軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ガッツリ説教しておこう

夕暮れに染まる道を、アリスと並んで歩く。

六王祭五日目は、本当に最初から最後まで圧倒的なほどに面白かった。

「いや、本当に楽しかった。今日は珍しくこれといったトラブルもなかったし……」

「……普通はそれだけトラブルに遭遇するほうがおかしいんですけどね」

「……確かに」

「あはは、まぁ、カイトさんに楽しんでいただけたなら、私も頑張ったかいがありましたよ」

「けど、あんなに楽しくて凄いものがいっぱいなのに、ほとんど商品化されないってのは……なんだか、残念だな」

アリスの話では今日見たアトラクションやおもちゃのうち、ほとんどは商品化が難しいらしい。一部機能を搭載した魔法具なんかは、明日にあるクロのお祭りで販売されるらしいが……それでも全体から見ればすごく少ない。

「まぁ、コストや技術的に量産が難しいってものもありますが……なんでもかんでも、便利になればいいってわけでもないですからね」

「……そういうものかな?」

「そういうものです。例えば、料理人以上に美味しい料理を自動的に作ってくれる魔法具があれば、料理人は仕事を失います。生産の分野でもそうですね。だからこそ世界の情勢とかを見つつ、流通させるものは選ばなくちゃいけません」

「……なるほど」

「もちろん便利になるのはいいことです。でも、どんなことでも自動化され、どんなものでも簡単に手に入るようになってしまえば……その先に待つのは緩やかな衰退です。生物が生物らしく生きるためには、やっぱりある程度の競争ってのは必要になってくるんですよ」

まるで、実際に見てきたような言い方だ。いや、たぶん見てきたのだろう。予想でしかないが、アリスのいた世界は、俺のいた世界と比べてもかなり技術が発展していた世界なんだと思う。

こうして実験とはいえ様々な初出の技術を作り出せるのは、基板になる知識を彼女が有しているからなんだろう。

すべてが自動化され、競争というものがなくなった世界。それを見てきたからこそ、アリスは世界の在り方というのを深く考えている気がする。

実際今日見たアトラクションも、どれもすごい技術ではあったが……あくまで遊びという目的のみで作り出されていた。

「……なんというか、今日はアリスを見直すことが多い気がする」

「そうすか? いいですよ! ガッツリ褒めてください! 私は褒められて伸びるタイプですからね。さぁ、カモン!!」

「……こういう馬鹿なところが無ければ、素直に尊敬できるのになぁ」

「上げて落とされた!?」

とはいえ、まぁ、アリスのことを尊敬しているというのは間違いない。今日という一日が楽しかったのも、なによりアリスが一緒にいたからだと思う。

明るく気安い関係というか、アリスと一緒にいるときの空気は……すごく好きだ。

「……そういえばさ、アリスはどうしてこういう感じの祭りを企画したんだ? お金だけが目的ってわけじゃないだろ?」

「……話逸らしましたね。まぁ、いいですけど……未来への希望ってのは、日々を生きる活力になるものです。なのでちょっとだけ、未来の技術をお披露目した感じですかね。もちろん、いろいろ加減はしてますけどね」

「いろいろ考えてるんだなぁ……ちなみに、明日のクロの祭りはどんな感じになるの?」

「基本的にはオーソドックスな祭りですよ。魔法具の販売が少し多めってだけで、あとは規模の大きい縁日とか花火大会って感じですかね」

「へぇ、少し意外だ。てっきりまたとんでもない祭りかと思ってたけど……」

当たり前のように縁日という言葉を使うアリスはおいておいて、どうやらクロのお祭りはそれほど奇抜なものではないらしい。

てっきりベビーカステラ祭りとか、そんな感じの時代を先取りし過ぎて誰も付いてきてないような祭りだと思ってたんだけど……。

「う~ん。まぁ、そもそも今回の六王祭は、クロさんがカイトさんと『お祭りデートしたい』ってのが切っ掛けですし、初志貫徹って感じですかね」

「……待って、なんかとんでもない新事実が発覚したんだけど!? え? 六王祭の開催理由って、そんなことなの!?」

「え、えぇ……まぁ、ほら、そもそも発起人はクロさんですよ? そんなたいそうな理由があるわけないでしょう」

「……た、たしかに」

クロは立場とは裏腹に庶民派だし、思い付きで変なことを言い出すことも結構ある。今回もある意味そんなパターンだったのだろう。

む、むぅ、なんだろうこの辺にくすぐったい感じ……嬉しいような、呆れたような……。

「……ちなみに、浴衣着てきますよ」

「へ? な、なんで?」

「私が吹き込みまし――痛いっ!?」

「……そういえばお前、クロとかアイシスさんに妙なこと吹き込んでたよな。いまのいままですっかり忘れてた。一度じっくり話し合おうと思ってたんだよ」

「……あ、あれ? 墓穴掘りました? ……か、カイトさん、顔が怖いですよ……や、やだな~ちょっとした茶目っ気じゃないですか? 可愛い彼女のいたずらですよ。笑って許し――あっ、ちょっ!? ほっぺ引っ張っての移動は止めましょう! もっと他の――ぎにゃぁぁぁぁ!? み、耳ぃっ!?」

例によって騒ぎ立てるアリスの耳を掴んで、人気のない場所へ強制連行する。まぁ、ちょっとこいつにはいろいろ言っておくべきことがあるので、説教しよう。そうしよう。

拝啓、母さん、父さん――クロに関してもそうだけど、特にアリスはアイシスさんに妙なことを吹き込み過ぎだ。純粋なアイシスさんは全部信じて実行しちゃうんだから、俺の今後のためにも――ガッツリ説教しておこう。