軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

いろいろ大変そうな関係だ

偶然会ったシアさんに以前のお礼を言って、シロさんに創ってもらった激辛野菜の種を手渡したあと、ようやく中央広場に辿り着いた。

いや、それにしても……本当に何度も思ったけど、今日はいろいろ人と出会ったなぁ……。

クリスさん、エデンさん、フォルスさん、ラグナさん、マグナウェルさん、ツヴァイさん、ラズさん、アハト、エヴァ、アインさん、そしてシアさん……会話をした相手だけでもこれぐらい。リリアさんたちもカウントするなら実に14人もの人達と遭遇している。

いや、まぁ、皆同じ祭りに参加しているので絶対にあり得ないというわけではないが、この馬鹿みたいに広い会場でたまたま遭遇する確率を考えると、ものすごい遭遇率と言っていいだろう。

まぁ、もうすぐ中央塔なので、これ以上誰かと会うことは……。

「……おい、変態。私の前に現れるなと何度も言ったはずだ。死にたいのか?」

「見ているだけで、暑苦しい……下賤な脳筋は相も変わらず知能が足りない……いますぐ私の前から消えるなら、逃がしてやるが?」

「……」

……なんか居る。中央広場のど真ん中で睨み合ってるのが……あぁ、だから中央広場に全然人影がないのかぁ……。

そりゃそうだよね。片や戦王五将筆頭、片や最強の伯爵級高位魔族……どう見ても相性が悪そうなふたりは、殺気を撒き散らしながら言葉を交わしていた。

「……なぁ、アリス。俺の勘違いだったらアレだけど……アグニさんとパンドラさんって、仲が悪い?」

「ええ、ぶっちゃけ最悪の仲です……というか、メギドさんの配下と私の配下が仲悪い原因は、あのふたりが超絶に険悪な関係だからっすね」

どうもアグニさんとパンドラさんは、本気で仲が悪いらしい。アインさんとクロノアさんのように互いを認め合ったライバルと言うわけでは無く、互いが仇敵みたいな関係っぽい。

まぁ、確かにふたりの性格を考えてみても、噛み合う気がしないけど……。

「私は、部下が迷惑をかけた件でミヤマ様に謝罪に来ただけ、貴様に用は無い。今日ばかりは見逃してやる。すみやかに私の前から消えろ」

「あぁ、よかった。私は戦王配下等と言う無礼極まりない害虫がミヤマ様に近寄らぬように見張りに……本当に来てよかった。特に始末の悪い害虫がミヤマ様に寄りつこうとしているとは……無礼極まりない」

「貴様のような変態が周りをうろつく方が、よほど無礼だろうが」

「はぁ、脳筋は頭だけでなく目も悪いようだ……私が変態? ははは、笑わせてくれる。私はただ、ミヤマ様に『荒縄や鎖を用いて私の体を縛って』いただ上で、『獣欲の赴くまま精根尽き果てるまで凌辱』していただきたいだけだ!!」

「どこからどう見ても変態だろうが!!」

アグニさんに全面的に同意である。というか……なにとんでもないこと考えてるんだパンドラさん!? 駄目だこの人……早くなんとかしないと……。

「……アリス、お前の部下だろ、なんとかしてくれ」

「……いえ、あの子の性癖に関しては、私はもう既に匙投げたので……管轄外です」

パンドラさんのあまりの願望にドン引きしていると、ふたりの言い合いはどんどんエスカレートしていた。

「……貴女の方こそ、枯れた男に言い寄る雌ゴリラだろう? あぁ、失敬。言い寄って振られているが正しかったな……」

「おい、変態女、私はともかくオズマ様を侮辱するつもりなら容赦はせん……殺すぞ!」

「貴女が私を? ふふふ、できもしないことを口にするものじゃない……滑稽だ」

「「……」」

あかんこれ、ガチバトルが始まってしまう。

「アリス、コレヤバいって……止めてくれ」

「はぁ、もう、あの子には困ったものですね……やれやれ、じゃあ止め――る必要はなさそうですね」

「へ?」

「仲裁役が来ました」

アリスがそんな言葉を発するのと、アグニさんとパンドラさんが互いに拳を放ったのはほぼ同時だった。圧倒的な力を持つふたりの殴り合い……下手すれば中央広場が吹き飛びそうだが、そうはならなかった。

いつの間にかアグニさんとパンドラさんの間にはオズマさんが現れており、ふたりの放った拳を受け止めていた。

「……おじさん、元気な子は好きだけど時と場所は選ぶべきだと思うよ。六王祭会場での喧嘩は禁止だからね」

「お、オズマ様!?」

「チッ」

優しげな苦笑を浮かべながら告げるオズマさんを見て、アグニさんは目を輝かせ、パンドラさんは舌打ちをした。

そして、ふたりが拳を降ろしたのを確認してから、オズマさんは煙草をくわえながら言葉を発する。

「馬が合わないのを無理に仲良くしろとは言わないけど、まわりにも配慮しなくちゃ駄目だよ」

「はい!」

「なぜ、私が貴様に指図されねば――「パンドラ、ハウス」――え? しゃ、シャルティア様!? ちょっと、どこへ連れて行くのでしょうか? お、おしおきですか!?」

「……なんでおしおきでテンションあげてるんだか……はぁ……ともかく貴女は向こうで説教です」

「ありがとうございます!」

「……はぁ」

オズマさんの登場によりアグニさんの戦意は消え、パンドラさんはアリスの分体が溜息を吐きながら連行していった。うん、なかなかにカオスな状態だ。

ともかく、これで一段落かとそう思ったが……そうはならなかった。

「オズマ様!」

「うん?」

「お慕いしております! 結婚してください!!」

「……」

なんかいきなりアグニさんがオズマさんにプロポーズを始めたんだけど!? ちょっと、待って!? 急展開過ぎてついてけない。

というか、なんでこんなところでプロポーズを……。

「……いままで何万回言ったか分からないけど、おじさんは独り身が性に合ってるから……ごめんね」

「分かりました! では、『明日』改めて告白いたします!」

「……うん、アグニちゃんもイプシロンちゃんも、なにも分かってくれてないよね。ほとんど毎日同じやりとりしてるよね? 若い子の趣味は分からないねぇ……こんな年喰ったおじさんのなにが良いんだか……」

「全てです!」

「……う、うん。そっか、ありがとう……」

ある意味珍しい光景と言えるのか、オズマさんが本気で困った表情を浮かべているのは初めて見た。

拝啓、母さん、父さん――本当に今日はどうなってるのか、またも知り合いに遭遇したよ。それはそれとして、オズマさん……会うたびにアグニさんに告白されてるのかな? そして毎回断っていると……う、うん、なんか――いろいろ大変そうな関係だ。