軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

仕事を終わらせてから来るようになったってことだ

思い悩むフェイトさんと二度目となるハイドラ王国でのデートで、俺とフェイトさんとの関係が友人から恋人へと変化した。

当初は恥ずかしさからどうにもギクシャクしていた俺たちだが、デートも終盤に差し掛かるころには調子を取り戻し、いつものように会話ができるようになった。

そして、関係が恋人へと変わったことで変化したこともあれば、恋人になる前と変わらない部分もある。例えば、フェイトさんは以前と同じように三日に一度ぐらいのペースで遊びに来る。

「……う~ん、なんというか、まったりだねぇ~」

「え、ええ、そうですね……えっと、フェイトさん?」

「うん?」

「なんで、俺の『膝の上』でダラけてるんですか?」

ソファーに座った俺の膝の上に乗っかり、いつもはクッションの上でしているダラけきった体勢になっているフェイトさんに声をかける。

するとフェイトさんは、うつ伏せに寝ころんだままのんびりとした口調で言葉を返してきた。

「私とカイちゃんは恋人同士なわけだし、これぐらいいじゃん」

「ま、まぁ、駄目だとか言う気はないですが……」

「でしょ? じゃあ、問題なしだね~」

いや、問題は大ありである。俺は先ほどから、太ももに押し付けられている柔らかな胸の感触を意識しないように必死だ。

今日は普段の法衣に身を包んでいるが、やはり下着は付けていないようで、太ももから伝わってくる感触は危険極まりない。

ガリガリと理性を削られていくようなこの状態が、一体いつまで続くのやら……。

「な、なんというか、結構恥ずかしくて……」

「あはは、カイちゃんは初心だねぇ~」

「……いや、フェイトさんの方こそ、耳まで真っ赤ですけど?」

「……余計なことに気付かなくていいの……」

こちらをからかうような口調で話しつつも、フェイトさんは決してうつぶせの状態から顔を上げない。たぶんだけど、フェイトさんの方も相当恥ずかしいんだろう。だからこそ無理やり明るく振舞っていると……。

ならばなぜこんな行動をとったのかという話になるが、そちらに関してもまぁ、なんとなくは分かる。

たぶんだけど、フェイトさんは『せっかく恋人になったんだから、自分の方からもアプローチしていかないと』とか、そんないじらしいことを考えているんだと思う。

なんだかんだでフェイトさんは純情だし、恥ずかしくても俺に対して愛情を表現したいと考えてくれている。まぁ、それが分かっているからこそ、俺も滅茶苦茶恥ずかしいのだが……。

「……」

「……」

フェイトさんとふたりきりでいると、時々こうして互いに無言になることがある。ただ、その沈黙は決して嫌なものでは無い。

互いに気恥ずかしくて言葉にできないだけで、俺もフェイトさんも、深い好意を感じており……なんというか、幸せな気持ちになれている。

なんというか、静かで穏やかで……互いの体温だけを感じているようなこの瞬間は、本当に尊いものだと思う。

「……そういえば、今日はクロノアさん、遅いですね」

「……今日は、来ないよ」

「え?」

フェイトさんは基本的に仕事をサボって遊びに来る。そして、1時間~3時間ぐらいでフェイトさんの脱走に気付いたクロノアさんが連れ戻しに来るというのが定番の流れだ。

「……今日は、仕事終わらせてきたから」

「えっと、なんというか……珍しいですね」

「……だって……やだもん」

「うん?」

「カイちゃんとふたりっきりの時間、邪魔されたくないから……」

この人は、本当に時々こういう異常に可愛い台詞を言う。小さな声で呟くその言葉が、嬉しくないはずがない。

「……私はさ、いまでも仕事は大嫌いだよ。拷問だって思ってる」

「フェイトさんらしいですね」

「うん。でもさ、カイちゃんのためなら……カイちゃんと幸せな時間を、少しでも長く過ごすためなら、仕事するのも苦じゃないよ」

自分で言ってて恥ずかしくなったのか、フェイトさんは両手で自分の顔を隠すように覆う。あぁ、もう、本当に……。

「フェイトさん、すみません」

「へ?」

「ちょっと、一回……抱きしめさせてください」

「うひゃぁっ!? カ、カイちゃん!?」

反則じゃないかと思えるほど可愛いフェイトさんを見て、俺は我慢できずに寝転がっているフェイトさんを起こして、その小さな体を思いっきり抱きしめた。

いや、本当に可愛すぎるというか、いじらしいというか……ともかく、愛おしさが溢れて止まらない。

俺に抱きしめられたフェイトさんは、一瞬ビクッと体を動かしながら、それでも抵抗したりすることはなく俺の腕の中におさまる。

そのまま少しの間沈黙が流れ……フェイトさんは顔を覆っていた手をゆっくりとおろした。そしてリンゴのように真っ赤な顔に、潤んだ瞳で、声を震わせながら小さく告げる。

「……ねぇ、カイちゃん」

「はい」

「その、一度もしたことないんだけど……キ、キスとか……してみたい……かも」

「……喜んで」

「あぅっ……カイちゃん……好き」

それは本当に小さな声だったが、しっかりと俺の耳に届き……俺たちは、互いに引き寄せられるようにゆっくりと、そして優しく……唇を重ねた。

拝啓、母さん、父さん――フェイトさんとの関係が変わったことで、大きな変化も小さな変化も起こった。なかでも、明確な……フェイトさんからの愛情強く実感できるのは、やはり……フェイトさんが俺の元を訪れる時――仕事を終わらせてから来るようになったってことだ。