軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一周年記念番外編「二人の異世界旅行前編②・遊園地」

新幹線で移動すること三時間半ほど。母さんが死んで以降はいつ度も訪れていない……俺にとっては懐かしい岡山駅に……あれ? こんな感じだったっけ?

う、う~ん。あんまり懐かしいなぁ~って感じがしない。まぁ、前に来たのは十年以上前だし、あまり覚えがないのもある意味当然かもしれない。

ここで宿泊予定のホテルにチェックインして荷物を置くという手もあるのだが……マジックボックスが普通にこっちの世界でも使えるので、チェックインはあとで大丈夫だ。

なので先に今回の目的地のひとつ……岡山のほこる遊園地「ブラジリアンパーク鷲羽山ハイランド」に行くことにする。

なんでブラジリアンパークなんだろう? おぼろげな記憶ではサンバをやってた気がする。母さん曰く「岡山の遊園地といえばここ」らしい。ちなみに父さんは、なにかを恐れるような表情で「なぁ、チボリ公園にしないか?」って言ってた気がする。

ちなみにこの鷲羽山ハイランド……ネットで調べたところによると、平日は午後5時までしかやっていないのである。夜の花火やパレードが無いのは残念だが……日に8つあるショーイベントの内、「サンバは2回」ある。

それに「学ぼうブラジル」というショーも2回あり、一日のショーの半分がサンバとブラジルである。なんというか、大変熱いこだわりを感じる。

ちなみにこの鷲羽山ハイランドのHPをみて衝撃的だったのは、園内でカフェを選択肢から外すと、選べる食事場所は『レストラングーニーズ』か『お好み焼き屋ひまわり』の二択であるというところ……ここ、もうちょっとブラジル感出しても良かったんじゃないだろうか?

まぁ、それは置いておいて乗り換えをすることにしよう。えっと、たしかスマホで調べた限りだと……最寄駅は児島駅。岡山から瀬戸大橋線で約30分程らしい。

いろいろ調べている時に『ラ・マル・ド・ボア』なる観光列車の存在も知ったが、乗り換えに戸惑う可能性を考慮して今回は普通の列車で行くことにした。機会があればいつか乗ってみたいものだ。

「カイトくん! ほらこれ、この『きびだんご』っていうの、すごく美味しいよ!」

「い、いつの間に買ってきたんだ……ちなみに、俺のお勧めは『大手まんじゅう』ってやつかな」

「買ってくる!」

「はやっ!?」

大手まんじゅうは薄皮でたっぷりの餡子を包んだまんじゅうなんだけど、それでいて甘さはくどくない。岡山に来た時は、いつも母さんに強請って買ってもらってたっけな……。

というか、俺の知らないお土産も結構増えてるんだなぁ……岡山ロール? そんなのもあるのか……。

そんなことを考えていると、大手まんじゅうを買ったクロが戻ってきたので瀬戸大橋線の乗り場に移動する。

途中クロが新作のベビーカステラがどうとか言っていたが……きびだんごや、大手まんじゅうならまだいいけど、途中食い入るように『ママカリ』という魚を見詰めていたのが、そこはかとなく不安ではある。

列車で児島駅まで移動したあとは、バスで5分ほど……俺たちは無事に目的地である鷲羽山ハイランドに到着した。

「おぉ、ここがユウエンチってやつなんだね! うわ~すごい!」

「クロ、気持ちは分かるけど先にあっちでチケット買わないといけないから」

「うん!」

はしゃぐクロを微笑ましく思いながら、チケットブースへ向かう。ふむふむ、大人は2800円か……60歳以上は500円で入れるらしい。まぁ、実年齢はともかく、クロの見た目で60歳以上というのは無理なので、大人しく大人を2枚買うことにしよう。

「いらっしゃいませ」

「すみません、大人を二人分」

「お客様、『小学生』の方は『子供用パス』がございますが、そちらでご用意してよろしいでしょうか?」

「……」

スッとクロが真顔になった。い、いや、確かにクロは小柄だし、人によっては小学生に見えるかもしれないけど……。

「……大人二人で」

「かしこまりました」

プルプルと肩を震わせているクロがなにかを言いたげだったが、気付かない振りをしてさっさとフリーパスを購入する。

そして若干慌てながらクロの手を引き、入場ゲートに向かっていると……ポツリと、不満そうな声が聞こえてきた。

「……ボク、大人だもん」

「い、いや、ほら、係の人も悪気があったわけじゃないからさ……」

「ボク、大人だもん……カイトくんより、年上だもん」

「分かってる! 俺はちゃんと分かってるから! な? ほら、機嫌直して……」

「むぅぅぅぅ」

向こうの世界において、クロは超が付く有名人であり、誰も彼女を子供扱いなどしない。

だからこそ、だろうか? チケットブースで子供扱いされたのがよっぽど不満だったらしく、クロは頬をリスのように膨らませていた。まぁ、なんというか、本人は怒ってるつもりなんだろうけど……可愛いだけである。

「ほら、クロ。せっかくのデートなんだから、楽しもう」

「う、うん。カイトくんがちゃんと分かってくれてるなら……」

「ああ、クロは魅力あふれる大人の女性だってちゃんと分かってるから、ね?」

「そ、そう? えへへ、カイトくんにそう言ってもらえると、すごく嬉しいよ」

そう言ってはにかむように笑うクロ。どうやら機嫌は直ったみたいだ。コロコロ変わる表情が、本当に愛くるしくて、思わず抱きしめたくなってしまったが……流石に場所が場所なので我慢である。

と、ともあれ、気を取り直して遊園地を楽しむことにしよう。