軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

どんな条件を出したんだろうか?

アイシスさん、リリウッドさんコンビによる歌が始まる。リリウッドさんは、アリスやフェイトさんが評価するだけあって、非常に上手い。彼女の響くような声は、特にこういった歌などには合っているのかもしれない。

しかし、リリウッドさんはあくまでアイシスさんのサポートに徹しているみたいで、自身が歌を引っ張るというよりはアイシスさんを引き立てるような歌い方をしていた。

そして、アイシスさんの歌は、ものすごく上手い……というわけではない。もちろん声は綺麗だし、普通と比べれば上手い部類だと思う。だが、シロさんやクロノアさんとライフさんは論外としても、ラグナさんたちのほうが歌唱力という点では上だった。

しかし……しかし、である。俺はさっきから次の青チームが登場すらしていないのに、赤の旗を上げようとしている手を抑えるのに必死になっていた。

だって……両手でマイクを握って、一所懸命に歌っているアイシスさんが尊すぎて……もう、アイシスさんの勝ちでいいんじゃないかなという思考があふれて止まらない。

とにかく、可愛すぎるのである。必死に頑張っているのが伝わってくるからこそ、上手すぎない歌が逆に引き立っているような気さえする。

ビジュアル的な面では、ここまでの面子の中で圧倒的な一位である。

そして、アイシスさんが歌い終わるとしっかりと拍手が起こった……心なしか、そこそこの人がステージから距離をとってる気もするが、アイシスさんは嬉しそうだ。

『う~ん、結構よかったね。死王は歌った経験少ない感じだったけど、界王のサポートのおかげでバランスも良かった気がするよ』

『そうですね。しかも、今回の判定はカイトさんですからね。カイトさんって、基本優しいですけど、クロさんとアイシスさんには甘いですから、生半可な相手では太刀打ちできないでしょうね。ちなみに、私には厳しいんですけど、なんででしょう!? 可愛い恋人ですよ!!』

『……まぁ、シャルたんだし、いいんじゃない』

『フェイトさんも厳しいっ!?』

まぁ、厳しい甘いはともかくとして、たしかに生半可な相手ではこのコンビでは、アイシスさんの天使っぷりには対抗できないだろう。

『さて、それでは青のコンビは……友達100人できるかな? いえいえ、この方の友達は『10万を軽く超えています』! これも一種のカリスマでしょうか? 初代妖精王! ラズさんです!』

「はいです!」

『そしてコンビを務めるのは、歴史深いアルクレシア帝国現皇帝! 趣味は乗馬とチェス! 最近人間味も出てきてアリスちゃん的には評価アップしてます! クリスさんです!』

ラズさんとクリスさん? これはまた、意外なコンビだ。仲良いのかな? いや、そもそもコミュ力おばけのラズさんは、誰とでも仲良くなってしまうだろうけど……。

そういえば、クリスさんはクロと知り合いだったっけ? それなら、クロの家族であるラズさんと仲がいいのも頷ける。

「クリスさん! 一緒に、頑張るですよ!」

「ふふ……ええ、頑張りましょう」

壇上で軽く言葉を交わすふたり……グッと小さな体で両手を握るラズさんを見るクリスさんは、どこか優し気で、仲の良さが伝わってきた。

そしてふたりが歌い始めたのは、明るい雰囲気の曲。奇しくも先ほどのアイシスさんとリリウッドさんコンビと同じく、ラズさんがメインになりクリスさんがソレをサポートするという形だった。

ラズさんは小さな体を目一杯動かし、壇上を飛び回りながら歌っていた。これがまた驚くほどに可愛らしい。

『これはいいですね。ポップな曲調はラズさんの声に合ってます。クリスさんもいいですね。安定したお手本のような歌声です』

『これは、結構レベルって意味じゃ拮抗してるね。いい勝負だよ。さて、カイちゃんはどっちの旗をあげるのかな?』

これは、判定が難しい。まさかの可愛い対決……一所懸命さが伝わってくるアイシスさんの真っ直ぐなパフォーマンス。明るく天真爛漫なラズさんの愛らしいパフォーマンス。

甲乙付けがたい。ここまでの勝負で一番判定が難しい。

俺はそのまま長い時間悩んだあと……意を決して旗を上げた。

『おっと、カイトさんが上げたのは……赤! ということは、アイシスさんとリリウッドさんコンビの勝利です! ちなみにカイトさん、理由をお伺いしても?』

『……えっと、正直かなり迷いました。どちらも素晴らしかったです。特にアイシスさんとラズさんの歌は甲乙つけがたかったです。ただ、少しだけ差が出たのはサポートに回ったリリウッドさんとクリスさんですね。クリスさんも非常に上手かったんですが、リリウッドさんの方が上回っており、そこが勝因になった感じです』

