軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一周年記念番外編「始まりの来訪者前編④・出会い」

クロムエイナがとの話を終え、どこからともなく仮面を取り出して被ったシャルティアが、クロムエイナに連れられて戻ってきた。

クロムエイナからことの顛末を聞き、ある程度警戒が薄れたアインたちに連れられ、シャルティアはクロムエイナ達が済む家へとやってきていた。

「いや~というわけで、先程はご迷惑をおかけしました。すみません。まぁ、私の言い分として、そっちが先に殺気飛ばしてきたんだろう、とかありますけど……ここはひとつ、どちらも悪かったということで水に流しましょう。私はもう流しました。あっ、すみませんケーキおかわり!」

唖然……そんな言葉がよく似合う表情で、次々ケーキを平らげるシャルティアを見詰める面々。ほんの少し前に殺し合いをしたとは思えない緩さのシャルティアに対し、どう接して良いか分からないでいた。

頼みのクロムエイナも、なにやらショックなことがあったのか、部屋の隅でひとり「ボクはセンスあるもん」と呟いていて話には入ってこない。

「改めて、私の名前はシャルティア。よろしくお願いします……あっ、そこのゴリラはよろしくしなくていいです」

「あ゛?」

「というか、なんすかこの品の無いゴリラは……ペット? ペットっすか? クロさん、100歩譲って、そっちの巨大トカゲはペットでいいとしても、ゴリラはねぇっすわ……ペットのゴリラとか、いったいどこに需要があるんすかねぇ……」

『と、トカゲ?』

どうやらメギドが殺気を飛ばした張本人というに気付いているらしく、シャルティアはメギドにだけやたら刺々しく話しかける。

もちろん短気なメギドは即座に沸騰しかけたが、己が原因であるという自覚はあるのか、グッと怒りをこらえて口を開く。

「て、てめぇ、黙って聞いてればゴリラ、ゴリラと……いいか、俺の名前は……」

「あ~いいです。興味無いです。どうせゴリラ・ゴリーラとかゴリライオンとか、そんな感じの名前でしょ?」

「あ゛? 喧嘩売ってんのか、チビ女!」

もっとも、喧嘩っ早いメギドが堪えれるのは一回が限界だった。しかし、メギドが告げたチビ女という単語に、シャルティアの眉がピクリと動く。

「あ? おいこら、獣畜生。いま、なんて言った?」

「喧嘩売ってんのかって言ったんだよ! チビ女!!」

「……二度言いましたね? 喧嘩? ええ、買えるもんなら買ってみろ、筋肉ダルマ。クロさんの代わりに、私が躾してやりましょうか?」

「……上等だ」

スッと両者の目が据わり、メギドとシャルティアは同時に椅子から立ち上がる。そしてメギドは拳を、シャルティアはナイフを構え、一瞬で距離を詰めて戦闘を開始……する前に、ふたり揃ってクロムエイナに殴られた。

「ぎゃぅっ!?」

「ぐぉっ!?」

「……喧嘩しない」

「「……す、すみません」」

静かに告げるクロムエイナの言葉を聞き、メギドとシャルティアは大人しく矛を収める。

そのあと、両者は少々気まずそうな表情を浮かべていたが……しばらく経ったあと、シャルティアが口を開く。

「……で、名前は?」

「あん?」

「名前ですよ、名前。クロさんに免じて覚えてやりますから、とっとと名乗ってください」

「……メギドだ」

「メギドさんね」

「テメェは、シャルティアだったか? 異世界から来たらしいな」

「ええ」

クロムエイナの仲裁もあって、ややギクシャクしながらも会話を行う二人……ほんの少しではあるが、喧嘩をしたことで距離が縮まって……。

「……だからそんな変な格好してんのか?」

「……は? 変? どこかです?」

「いや、服もそうだが仮面も……異世界ってのは、皆そんな妙な格好をしてんのか?」

「はぁ~このカッコよさが分からないとは、本当に駄目ですね。まぁ、メギドさんみたいな脳筋に、美的センスを期待しても仕方ないですけどね」

「……あ?」

再び両者の間にピリッとした空気が流れる。相手を煽るような話し方をするシャルティアと、思ったことをそのまま口にするメギドは……どうも、相性が悪かった。

さらにいえばメギドは挑発に即乗るので、ある意味喧嘩に発展するのは必然とも言える。

「いやいや、気にしないでください。人によって似合う格好は違いますよ。メギドさんにはほら、腰ミノとか棍棒が似合いますよ。馬鹿っぽくてピッタリです」

「……あぁ、そうだな。そんな妙な格好が似合うのは、お前ぐらいの変人じゃないとな……」

「ははは、メギドさんって面白いですね~」

「お前も中々、いい奴じゃねぇか……」

どちらも笑顔ではあるが、目はまったく笑っていない。

「あははは……」

「ふっははは!」

「「ぶっ殺す!!」」

「……もう一回殴られたいの?」

静かながらよく通る声……それを聞いたメギドとシャルティアはピタッと動きを止め、メギドが人型に姿を変えてから、互いに固い握手を交わした。

「いや~メギドさんとは仲良くなれそうです。これからもよろしくお願いしますね」

「ああ、俺もシャルティアみたいな面白いやつは初めて見たぜ、いろいろ教えてくれ」

なお、両者が握る手には鉄の塊を粉々に粉砕できる程の握力が込められていたが……両者ともに、顔は笑顔のままだった。

そんなふたりを見て、クロムエイナは満足そうに頷いてから口を開く。

「そうそう、シャルティアもこれからボク達の家族になるんだから、仲良くしないとね」

「……なっ!? そ、そうなのか?」

「いえ、ぶっちゃけ私も初耳です。どこでそういう話になったんでしょう? 不思議ですね……まぁ、いいです!」

「軽いな、おい。馬鹿なだけか?」

「行くあてなんて無いっすからねぇ~。オプションのゴリラは余計ですが、そこそこ楽しめそうですしね」

再びメギドとシャルティアの間に火花が散り、両者は明るい笑顔のままで言葉を発する。

「おぉ、そうだ! シャルティア、飯食ったら……親睦を深めるために、散歩でもいかねぇか?」

「あ~いいですね。ふたりで行きましょう! 出来るだけ広くて、周りになにも無いところがいいですね」

「おぅ、任せとけ! 俺はこの辺には詳しいからな……『ゴミを潰しても大丈夫な場所』を知ってるぜ!」

「助かりますね~私はこの辺の地理には疎いですから……『ゴリラの遺体を埋められる場所』を探す手間が省けました」

遠目に見れば互いに笑い合っているようにしか見えないが……実際はどちらも般若を背負っていた。アイン達もそのことには気付いており、呆れたような表情を浮かべていたが、クロムエイナだけは本当にふたりが仲良くなったと勘違いして満足気な表情だった。

『……また、濃い奴が入ってきたのぅ』

『ええ、ちょっと先を思うと頭が痛くなります』

「……家族が増えて……嬉しい……あっ……アイン……紅茶を……」

「貴女は相変わらずマイペースですね。はい、どうぞ」

「……ありがとう」

こうしてクロムエイナ達の家族に、異世界からやってきた変わり者の少女……シャルティアが加わることになった。

高度な戦闘技術を持つ彼女のお陰で、後の六王全体の戦闘力が向上することとなったが……それ以上に、彼女の出現により魔界のあり方が、大きく変わろうとしていた。