軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

俺の黒歴史だからね!?

クロの元からメギドさんの待つゴールへ辿り着くと、大歓声が俺を迎えてくれた。

空気を震わせる声の嵐、その多くが俺を称賛するもので、なんというかむず痒く、それでいて心が熱くなるような不思議な感覚だった。

「……負けたぜ、カイト。いい戦いだった。礼を言うぜ」

「いえ、俺の方こそ、ありがとうございました」

人化した姿のメギドさんと、互いの健闘を称えて握手を交わす。なんか、いいな、こういうの……全力を出した後、戦った相手と握手を交わす。

俺は中学高校と運動部には所属していなかったから想像でしかないが、こういうのを青春って言うのかもしれない……もう21だけど……。

「そういえば、メギドさん。バッカスさんから聞いたんですけど『俺に教えたいこと』って、なんですか?」

「あ~そうだな。それに関しちゃ、もう少しあと……宴会で教えてやるよ。宴会は夜8時から……それまでは、改めて祭りを楽しんでこい」

「は、はぁ……分かりました」

結局メギドさんの意図が分かるのは、夜の宴会になるらしい……ていうか、その宴会、俺の参加は決定? 決定なんですよね。はい、分かってます。

まぁ、俺はブラックランクの特典のお陰で一番乗りだったけど、他にもメギドさんへの挑戦者が現れるかもしれないし、後でというのはある意味妥当かな?

そんなことを考えていると、闘技場に用意されていたコースが消えて元に戻っていく。

『白熱した三本勝負。見事勝利したのは挑戦者のカイトさんでした! いや~素晴らしい戦いでしたね? フェイトさん』

『最後のカイちゃんは熱くてカッコ良かったね~カイちゃ~ん! 私だ! 養って!!』

『あ、あはは……え~と、それではいま一度挑戦者ミヤマカイトさんへ、盛大な拍手を!』

……フェイトさん、相変わらず過ぎる。でもその台詞を拡声魔法で言うのは止めて、超恥ずかしいから!?

『さて、コレで一つの戦いが終わったわけですが……まだ大きな戦いが控えています』

『……始まるんだね』

……うん? あれ? なにこのピリピリとした空気?

『さて、ここからの戦いは……心の弱い方は避難してください。マジで死にますよ』

『……ヤバいねこれ、殺気とか言うレベルじゃないよ』

地鳴りのような音と共に、あちこちから爆発的な魔力が吹き荒れ、闘技場を大きく揺らす。それはさながら地震みたいで、闘技場のあちこちに亀裂が入っていく。

え? ちょっと待って? なにこれ……いったいなにが始まるの!?

『……それでは……『カイトさんの制作した粘土細工を賞品としたじゃんけん大会』を開催します!!』

瞬間、闘技場にいくつもの影が飛び出してきた。

黒い煙のような魔力を纏ったクロ、青白い死の魔力をこれでもかというほどまき散らすアイシスさんと、疲れた表情のリリウッドさん。

静かながら煌くような魔力を纏ったシロさんと、リリウッドさんと同じ表情のクロノアさん、真面目な顔のライフさん。

そんな猛獣の檻のような闘技場に、恐れず立ち向かうクリスさんとラグナさん。どこからともなく降臨してきたエデンさん。

……いや、ちょっと待って!? なんか皆マジ過ぎない!? あかん、コレ本当に世界が滅ぶぞ……。

『皆さん、やる気です。一般の参加者も受け付けていますが……マジで危険なので、心して参加してください』

『ねぇ? ノーちゃん。私も参加したいんだけど……』

『フェイトさんは、ここで参加してください。私もこの実況席から参加します』

『なるほど、了解!』

いやいや、本当に待って!? 皆、もの凄いやる気だけど……賞品は、あの『悲しいクリーチャー』だよ!?

というか勘弁してください……なんで皆して俺の黒歴史を争奪してるの? 誰が獲得しても地獄じゃないか……。

『あ、そうそう。カイトさんはどうします? 参加しますか?』

「……する」

こうなったら、なんとしても俺が勝利して、黒歴史を回収しなければ……。

『……大丈夫っすか? 最低限『一秒間に千回以上手を変えれないと勝負にならない』ですけど……』

「……なにそれ、怖い」

じゃんけんって、そんな化け物御用達の競技だったっけ? 参加者が異常なだけ?

アリスの言葉に唖然としていると、視線の端で練習なのか、クロとアイシスさんがじゃんけんをしていた。

……おかしいよね? なんで振り下ろす時に『肘から先が消える』の? なんでじゃんけんするだけで『地面にクレーターができる』の?

「おぉ……すげぇ勝負だ! よし、俺も参加を……」

「メギド?」

「……あっ、いや、やっぱり止める」

その凄まじい空気に、戦闘狂であるメギドさんも参戦しようとしたが……クロに一睨みされると、即座に正座した。

メギドさんって、クロにだけはすごく従順な気がする。

いや、いまはそれよりも……。

『それでは、開催ですが……この『闘技場を消し飛ばした方』は失格なので、注意してくださいね』

いまだかつてじゃんけんでそんな注意聞いたことねぇよ!? いや、それを可能な人たちが結構いること自体異常だけど!?

こうして、メギドさんとの戦いが終わり……化け物たちのじゃんけん大会が幕を上げた。

拝啓、母さん、父さん――一難去ってまた一難……とはちょっと違うかもしれないが、まさかこんなとんでもない事態になるとは思っていなかった。しかもこれ、取り合ってるのは――俺の黒歴史だからね!?