軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

楽しくなるに決まっているから

六王祭五日目。一日一日が非常に濃い六王祭も、半分以上が終わり、残すところは今日を含めて三日。今日は幻王ノーフェイス……アリスがプロデュースした祭りが開催される。

そして、俺は一日アリスと共に祭りを回ることになるのだが、いままでの四日間に比べると、俺の心には余裕がある。

その理由はいくつかあるが……やはり一番大きいのは、アリスの正体が幻王であると知る者は少ないという点だろう。どこに行くにしても人の注目を集めるというのは、思いの他疲れるので、この点は非常にありがたい。

まぁ、初日でメギドさんに名指しされ、二日目三日目と六王と一緒に回り、前日は特賞のレインボードラゴンの特殊個体を引き当ててしまったということもあり、アリスではなく俺が原因で視線が集まりそうな気もするが……。

だけど、それを抜きにしてもアリスが相手と言うのは気が楽だ。アリス自身の性格もあるし、普段からよく雑談をする相手だし、緊張とかもあまりない。

「……う~ん。カイトさんからの深い信頼に喜ぶべきか……いまだ恋人というより親友という感覚の方が強いことを嘆くべきか……」

「いや、まぁ、それだけ今日はのんびり楽しむ余裕があるってことだよ」

「……その心は?」

「だってアリスだし」

「応用の幅広っすね、その言葉」

苦笑するアリスの服は、六王祭だからといって変化しているわけでもない。いつも通りの動きやすそうな服に怪しげな仮面……こういうところも含めて、気楽でいい。

「しかし! 余裕でいられるのもいまのうちですよ、カイトさん!」

「……う、うん?」

「このアリスちゃんがプロデュースした祭りを見れば、驚きに目が見開いてそのまま固まってしまうでしょう!」

「……いや、でも、なんとなく予想できるし……」

「なんですと!? いやいや、カイトさん、冗談を言うならもっと上手く言ってください。私が『夜も寝ないで昼寝して考えた企画』ですよ……いくらカイトさんと言えど……」

「どうせ、都市丸ごと巨大なギャンブル場、みたいな感じだろ?」

「……」

俺の告げた言葉にピタッと固まるアリス。なんて分かりやすい。

そう、俺の心に余裕があるもうひとつの理由は、今日の祭りがどんなものかある程度予想ができていたから。

「……い、いや、違います。違いますよ」

「……」

「わ、私の企画は遊び……レジャーです。あくまでお金をかけるのは一部のアトラクションの副次的な効果でして、基本はエンタメですから……」

「というか、いまさらではあるけど……お前、エンタメとか普通に使うよな。絶対俺の居た世界のこと、詳しく知ってるだろ?」

「……はて? なんのことでしょう? アリスちゃん、カイトさんの世界のこと分かんないですね~」

「コノヤロウ」

前々から気にはなっていたが、アリスは俺の居た世界について詳しすぎると思う。絶対勇者役から伝わった知識だけじゃない。

たぶん、なんか魔法的な力で記憶とか覗き見てるんだろう。やろうと思えばできる的なことを前言ってた気がするし……。

「ところで、話は変わりますけど……」

「うん?」

「ふるさと納税って、絶対地元じゃない奴のほうが納税してますよね?」

「……お前実は、俺と同じ世界の出身とかそういうわけじゃないよね?」

やっぱコイツ詳しすぎる。何度か俺の居た世界に居たことがあるんじゃないかと思うほど知ってやがる。

「まぁ、そんな些細なことは置いておいて、さっそく行きましょう! アリスちゃんプロデュースの祭りは結構凄いですよ。まぁ、ネズミの居る夢の国とかでかい映画ランドとかとは方向性が違いますが、大規模なテーマパークという点では同じです。どっちかというと、超巨大なゲームセンターって感じですかね」

「……う、うん」

「ちなみに、カイトさんの世界の遊びを参考にした新しい遊びもいろいろ取り揃えていますよ!」

あれ? 気のせいかな? いま俺の頭に超次元格闘技であるWANAGEが過ったけど……そういう感じのやつじゃないよね? 命の危険がないやつだよね?

「ささ、行きましょう! いや~カイトさんは本当に幸せ者ですね。私みたいな超絶美少女を恋人にしてるだけでも、超幸運なのに……アリスちゃんプロデュースのアトラクションを、製作者のアリスちゃん自身に案内してもらってデートもできるんですから!」

「う、うん……まぁ、たしかにアリスと出会えたのは幸運だったと思うけどな」

「……そ、そこは、素直に肯定しないでください。恥ずかしいじゃないですか……」

微かに頬を赤く染めつつ、そっと伸ばしてきたアリスの手を取り、中央塔から出て祭りに向かう。

アリスプロデュースの祭り……本人曰く遊園地ではなく巨大なゲームセンター。そして俺の居た世界、地球にも詳しいアリスが作った新しい遊び。

少しだけ不安になってきた気がしたが、それでもまぁ、アリスと一緒なら問題はないだろう。

拝啓、母さん、父さん――六王祭も五日目。少しアリスの発言で気になる部分もあったが、それほど緊張していたりはしない。だって、アリスだし……一緒に過ごす一日は――楽しくなるに決まっているから。