軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

残念美人という言葉が似合う人はいない気がする

地獄のような……というより、明確にベビーカステラ地獄だった昼食を終え、今度は魔法具が並ぶエリアへとやってきた。

流石は世界最大シェアを誇るセーディッチ魔法具商会のトップであるクロ主催の祭りというべきか、魔法具エリアは他と比べても一段上の盛り上がりを見せていた。

「凄いな……ここにあるの全部魔法具なのか?」

「そうだよ。商会としての出店も多いけど、個人出店も多いね。特に今回は、ボクのところを含めて商会の代表とかもいっぱい来てるし、売り込みのチャンスでもあるからね」

「……なるほど」

「昨日のシャルティア主催のお祭りで、新技術をいっぱい公開したし、もしかしたらさっそくその新技術を使ってる魔法具もあるかもしれないね」

魔法具というのは本当に無限とすら言っていい可能性を秘めている上、いまだ発展途上でもある。それは俺も昨日の祭りで実感した。

特に魔界は実力主義らしいし、こういう個人作成の魔法具とかを見てスカウトというのもよくあるのかもしれない。

そう考えると、魔法具職人にとっては大きなチャンスだろう。実際個人作成の魔法具を売っているところは、店主の気合の入り方も違う気がする。

「カイトくんから見ても新鮮な魔法具は結構あるかもしれないよ? ボクのところもそうだけど、商会で販売してる魔法具の多くは、コストとかとの兼ね合いで性能を落としてるものも多いからね。必ずしも、大商会の商品が一番性能がいいってわけじゃないんだよ」

「へぇ……それは、面白そうだな」

「うん! こういう場ってのはいいものだよ。競い合って、いろいろな発想をして……そうやって、技術ってものは発展していくからね。ある意味、いまはここが魔法具の最先端かもしれないね」

そう語るクロの眼差しはとても優しく、成長していく世界を楽しんでいるように見えた。う~ん、少し前までベビーカステラ料理に目を輝かせていたのとは、まるで別人みたいだ。

けど、まぁ、クロは魔法具の生みの親って話だし……魔法具が発展していくことは、クロにとっては我が子が成長していくみたいに感じているのかもしれない。

「……じゃあ、せっかくだしいろいろ見て回ろうか」

「うん! いこっ、カイトくん……って、あれ?」

「うん? どうした?」

「……あれって、リリアちゃんたちじゃない?」

「へ?」

クロに言われて視線を動かしてみると、100mほど先にリリアさん、ルナさん、ジークさん、葵ちゃん、陽菜ちゃんの五人の姿が見えた。

アリスはともかくとして、この馬鹿みたいに広い会場の中で……リリアさんたちとも結構遭遇してる気がする。

クロと顔を見合わせ、頷き合ってからリリアさんたちのいる場所へと向かって移動する。近づくにつれ、五人の会話が聞こえてきた。

「……陽菜ちゃん、興味があるなら買ったらいいんじゃない?」

「う~ん、でも、これ高いですよ」

どうやら陽菜ちゃんがなにか魔法具に興味を持っていて、それを買うかどうかを迷っている感じだ。

「……魔水晶も高純度ですし、術式も素晴らしいので、決して高い買い物ではないと思いますが……」

「いや、リリの基準ではそうかもしれませんけど……これはなかなか手が出る金額ではありませんよ」

「お嬢様って、なんだかんだで金銭感覚は貴族ですからね~」

露店を見つめる葵ちゃんと陽菜ちゃんの少し後ろで、リリアさんとジークさんとルナさんが会話をしている。ちょうどその三人が俺たちから見て近かったこともあり、まずはそちらに声をかけることにした。

「リリアさん、ジークさん、ルナさん、偶然ですね」

「おや? カイト様、奇遇……で……す……ね?」

「うん?」

俺の声に一番初めに反応したルナさんは、こちらを振り返ったあとで……目を見開いて硬直した。

ルナさんの視線の先には……あぁ、浴衣姿のクロか……。

「……ルナ?」

「……と……」

「と?」

ルナさんに続いてこちらを向いたリリアさんとジークさんは、ルナさんの様子がおかしいことに気づき、先にそちらに声をかける。

ルナさんはプルプルと震えており……少しして、ガバッと顔を上げ、鼻から大量の血を流しながら叫んだ。

「と う と い !」

そして手で鼻を抑えて、地面へと倒れこんだ。ドクドクという音と共に、地面には血だまりが広がっていく。

「ルナッ!? ちょ、ちょっと、大丈夫ですか?」

「……お嬢様……私は……よくやく死に場所を見つけました……不肖ルナマリア……生涯に……一片の悔いも……ありません」

いやいや、鼻血で出血死って……相当間抜けな死に様な気がするんだけど!?

「いや、なにを馬鹿なことを……」

「私は……確信しました……私はいま……この瞬間のために……生まれてきたのだと……」

狂信者(ルナさん) 、そんな人生でいいのか? いや、本人これでもかというほど満足げな顔してるけど……。

そんなルナさんに、首をかしげながらクロが近づき、手をかざす。

「ルナマリアちゃん、大丈夫? ほら、ジッとしてて、治癒魔法かけてあげるからね」

「ガハァッ!?」

「なんでダメージ!? あれ? ボク、魔法間違えた?」

クロに治癒魔法をかけてもらったルナさんは……吐血した。もう、放っておけばいいんじゃないかな? ……殺しても死なないような人だし……。

拝啓、母さん、父さん――俺もこの世界にきていろいろな人と出会ってきた。濃い人やある意味で凄まじい人も見てきたが……なんというか、ルナさんほど――残念美人という言葉が似合う人はいない気がする。