魔力を生成できるようになる球体』です」

「……なるほど」

限定的な用途のアイテムに見えるが、俺はアリスがそれに食い付いた理由がすぐに分かった。それは六王祭の時にアリスが頭を悩ませていた問題の解決策となるアイテム……つまり、あのビー玉を使えば、アリスの中にいるイリスさんが時間制限なく実体化できるようになるわけだ。

なんとなく、シロさんの成長を感じる。以前のシロさんなら、アリスの言う通りクロノアさんに放り投げていた場面で、確実に遊園地というものを知っており、それを問題なく運用できるであろうアリスというチョイス。

そして自分に無条件でしたがうわけではないアリスを、有益な報酬を与えることで動かすという行動は、シロさんが相手の心というものを理解し始めているというなによりの証拠でもあった。