軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

相当強い魔物なんだろう

WANAGEの試合は、それはもう酷いものだった。

世界ランク1位……アリスが15個中10個の輪っかを開始と同時に上空に放り投げ、続けて16位の……なんか名前長くて覚えられなかった人の攻撃を5個の輪っかで封殺。時間差で文字通り流星のように落ちてきた輪っかが、16位の防御をすり抜けて大量得点という展開だった。

正直実況が無ければなにが起ったかすら分からない展開だった。上に放り投げた輪っかが、ジグザグに機動しながら落ちてきたり、輪っかを防御する時に炸裂音みたいなのが聞こえたり……もはや完全に格闘技である。

「いや~凄い試合だったね。流石はナイトメアだよ」

「ええ、予告シューティングスターは、いままで世界ランク2位の『ベビーカステラ仮面』以外には破られていませんからね」

「ああ、あの戦いはすごかったね! ついにナイトメアも初黒星かと思ったら、あそこから逆転しちゃうんだから!」

「……」

おかしいな、なんかその2位も俺の知ってるヤツな気がする。それ、クロじゃないの? ねぇ、クロじゃないの?

「私、ベビーカステラ仮面すごく好き。仮面で顔は分からないけど、たぶんクロム様をリスペクトしてるんじゃないかな~って思う。だから応援してるんだけど、あんまり公式戦にも出ないよね」

「かなりの実力者でしょうし、忙しい立場なのかもしれませんね。それでもナイトメア以外には無敗で、世界ランクも2位ですからね」

「今年に入ってから、何故か『ナイトゲーム』には出なくなっちゃったね。私は診療所が終わってからだとナイトゲームしか見れないから、最近は全然見れてないよ」

「もしかしたら所帯を持ったとかで、夜は家族と過ごしているのかもしれませんよ」

「……」

……クロだろ? そいつ絶対クロだろ? 夜の部に参加して無いのは、毎日俺の部屋に遊びに来てるからじゃないの?

世界ランク1位がアリスで、2位がクロ? その世界ランク……他にも知り合いが居る気がする。

「……私は世界ランク5位の『王宮帰りのマーメイド』を応援しています。顔は隠してるみたいですが、マーメイド族には親友も居るので、贔屓しちゃいますね」

「あ~あのナゲリストも堅実ないい戦いをするよね。ただ、時々騎士っぽい人がやってきて、途中で棄権して帰ることがあるよね?」

「王宮勤めということですから、トラブルでもあったのでしょうね」

「……」

俺、その人も心当たりある……ラグナさんじゃない? 騎士が来て棄権してるのは、会議とかサボって抜け出してるからじゃないの?

というか人界最強と呼ばれているラグナさんが5位ってことは、その上に居るのは高確率で知り合いだと思う。メギドさんとかいそう、バトル大好きのメギドさんがこんな競技を見逃すわけ無いし……頭が痛い。

「あっ、ごめんね、ミヤマくん。ミヤマくんには分かりにくい話題で盛り上がっちゃって」

「あ、いえ……」

「申し訳ありません。私もついつい熱くなってしまいました。WANAGEの話はここまでにして、次の場所を見に行きましょう」

「……はい」

微妙な表情になっていた俺を見て、フィーア先生とノインさんは俺がWANAGEの話についていけないと思ったみたいで、気遣うように次の場所に行こうと提案してくれた。

まぁ、確かにいろいろな意味でついていけていなかったので、ありがたく頷いていまだ熱気に包まれる会場を後にする。

「けど、やっぱり魔物を連れている人が多く居るね。これだけいっぱいなのは圧巻だね」

「そういえば、魔物って高いんでしたっけ?」

立ち並ぶ出店を眺めながらふたりと歩いていると、様々な魔物を連れた人達を見かける。もちろん普通の動物もいるので、完全に魔物ばかりというわけではないが……。

「うん。だからそれなりに裕福じゃないと飼えないね。まぁ、六王祭に招待されてる人にお金持ちが多いってことだね」

「……なるほど、しかし、あまり魔物を見たことが無い俺にとっては結構新鮮ですよ。見てるだけで結構楽しいです」

「だね~おっ、ワイルドキャットだ。可愛いねぇ~」

雑談を交わしながら歩いていると、前から2メートルぐらいの大きさの猫を連れた人が歩いてきた。ワイルドキャットという魔物らしい……確かに毛もモフモフしてて可愛い。まぁ、ベルの方が数百倍は可愛いけどね!

そして、フィーア先生が軽く手を伸ばすと……ワイルドキャットは恐ろしく俊敏な動きで主人の後ろに隠れて震え出した。

「……そんなに怖がらなくてもいいじゃんか……」

「フィーアの魔力は大きいですからね。弱い魔物は特に魔力に敏感ですからね」

「……別にとって食うわけじゃないのに……はぁ」

ワイルドキャットに怖がられたフィーア先生は、ガックリと肩を落として足を進める。可愛らしいその反応に苦笑しつつ後を追う。

そして、ワイルドキャットを連れた人とすれ違ったタイミングで、ワイルドキャットは俺の方をチラリと見て……。

「にゃん」

……鼻で笑うような仕草をした。

フィーア先生とは別の意味でショックである。たぶん俺の魔力が少なかったからだろう。

「グルルルルル」

その反応に俺も肩を落としかけると、後方から怒りの籠った唸り声が聞こえてきた。恐る恐る振り返ると、漆黒の角にバチバチと電気を発生させながら、ベルがワイルドキャットを威嚇していた。

片やフィーア先生を見ただけで怯えるワイルドキャット、片や伝説の魔獣と呼ばれる種族であるベル。睨みつけられたワイルドキャットはガタガタと傍目に見ても分かるほど震え始める。

「……べ、ベル、落ち着いて、威嚇しない」

「……ガゥ」

「よしよし、俺のために怒ってくれたんだよね。ありがとう」

「クゥン」

蛇に睨まれたカエル状態だったワイルドキャットを見て、俺がベルに落ち着くように話す。そして、ワイルドキャットの飼い主に一言謝罪してから、フィーア先生とノインさんの後を追った。

拝啓、母さん、父さん――俺の魔力は魔物から見てもしょぼいらしい。まぁ、それは置いておいて……ベルってまだ赤ん坊だよね? それなのにアレだけ怯えるってことは、やっぱりベヒモスは――相当強い魔物なんだろう。