軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

確かに家族なんだろう

馬鹿の乱入により中断した話、それを再開してもらうためにリリウッドさんに向き直る。

「……あの~カイトさん、なんで私は『正座』させられてるんでしょうか?」

「お前が口挟むと全然話が進まないから、そこで大人しくしてろ」

「最近アリスちゃんの扱いが雑じゃないっすか!? 可愛い可愛い恋人ですよ? もっと甘やかしてくれてもいいと思うんですよ! というか、甘やかしてください! 抱っこしてください!」

「……すみません、リリウッドさん。続きをお願いします」

「無視!?」

本当に全然話が進まないので、もうこの際放っておくことにして、リリウッドさんに続きをお願いする。

リリウッドさんは、律儀に正座したまま騒いでいるアリスに呆れたような視線を向けた後、一度頷いて話を再開する。

『では、話を戻しましょうか……ですがその前に、一応シャルティアの名誉のために言っておきますが……彼女が始末した7割の高位魔族は、どれも力を楯に傍若無人な振る舞いをしていた者。善良で力ない魔族を虐げたり、殺したりしていた魔界の膿のような存在だったので、それなりに考えての行動だと思いますよ』

「……なるほど」

まぁ、正直そこに関しては最初から疑ってない。アリスは確かにドライな面もあるが、罪の無い相手を無差別に殺すようなやつじゃない。その点に関しては、なんだかんだで信じている。

「はい! はい! 異議あり!」

『……なんですか? シャルティア』

「リリウッドさん……律儀に拾わなくていいですよ」

『申し訳ありません、つい』

優しいリリウッドさんは手を上げて自己主張する馬鹿を無視できなかったらしく、反射的に返事をしてしまっていた。

また話が中断するのかと思いつつも、一応は当事者であるアリスにも話を聞いてみようと視線を向ける。

「コレとても重要なことなので、言っときますけど……私が始末したのは『6割』ですからね! 残りの1割は『パンドラ』が犯人です」

「え? パンドラさんが?」

「ええ、まぁ、パンドラは……目を付けた相手を攫ってきて変態な実験を繰り返すド屑を始末した時に、たまたま拾いましてね~私が育てました! しか~し、どこで育て方間違ったのか、そのド屑と同じような魔族を 捜索(サーチ) して、『お願いだから殺して下さい』って懇願するまで 拷問(アンド) して、その後に 抹殺(デストロイ) するような、『特殊な性癖』に育っちゃいましたけど……」

アンドの部分が物騒すぎるんだけど!? パンドラさんって辛い過去があったんだなぁ~って考えてたのが、後半で消し飛んだんだけど!?

「しかも忠誠心バグってる上に、あの子って『ドSであると同時に、特定の相手にはドM』なので……私がカイトさんに叱られてるのを、時々『指を咥えてよだれ垂らしながら』見てますよ」

「知りたくなかったそんな情報!? え? というか、俺はその特定の相手に入ってるの!?」

「ちなみに、昨日の祭りの後……『馬鹿な獣を躾けているはしたない私を、ミヤマ様が視姦してくださる至高のひと時でした』とか、完全に発情したメスの顔で言ってました」

「あの人の頭の中どうなってんの!?」

やべぇよ、パンドラさん。とんでもなく濃い方だ。もしかして、もしかしてだけど『私の絶対的な上司であるシャルティア様を叱れるなんて……私も叱って欲しい』とか思ってるの? だとしたら、あの方、俺の中でエデンさんと双璧を成す恐ろしい方に認定する!!

『ま、まぁ、その話は置いておいて……』

「いやいや……」

『……頑張ってください』

「嫌な応援止めてください!?」

戦慄しながらうなだれる俺に、リリウッドさんが嫌なフォローを入れつつ、話を再開する。

『……まぁ、私も魔界に秩序をもたらしたシャルティアの手腕と功績は認めています。勝手に六王という称号を付けられたのは少々不満でしたが、弱者が虐げられることの無い状況はむしろ好ましくもありました』

「……」

あれ? 意外と高評価? じゃあ、なんでリリウッドさんはアリスを警戒してたんだろう?

『……ただ、シャルティアにとっては望んだ通りではなかったみたいで、内に秘めた焦りの感情が大きくなっていました。その様子が気にかかり、私は一度シャルティアに尋ねました『なにをそんなに焦っているのか』と……』

「……アリスはなんと?」

『……『私は、早く目的を果たして死ななきゃならないんです!』と、そんな答えが返ってきました。あの時のシャルティア目には、暗く冷たいナニカがあって……私にはそれが理解できなかった。死ぬために目的を果たすという動機も……だから、不気味に思っていたと……そういうわけです』

「あ~まぁ、あの頃は私も結構荒れてましたしね。リリウッドさんには、申し訳ないことをしましたね」

俺はアリスが求めていたものを知っている。恋をしてくれと願ったイリスさんの遺言を叶え、その後で自殺するために狂気を身に宿していた。それがリリウッドさんには、得体のしれないものに映ったんだろう。

そして、先程リリウッドさんはたった千年でアリスは魔界に秩序を作ったと、そういったが……アリスにとっては、その千年というのはとても長かったんだと思う。

親友の遺言を叶えて死ぬために異世界にまで来たのに、事態は一向に進展しない。恋心を抱くような相手を見つける以前に、争いの多かった昔の魔界では次々命が消えていたのだろう。そしてそれは、アリスにとっての焦りに繋がったと……。

『そういえば『邪魔をするなら、リリウッドさんも殺す』なんて言われましたね』

「おおっと! 急用を思いつきました! 私はこれで――ぐえっ!?」

まぁ、アリスにも色々事情があったと思うから、過去のことに対してなにかを言うつもりはない。ただ、逃げようとしたアリスに関しては、首根っこを掴んで捕まえておく。

すると、俺達のやり取りを見て、リリウッドさんがどこか楽しげに微笑んだ。

『まぁ、いまでは貴女がなにを焦っていたのか、大体は分かりますよ。貴女は……カイトさんを探していたんですね』

「……むぅ」

『いまの貴女からは、昔のような暗く冷たいものは感じませんしね』

「……一応、弁明しておきますけど、あの時はちょっと荒れてただけで……私だって、ちゃんとリリウッドさん達のことは、家族だと思ってますからね」

いまはもう不気味だとは思っていないと、そう穏やかに告げるリリウッドさんを見て、アリスは少々バツの悪そうな表情で頬をかく。

『知っていますよ。貴女がなんだかんだで、私達に義理立てをしていたのは……私がエルフ族の森……リグフォレシアを復興した際にも、やたら物資の入りが良かったのは、貴女が手を回したのでしょう?』

「……まぁ、その……あの時は、八つ当たりみたいなこと言って、すみませんでした」

『……気にしていませんよ。貴女が私にとって大切な家族であることは、間違いないのですからね』

「……あ、ありがとうございます」

恥ずかしげにそう告げるアリスは、確かに昔と比べればいい意味で変わったのかもしれない。

少なくとも今の会話で、リリウッドさんとアリスの間に合ったわだかまりは完全に消え去ったと、そう感じることが出来た。

拝啓、母さん、父さん――リリウッドさんの言う通り、それぞれ心を持つ存在なんだから、意見が合わない時もあるだろう。喧嘩をしてしまうこともあるだろう。それでも、なんだかんだ言いながらも、互いに相手のことを想っている。この二人は――確かに家族なんだろう。