軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

やけに積極的だ

まるでRPGのラスボスのようなド派手な登場をしたシロさん。口にした「はしゃいでいる」という言葉は、そこはかとない不安を感じさせる。

ま、まぁ、機嫌が良いみたいだし、そういう意味ではよかったと思うべき……かな?

「と、ともかく、早速行きましょうか?」

「待ってください」

「……へ?」

「大変な事態が発生しています」

気を取り直して祭りに向かおうとする俺を、シロさんが止める。なんだろう? 大変な事態? 相変わらずの無表情で緊迫した感じは全然伝わってこないけど……。

というか、創造神であるシロさんが大変という事態ってのは、一体なんなんだ?

「私の両手が空いています」

「……はい?」

「私の両手が空いています」

「……えっと、その、大変な事態というのがソレですか?」

「はい。大変な事態です。これでは出発できません」

「……」

手を繋げと、そういうことだろうか? いや、それにしてはやけに回りくど……あぁ、なるほど。シロさん的には、それを俺の方から提案してほしいわけだ。

だから、直接的なことは言わないと……。

「その通りです」

……肯定しちゃったよ。しかし、う~ん。普通の街中ならまだしも、祭りという人の多い場で、絶世の美女かつ世界の神であるシロさんと手を繋いで歩くのは……いろいろと勇気がいるというか、尻込みしてしまうというか……。

「……私の手が空いたままでは、祭りを心から楽しむことができないかもしれません。そうなると『例の作品』は、うっかり神域に飾ってしまいそうです」

「シロさん! せっかくのデートなので、ぜひ手を繋いでください!!」

「ふむ、仕方ありませんね。快人さんがどうしてもと言うのなら、やぶさかではありません」

「……」

忘れてた……そういえばこの方、恐るべき人質を持っているんだった。駄目だ、あの悲しいクリーチャーがシロさんの手にある以上、シロさんの要望を無視することはできない。

抵抗を諦めた俺は、右手でシロさんの左手を握る……柔らかっ!?

いや、本当にシロさんはズルすぎると思う。本当に細部に至るまで完璧というか、肌も柔らかくて触れている手が吸い付くような極上の感触がする。

ふわっと漂ってくる心地よい香りもどう表現していいかわからないが、とにかくいい香りで……凄まじいほどの完璧美女っぷりを感じる。

「もっと褒めてください。私が喜びます」

「……」

まぁ、ド天然な性格はともかくとして……。

それはそうと、こうして手を繋いでいて……ふと昨日クロと回った時のことを思い出した。意識したわけではないが、昨日はクロが右手、俺が左手だったのでいまとは逆の形だなぁと……。

「むっ……」

別に大きな意味など無い。なんとなく頭に思い浮かべただけだったが、直後に背筋に冷たい汗が流れた。

そう、ここになってようやく俺は致命的な失敗に思い至った。具体的には、やたらクロに対して対抗心を持っている心の読める誰かに関して……。

ポツリと不満げな声を零したシロさんは、そのまま俺の右腕をガッシリと抱きしめ、さらに俺の肩に頭を乗せた。

「ちょっ!? し、シロさん!?」

「これは、クロの身長ではできません。私の勝ちです」

「勝ち負けの基準が分からないんですけど!? あと、あ、当たって……」

「もちろん、当ててます。この膨らみも、クロにないです。つまり……私の勝ちです」

「ここにクロは居ないのに、なんに対して勝ち誇ってるんですか!?」

あわわ、腕が、俺の右腕が……シロさんの大変豊かな膨らみに挟み込まれて……。

というか、す、すごいな……しっかりとした弾力を感じるのに、俺の腕が沈みこむほど柔らかいって……くそっ、創造神は体までチートなのか!? あ、頭がクラクラしてきた……。

「あ、あの、シロさん。離し……」

「駄目です」

「い、いや、これは本当に持たないので……」

「具体的になにがどう持たないのかを説明してくれるなら、一考します」

「鬼ですか貴女は!?」

「いえ、神です」

駄目だ、やっぱり断固として譲ってくれないどころか、過去最高に性質が悪い発言してる!? というか、なんか今日のシロさんは積極的すぎませんか!?

「……少し、はしゃいでます」

はしゃいでいるシロさんが恐ろしすぎる。と、ともかく、落ち着け、冷静になれ……素数とか、難しいことを思い浮かべて……。

あれ? なんで、素数とか計算式とか思い浮かべようとしてるのに、シロさんと混浴したときの光景ばかりが鮮明に浮かび上がるの?

なんだこれ? おかしい、これは絶対におかしい。だって考えてることと全然違う映像が、まるで映像再生してるみたいにハッキリと浮かんでくるし……うん?

そういえば、こんな感じのやつ前にも一回体験したような……そうそう、たしか神殿を訪問した時に……。

「……シロさん、俺の頭に浮かべてる映像を即刻消してください」

「バレましたか」

やっぱりあなたの仕業かぁぁぁ!? というか、いったいなにを考えてこんな真似を!?

「手を離したら、手が滑ってしまうかもしれません」

「……手が滑ったらどうなるんですか?」

「快人さんの記憶を呼び起こしてしまうみたいです。不思議です」

「……」

お、脅してきやがった!? シロさんが腕に抱きついた状態で祭りを回るのを了承しなければ、悶々とする映像を脳内にエンドレス再生させるって?

ほ、本当に……今日のシロさんは、厄介すぎる。

拝啓、母さん、父さん――な、なんていえばいいのか……恐るべき創造神とでもいうべきか、完全に主導権を握られてしまっている。というか、どうなってるんだろう? 今日のシロさんは――やけに積極的だ。