軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

変化が訪れるということを

アリスが姿を消して少し経ち、落ち着いた……もとい、諦めたフェイトさんが溜息を吐いてから俺の方を向いて口を開いた。

「……そ、それで、カイちゃんはどうしたの? な、なにか、私に用事?」

「あ、いえ、フェイトさんが病気だと聞いたんでお見舞いに……」

「……病気? えっと、カイちゃん? 私、一応神だよ。最高神……私が病気に感染するなんてありえないよ?」

「え?」

あれ? なんかアリスの話と違う。い、いや、待て、しかしそれでもフェイトさんになんらかの異常があるのは間違いない。

「というか、そもそも、なにを根拠に病気だなんて……」

「い、いや、アリスから聞いて……」

「シャルたんから? もぅ、また適当なこと言って……」

「それに、フェイトさん……『仕事してる』じゃないですか!」

「……ホントだ。私、病気かもしれない」

実際かなり失礼な物言いのはずだが、「仕事をしているから病気」という理由にアッサリと納得するフェイトさん。うん、それはそれで、どうなんだろう?

ある意味フェイトさんらしいと言えばフェイトさんらしいので、少し本調子に戻りつつあるっぽい気はする。

「ま、まぁ、ともかく元気そうでよかったです。最近はあまり遊びに来てなかったので、少し心配してました」

「あっ……うっ……それはその……」

「フェイトさん?」

「な、なるほど、シャルたんが病気って言った意味を、ようやく理解したよ。いや、私も知識としてそういうのがあるのは知ってたけど……うぅぅ」

なぜかフェイトさんは再び動揺したような表情を浮かべる。なんだろう? やはり体調が悪いというような感じではないが、いつものフェイトさんとは少し違う気がする。

フェイトさんは基本的に言いたことはズバッというタイプなので、言い淀むような反応自体が珍しい。

ちょっと、フェイトさんが悩んでいる間に情報を整理してみよう。フェイトさんの様子は明らかにいつもと違う。そしてアリスは、フェイトさんはある意味病気だと言っていた。

さらにはフェイトさん自身にもなにかしらの心当たりがあるようにも見える。自分自身で「病気に感染するなんてありえない」といったはずなのに……。

それらの情報から考えてみると、フェイトさんの病気というのは……いわゆる『心の病』的なナニカだと思う。仕事をしているというのは、この際混乱から普段とは違う行動をとってしまっていると考えて無視しよう。

しかし、フェイトさんが鬱だとか、そういうものになるとは考えにくいし、実際そんな感じではない。

うん? 待てよ……もしかして……いや、まさかとは思うんだけど……聞いてみようかな? 違ったら違ったで、笑い話で済むわけだし……。

「あの、フェイトさん」

「へ? な、なに?」

「フェイトさんの病気って……『恋の病』とか、そういう感じの……」

「うぇっ!? な、なな、なに、を……」

あれ? なんかこの反応、マジっぽい気がする。

「ち、違うよ! そうだと決まったわけじゃなくて……それに近いような気がするだけで……」

違うのあとはかなり小さい声だったが、なんとか聞き取ることができた。なるほど、恋だと確信したわけじゃないけど、淡い恋心みたいなのが芽生え始めている感じだろうか? それで、戸惑っていると……。

って、ちょっと待てよ。その場合の相手って……俺、なのか?

い、いや、そうと決まったわけじゃないけど……そもそもフェイトさんって、自分の能力が通用しない相手にしか興味がないみたいなことを言ってた気がするし、そう考えると該当する異性はたぶん……あれ? なんだこれ? なんか、俺の方も滅茶苦茶恥ずかしくなってきた。

「……」

「……」

俺もフェイトさんも、互いに続く言葉が言い出せず微妙に重い沈黙が流れる。

そしてしばらく言葉を失ったあとで、沈黙を破ったのはフェイトさんだった。

「……そう、だよね……シャルたんの言う通り、こんなの私らしくないよね」

「えと、フェイトさん?」

「カイちゃん! ひとつ、私の願いを聞いてほしい」

「願い?」

フェイトさんは顔を赤くしながらも、真剣な表情でこちらを見つめてくる。

「私は……カイちゃんに恋……してる……かもしれない。けど、分かんないんだよ。この気持ちが本当に恋なのかどうか……だから、それを確かめさせてほしい」

「確かめる?」

「……私ともう一度……デートして」

それは、もの凄く勇気の必要な言葉だろう。フェイトさんは戸惑っている。己の心に芽生え始めた得体のしれない感情に……いや、もしかしたら、恐れてさえいるのかもしれない。

それでも彼女はその不安に立ち向かうことを選び、俺に願い出てきた。小さな体を震わせながら……。

「わかりました」

その勇気ある言葉から目を背けたり、曖昧な返事を返すのはフェイトさんに対する裏切りだと思った。だから、俺はフェイトさんの提案を受け入れる。

そのデートを通して己の気持ちと向き合わなければならないのは、フェイトさんだけではない。彼女が答えを出したとき、俺が中途半端な返事を返すわけにはいかないから……。

拝啓、母さん、父さん――デート。その言葉だけなら、甘い響きに感じられる。だけど、そんなイメージとは裏腹に、まるで真剣勝負を挑むのような空気の中で、デートの約束は纏まった。俺も、フェイトさんも、確信している。その結果がどうであれ、このデートで俺とフェイトさんの関係に――変化が訪れるということを。