軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

『穏やかな時間』

午前中の講義を終えた俺と有紗は、別の講義を受けていたアイリスさんと合流し、昼食を食べるために学食にやって来たのだが……学食は俺たちの想像以上に混んでおり思わず足を止めてしまった。

「なんか、今日はやたら混んでるな……連休明けだからかな?」

「……ちょっと出遅れちゃいましたね。いい席は取れなさそうですけど……どうします? 今日は、私も快人さんもアイリスさんも午後の講義は無いですし、いっそ外で食べますか?」

「う~ん、俺はそれでもいいけど……アイリスさんは、今日もお弁当ですか?」

「……ううん……今日は……持ってきてない……よ?」

俺と有紗は基本的に学食だが、アイリスさんは日によって弁当を自作してきていることもあるので尋ねてみたが、今日は違うらしい。

なら、有紗の提案通り外に食べに行ってもいいかもしれない。

「じゃあ、外に食べに行くか……どこいく?」

「そうですね。有紗ちゃんは違いの分かるアダルトな超絶美少女なので……ハンバーガーにしましょう!」

「……アイリスさん、どこがいいですか?」

「無視ッ!?」

まぁ、正直有紗はなんでも食べるし……ここは、アイリスさんの要望を重視することにしよう。

「……私は……ハンバーガー……あまり食べたことがない……から……食べてみたい」

「そうですか、じゃあ駅前のハンバーガーショップにしますか」

「……うん」

「なんでしょう、この扱いの差……釈然としませんね」

有紗がなにやらぶつくさ言っているが適当にスルーし、学食を出てハンバーガーショップへ向かうことにする。

するとその途中で、ふと思い出したように口を開いた。

「……『 風(フェイ) 』も……誘う?」

「あっ、そうですね。有紗……今日、風さんって来てるのか?」

「来てるはずですけど……また図書館辺りで寝てるんじゃねぇっすか?」

風さんというのは、俺たち同級生グループで仲の良いメンバーのひとりだ。名前は村雲風……名前を聞くと、中国とかその辺りの方のような印象を受けるが、バリバリの日本生まれ日本育ちである。

正確にはクォーターらしいが、その辺りの話は詳しく聞いてない。

有紗の幼馴染兼親友で、俺も高校時代からの付き合いの友人だ。頭は非常によく、特にコンピューター関係は凄まじいのだが、とにかく面倒くさがりで授業もしょっちゅうサボってた。

まぁ、それでも危なげなく大学に進学しているので……やはりなんだかんだで凄い人だと思う。

「……風さんを探してたら、本当に場合によっては日が暮れるので私たちだけで行きましょう」

「まぁ、そうだな」

有紗の言う通り風さんは、探そうと思って見つかる相手ではない。付き合いの長い有紗は、それなりの確率で発見できるみたいだが……確実ではない。

そういうわけで、今回は風さんの捜索は行わないことにして、三人でハンバーガーショップへ向かった。

駅前の有名なハンバーガーチェーン店で注文を終え、商品を受け取って四人掛けの席に三人で座る。

ちなみに俺はチーズバーガー派で、有紗はてりやきバーガー派である。アイリスさんはあまり着たことが無いということで、オーソドックスなハンバーガーを注文していた。

「にしても、前々から疑問だったんすけど……アイリスさんが、お弁当を持ってくる日ってなんか基準があるんすか? 曜日とかはバラバラですよね?」

「……うん……お父さんのお弁当と一緒に……作ってるから……お父さんの仕事が休みの日は……持ってこない」

「へぇ、なるほど……アイリスさんのお父さんって、なにされてるんでしたっけ?」

「貿易会社の社長っすよ」

「へぇ、だから休みがバラバラ……って、なんでオマエが答えるんだよ……有紗」

アイリスさんが答えるより先に返答してきた有紗に呆れつつ、他愛のない雑談を続けていく。

「けど、お弁当もいいですね。うちの母さんはお弁当作れるほど料理が上手くなくて……俺自身もそこまで料理が得意ってわけじゃないので、ちょっと憧れますね」

「……そうなんだ……じゃあ……有紗が作ってあげれば?」

「はぁっ!? な、なんで、私が!?」

「……だって有紗……すごく……料理上手だし」

たしかにアイリスさんの言う通り、有紗の料理の腕は超一級品である。有紗は結構な頻度で俺の家にも遊びに来るし、なんどか手料理を振舞ってくれたこともあるが……そのどれも本当に素晴らしい味だった。

「いや、まぁ、たしかに私はおふくろの味から三ツ星レベルの味まで、完璧に作れるスーパーな超絶美少女ですが……だからってお弁当は……い、いや、まぁ、快人さんがどうしてもっていうなら……作ってもいいんすけどね。いや、もちろん有料ですけど……」

「マジで!? いいのか? それなら滅茶苦茶ありがたいが……」

「え? そ、そんな食い付くんすか? あっ、ちょっと待ってください、顔近いです……有紗ちゃんにも、心の準備というものが……」

「いや、有紗の料理は本当に美味いし、学食のランチくらいの額なら喜んで出すよ?」

「そ、そそ、そうっすか……ま、まぁ、といっても、私はプロじゃねぇっすし、ざ、材料費だけでいいですよ。じゃ、じゃあ、明日から作ってきましょうか?」

「あぁ。ありがとう、有紗。本当に楽しみだ」

「……も、もぅ、時々急に積極的になるから心臓に悪いんすよ」

「うん? なんかいったか?」

「なんでもないです!!」

これは思わぬところで嬉しい展開になった。明日からの昼食が本当に楽しみである。

「……有紗……顔真っ赤」

「うるせぇっすよ!? なに笑ってんすか……あぁ、もう! 余計なこと言う口にはこうです!」

「……あっ……待って……マスタードは苦手――辛いっ!?」

有紗はなぜか、マスタードを塗りたくったナゲットを片手にアイリスさんの口に突っ込んでいた。