『なるほど、ありがとうございます。意外に真っ当な理由が返ってきたので、アリスちゃんビックリです』

『……おい』

ともあれ、アイシスさんとリリウッドさんのコンビが二回戦へ進むことになった。ラズさんたちも、他の相手なら十分に勝機があっただけに、とても惜しかった。

その後もコンビ対抗カラオケ大会の一回戦は順調に進んでいった。葵ちゃん、陽菜ちゃんの地球組が俺にとっては懐メロといっていい曲を歌いあげ、アマリエさんとオーキッドの姉弟コンビを下し。

強烈さは無いものの、安定感がある正統派の歌声を披露したリリアさん、ジークさんコンビが、アハトとエヴァのコンビに勝利。

そして意外なところでは、アニマとキャラウェイさんがコンビを組んで登場した……いつの間に仲良くなったんだろうか?

ふたりは滅茶苦茶上手いとは言えないものの、力強く歌い上げてイータとシータの双子コンビに勝利して二回戦に進んだ。

イータとシータは、その、なんというか……イータの方は結構うまかったんだけど、シータの方が歌いなれてないのか、音程がまったく合っていなかった。

まぁ、それでもクロノアさんとライフさんコンビに比べれば、全然聞ける歌ではあったが……。

衝撃的だったのは……なぜか、イルネスさんがパンドラさんと組んで現れた点だ。ペア決めで余ったのだろうか? とにかく驚きの組み合わせだった。しかも、結構息が合ってて、見事勝利してたし……。

そうして一回戦が進んでいき、いよいよ一回戦最後の戦いとなった。まず赤のコンビとして現れたのは、レイさんとフィアさんの夫婦コンビ。

このコンビがデュエットを見事に歌い上げると、ついに最後のコンビが壇上に上がる。

『さぁ、というわけで、一回戦最後のコンビは……私! アリスちゃんと!』

『……棄権していい?』

『ちょっとっ!? フェイトさん、まだ始まってすらいねぇっすよ!? お願いですから頑張ってください!』

『……面倒』

そう、ここまで実況と解説を行っていたアリスとフェイトさんのコンビだった。

これは……どうなんだろう? アリスは間違いなく滅茶苦茶上手い。優勝候補と言っていいと思うが、問題はまったくやる気のないフェイトさんだ。

これはあくまでコンビ対抗のカラオケなので、アリスがいくら上手くてもフェイトさんが歌わなければ勝利はない。

宙に浮かぶクッションの上でだらけているフェイトさんに対し、アリスは少し考えるような表情を浮かべてから、マイクを置いてなにかを耳打ちした。

「……え? マジで? そうなっちゃう?」

「なります。確実です」

「……う、う~ん……じゃあ、これで」

耳打ちした内容になにやら反応を示したフェイトさんは、少し考えたあとで指を一本立てる。しかし、アリスは首を横に振り、手をパーにしてフェイトさんに見せた。

するとフェイトさんも首を振り、今度は指を二本立てる。それにアリスが再度首を振り、今度は四本の指を立てた。

……なにかを交渉しているみたいだったが、最終的に両方とも三本の指を立てたことで合意し、フェイトさんはクッションから降りてマイクを掴んだ。

『しょうがないね。じゃあ、ちょっとだけ本気出そうかな……』

『おっ、これはレアですね。フェイトさんの本気とか、数万年ぶりなんじゃないですか?』

『……いや、最近カイちゃん絡みで、シャローヴァナル様に指示されて2万年ぶりの本気出したから……』

『……まずそこまで2万年かかってるのが、凄まじいですね』

どうやらフェイトさんはやる気になったみたいで、シロさん関連を除いてまったく本気を出さないフェイトさんが、本気を出すと宣言した。

というか、2万年って……フェイトさんらしいというか、なんというか……ともあれ、これは凄く期待できそうだ。

拝啓、母さん、父さん――最高神ふたりは壊滅的な歌声だったけど、フェイトさんはどうなんだろうか? アリスがコンビに選ぶだけあって上手いのかな? それにしても、あのフェイトさんをやる気にさせるとは、いったい――どんな条件を出したんだろうか?