軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

『創造神の掌』

ゆっくりと沈んでいた意識が浮上する。眠りから覚めるようにぼんやりと、目を開くと……初めに見えたのは、いまにも泣き出しそうな顔のクロだった。

「カイトくん! 大丈夫? どこか痛いとこない? ……ボクのこと、ちゃんと……覚えてる?」

不安そうに尋ねてくるその声、あまり見る機会のないクロの弱弱しい姿は、どこか新鮮だと……そんな場違いなことを考えつつ、俺は安心させるように微笑みを浮かべた。

「……あたりまえだろ、クロ」

「カイトくんッ!?」

飛びついてくるクロを抱き留めるとともに、体を起こして周囲を見渡すと……そこには本当に大勢の人たちが居た。

アイシスさん、リリアさん、ジークさん、アリス、フェイトさん……大切な恋人たちと俺を中心に、数えきれないほどの人たちが集まってくれている。

本当に、嬉しいものだ……こうして、俺がいままで絆を紡いできた人たちが、こうして助けにきてくれる。なんて幸せなんだろうか……うん、8割以上、絆を紡いだどころか『完全に初見』な方々だけど、それは置いておこう。

皆俺の無事を喜ぶ言葉を次々に投げかけてくれて、俺がその温かな想いに泣きそうになったタイミングで……空間に響くような抑揚のない声が聞こえてきた。

「改めて、見事でした。約束通り、貴方の願いを叶えましょう。それだけでなく、おそらく貴方が望むであろう共に召喚された異世界人に関しても、貴方と同様に世界間の行き来を可能とします。これに関しては、地球神も了承済みです」

「……シロ」

悠然とシロさんが姿を現すと、神族たちは一斉に跪き、クロは逆に立ち上がってシロさんに鋭い目を向けた。

クロがシロさんに対して怒っているのは、感応魔法を使わなくても理解できる。そして俺のために怒ってくれるのも嬉しい。

だけど、その前に確認しなければならないことがある。だから俺はいまにもシロさんに殴りかかりそうなクロを手で制しつつ立ち上がり、薄く微笑みを浮かべながらシロさんに問いかけた。

「……それで、シロさん。いい加減教えてくれませんか? 結局、俺は試練に失敗したらどうなったんですか? 本当にクロの言う通り、記憶を消されたんでしょうか?」

「……」

四つ目の試練で、考える時間だけは呆れるほどにあった。だからこそ、俺はその時間を使ってシロさんの意図を探ろうとしていた。

しかし、どれだけ考えても、やはり俺にはシロさんが俺の記憶を消そうとしているとは思えなかった。

シロさんに対する信頼ももちろんあるが、それ以上に……シロさんの目的が俺の記憶を消すことであれば、ほかにいくらでも方法があると思う。

シロさんはほぼ全能、俺の記憶を消すのが目的なら、わざわざ試練なんて回りくどい方法を選択する理由は無い。シロさんがその気になれば俺の記憶を消すことはおろか……シロさんの都合のいいように、俺の記憶を書き換えることだって簡単にできたはずだ。

だからこそ、いまここでシロさんの真意を問いただしてみることにした。

俺の言葉を聞いたシロさんは、少し沈黙したあと……無表情のままで首を傾げた。

「試練に失敗したら快人さんの記憶が消える? 『私はそんなこと一言も言ってませんが?』」

「はぁっ?」

シロさんの返答を聞いて、クロの表情が唖然としたものに変わる。いや、クロだけじゃなく他の皆も驚愕している。

「ちょ、ちょっと、シロ、どういうこと?」

「どういうこともなにも……私は快人さんの記憶を消すと言った覚えも、試練に失敗したら快人さんの記憶が消えると言った覚えもありません」

「なっ!? い、いや! それじゃあ、アレは!!」

慌てて尋ねるクロに対しても、シロさんは首を傾げたままで言葉を返す。すると、クロはなにやら大きな繭みたいなものを指さした。

「アレが忘却のゆりかごであると言った覚えもありませんが?」

「なっ……え? あっ……じゃ、じゃあ、アレ……なに?」

「なに、ですか? 強いていうなら『外見だけは忘却のゆりかごに似ただのゆりかご』……ですかね?」

「……」

淡々と返答するシロさんの言葉を聞き、クロは絶句して固まってしまった。すると、直後に俺の後方からフェイトさんの声が聞こえてきた。

「……言ってない」

「フェイトさん?」

「たしかに……言われてみれば、シャローヴァナル様は私たちに説明する時も『もし私が快人さんの記憶を消そうとすれば、大きな戦いになるのは必至ですね』とか、そんな言い回ししてた。カイちゃんの記憶を消すなんて……言ってない」

その言葉には他の神族たちも思い当たるところがあったのか、クロノアさんとライフさんもなにやら動揺したような表情を浮かべている。

しかし、シロさんはそんな反応を気にした様子もなく、俺の方を向いて口を開く。

「それで、試練に失敗したらどうなっていたか……いまさら意味もないとは思いますが、お答えしましょう」

「……はい」

そうだ、まだ全部解決したわけじゃない。隠されたシロさんの真意……本当の目的とはいったい……。

「快人さんが試練に失敗した場合は……なんと……『一年間は再挑戦できませんでした』」

「……」

その言葉は空間に静寂をもたらした。俺もさすがに、その返答は予想外で呆然としてしまう。

いや、というか……。

「……再挑戦……できたんですか?」

「一度でクリアしろなどと言った覚えもありませんが?」

……たしかに、一度でクリアしろとか、チャンスは一度きりとか言われた覚えは……ない。

「ちなみに再挑戦する時は前回失敗したところから再挑戦できますし、最後の試練に関しては再挑戦するたびにクリアまでに必要な時間が半分になるという救済処置も用意していました」

「……」

便利なオートセーブ機能に、難易度低下のおまけつき……いたせりつくせりである。

「というより、私としては時間をかけて作ったのに……一発でクリアされてとても不満です」

さんざん不満だって口にしてたのは、それぇ!? な、なんだろうこの……全部シロさんの掌の上で転がされていたかのような感じは……。

というか、再挑戦可能なんだったら……先に言っといてくれよぉぉぉぉ!?