軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

『絆の翼』

多くの者が集まっている神域では、クロムエイナが悔しそうな表情で口を開いた。

「……完全に切断された。これ以上干渉できない」

「やっぱり、内部にいるシャローヴァナル様を外から上回るのは、難しいですか……」

快人に呼びかけ続け、ようやく声が届いたと思ったら……シャローヴァナルによって、必要最低限の連絡のみで打ち切られてしまった。

シャローヴァナルが内にいる以上、外からの干渉は難しい。

「……私たちには……なにも……できないの?」

「そんなことはありません。なにか、方法があるはずなんです……シャローヴァナル様はカイトさんに対して『多くの絆を紡ぎ、貴方だけの翼に変えろ』と、そう言ったらしいです。だから、なにか、ここに集まった私たちがカイトさんの試練の助けになる方法があるはずなんです」

「うん。シロは、嘘は言わない……そういったからには、カイトくんが紡いだ絆が、この試練で重要になってくるはずだよ」

さすがのアリスでも、現時点は情報が少なすぎて詳細までは分からない。それでも、必ずなにかがあるはずだと確信していた。

外野の戦いである神族と人魔連合軍の決戦を除外して考えるなら、ここまでの試練において明確に快人が紡いだ絆が彼の助けになっている感じではない。

だが、分からない。集まった多くの者たちもそれぞれ頭をひねって考えるが、現状快人の試練に干渉できるような要因は見つからない。

ジリジリと肌を焼くような焦燥感に晒されながら、クロムエイナはゆりかごに触れたまま……快人の無事の生還を心より祈りながら、小さくその名前を呼んだ、

「……カイトくん」

その瞬間……変化は――現れた。強い思いを込めてクロムエイナが快人の名前を呼んだ直後、ゆりかごが強烈な光を放ち、クロムエイナが触れている部分に魔法陣とは違う複雑な紋章が出現し……それがゆりかごの中に吸い込まれていった。

「……いまのは……」

「ッ!? 皆さん! ゆりかごに触れてください! そして、カイトさんのことを強く思いながら、名前を呼んでみてください!!」

現れた明確な変化に、即座に反応したアリスが指示を飛ばし、集まった者たちは次々にゆりかごに触れていく。

だが、クロムエイナの時のような変化が起こったのは、ほんの少数……アリス、アイシス、リリア、ジークリンデ、フェイトの五人だけ。

そう、快人の恋人である者たちが触れた時にだけ、変化は起こった。そして……。

「カイトくん……頑張って」

「……なるほど、そういうことだったんすね」

「……うん……私にも……分かった」

「けど、どれだけカイちゃんの助けになれるか、分かんないね……」

変化が起こった者たちの頭には、現在快人が行っている試練の内容が断片的に流れ込んできており、少しだけだが状況を把握できた。

「あとは、待つしかないのでしょうか……歯がゆいですね」

「えぇ、私も同じ気持ちですよ、リリ……ですが、いまは、信じましょう。カイトさんと――を」

快人と強い絆で結ばれた者たちは、不安そうな表情で……それでも希望を宿しながら呟き、残る者たちへ状況の説明を……。

第二ステージへと移行した仮想世界は、黒い人型の怪物があちこちに存在していた。快人以外のすべての住人が怪物へと変わり、味方は一人もいない状態。

仮想世界において快人が通っていた夢ヶ丘大学にも……大量の怪物が存在していた。

しかし、突如その怪物の内の一体に……空から光が降り注ぐ。そして黒い体にヒビが入ると……殻が割れるように砕け散ったかと思うと、怪物の中からある人物が現れる。

「……『本当のボク』……君の想い、願い、たしかに受け取ったよ。君がこの世界に来れないのなら……ボクが代わりに戦う!」

白衣を翻し、少女……『黒須絵里奈』は駆け出した。この世界で一人きりで戦う快人の力となるため……『残る5人の仲間』と早急に合流するために……。

仮想世界に存在する高層ビルの屋上、眼下に蠢く大量の怪物たちを見下ろしながら……シャローヴァナルは静かに呟いた。

「……気付きましたか。私が用意した快人さん側の助けとなる存在たちに……舞台は整ったと、そう言っていいのでしょうね」

そう呟いたあとでシャローヴァナルが軽く指を振ると、集まっていた黒い怪物たちが一ヶ所に集まり混ざり合い、ひとつの大きな黒い球体へと変わっていく。

「ですが、あまり時間はありませんよ? 互いの持ちうるカードは卓上に並びましたが、状況は依然としてこちらが有利。『コレ』が完成するまでに、目的の場所に辿り着けるでしょうか?」

誰に対してというわけでもなく、ひとりでそう呟いたシャローヴァナルはその全てを見通す瞳で、快人の姿を捕捉する。

「……ひとつ目は、夢。ふたつ目は、脱出……残る試練は『二つ』……『別れと悠久』……さぁ、快人さん。私の愛しい特異点よ。もっと見せてください、貴方という存在の可能性を……」