軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

強烈な武器の存在を……

フェイトさんとの二度目となるデート。その途中でフェイトさんは自分の気持ちに答えを出し、そして俺はその想いを受け止めた。

結果だけを語るなら、俺とフェイトさんの関係が、友人から恋人へと変化した。

それは互いの心の在り方にも大きな影響を与える変化だと言えるだろう。ここまでのデートでは、互いに相手を意識するあまりいろいろと不自然な行動もあったし、緊張も多々あった。

しかし、こうして関係が進展したことで俺とフェイトさんの間に流れる空気は……。

「……あっ、えっと」

「……その……」

「……カ、カイちゃんからどうぞ」

「い、いえ、フェイトさんの用件を先に……」

落ち着くどころか、先ほどまでよりもさらにアタフタした感じになっていた……な、なぜだろう? いや、分かってる。

まず原因の一つは、フェイトさんが驚くほど純情であるという点だ。俺と恋人になったという事実を、意識しまくっているのか……告白の前以上に落ち着かない様子になっている。

そして、その緊張は例によって例の如く俺にも伝染しており、もはや気恥ずかしくて互いの顔が見れないというレベルにまで達してしまっていた。

さらには、運命の神様を前に言うことではないが、運命のいたずら的な要素が増えてきている。緊張して顔を合わせられなくて、このままじゃだめだと思って振り向けば、ほぼ確実にフェイトさんと同時に振り返って目が合う。

意識を逸らそうと飲み物に手を伸ばせば、同じタイミングで手を伸ばしたフェイトさんと手がぶつかるなどといった感じで、どうにも上手くいかない。

「……と、とりあえず、落ち着いて飲み物を……」

「う、うん、そうだね」

そんな奇妙な偶然を繰り返しつつ、なんとか飲み物を口に運ぶ……って、あれ? ブドウジュース? 俺が飲んでたのって、リンゴ……リプルジュースだった気が……。

「……」

「……」

どうやらフェイトさんも俺と同じく、『飲んでから』間違いに気付いたみたいで、ほぼ同時に振り返り……互いに顔を赤くして俯いてしまう。

か、間接キス……ちょ、ちょっと、ヤバい。意識しないようにと思うと、なんか逆にそのことばかり考えちゃう。

チラリと横を向けば、フェイトさんの柔らかそうな唇に視線が向かってしまい、慌てて首を振った。

「……ね、ねぇ、カイちゃん?」

「は、はい!」

「そ、その、さ……えっと、キ! キスとか! し、したほうが……い、いいのかな!?」

「えぇぇぇ!? ちょっ、フェイトさん! い、いきなりなにを……」

不意打ち気味に投げかけられた爆弾発言に、俺は一瞬で頭が真っ白になったのを実感しつつ慌てて聞き返す。

するとフェイトさんは、もじもじと恥ずかしそうに体を動かし、小さく両手の人差し指を突き合わせながら言葉を返してくる。

「い、いや、ほら……わ、私も、よく知らないんだけど……こ、恋人って、やっぱり、き、キスとか……するんじゃ、ないかな?」

発言も大変危険ではあるが、その可愛すぎる仕草やめてください。本当に思考する余裕がなくなるので。

「い、いや、その、必ずしも早急にってわけではないと思いますよ。あ、焦ってもいいことはないですし、そういうのは追々でも……」

「そ、そうなんだ。やっぱり、カイちゃんはよく知ってるね。じゃ、じゃあさ、恋人同士って……デートでどんなことをすればいいのかな?」

「……」

あれ? おかしいな? 全然思いつかない。いやいや、そんなはずはないだろう? だって、俺だってそれなりの数のデートを経験してきたはずだ。そういう方面に関しては、確実にフェイトさんよりは詳しい。

となれば、ここでいままでのデートを参考になにか言えるはずなんだけど……え? なんで? なにも頭に浮かんでこないんだ?

というか、さっきからフェイトさんの唇にしか視線がいかないんだけど……もしかして、俺いま、テンパってる?

と、とにかく、このままだとマズい。いや、決してフェイトさんとキスがしたくないというわけではないんだが、いまのこの状態でキスなんてしてしまったら……恥ずかしくて、残りの時間は会話なんてできなくなってしまいそうな気がする。

だからこそ、考えろ。なにか、ここまでのデートでしていなくって、恋人っぽいものは……。

「……そ、その、う、腕を組む……とか?」

「な、なるほど……じゃ、じゃあ、腕を組んで……海岸を散歩、とかかな?」

「そ、そうですね! それがいいと思います!」

結局無難なものしか口に出来なかったが、それでもこれで少しは落ち着く時間を確保できるはずだ。そのあとの展開は、またこれから考えるとしよう。

そんなことを考えながら、俺はフェイトさんと分担してレジャーシートを片付け始めた。

拝啓、母さん、父さん――俺は間違いなくテンパっていたと思う。そして、そんな状態で絞り出した答えが、思い通りに行くはずもない。そう、この時はまだ、俺は理解していなかった。いや、すっかり失念してしまっていた。腕を組むというのがどういう状態か、そしてなにより……小柄なフェイトさんが持つ――強烈な武器の存在を……。