軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ごめんなさい

クロたちが開催式の準備に向かうのを見送り、多少時間を潰してから俺も外へ向かうことにする。

開催式自体はこの中央塔がある広場で行われるので、一階から外に出るだけでいいのは非常に楽だ。

本当は先にリリアさん達と合流するつもりだったのだが、招待制とは言え相当の数が集まっているらしい。なので、リリアさんから開催式前の合流は難しそうなので、終わった後で場所を決めて合流しようとハミングバードが贈られてきたので、開催式は一人で見ることにする。

転送用の魔法陣で移動した後、中央塔の外に出ると……そこには凄まじい光景が広がっていた。

もの凄い数の参加者……数メートルはあろうかという巨体の者も居れば、妖精族みたいに小さな種族も居て、以前祝福で訪れた神殿以上の賑わいだ。

しかし、考えてみれば、この滅茶苦茶広い都市全部を使って行う祭りなんだし、その参加者が一か所に集まるとこういう光景になるのも納得が出来る。

ただ、よく見ると中央塔の近くにはあまり人がいない。というか、これ、ひょっとして俺がいまいる位置は立ち入り禁止なんじゃないか?

……早く移動しよう。

明らかに人が避けている場所に立っていることを自覚した俺は、少し離れた場所にある人ゴミに向かおうとしたが、そのタイミングで聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「カイトさん!」

「え? リリアさん?」

振り返るとリリアさんが小さく手を振りながらこちらに近付いてきていた。

「あれ? 合流は難しいんじゃ……」

「いえ、それがですね。どうやら招待状のランクによって、開催式の位置が決まっているみたいなんですよ」

「そうなんですか?」

「はい。この中央塔付近はゴールドランク以上の招待状を持つ者のみで、同行者やそれ以下の招待状の者は、あの旗の位置より前には入れないらしいです」

合流したリリアさんから詳しく話を聞いてみると、この巨大な広場はそれ自体が一種の結界になっているらしく、招待状によって立ち入ることの出来る位置が制限されているらしい。

なるほど、だから中央塔の付近には人が少ないのか……。

「それで、あちらはルナとジークに任せて、私はカイトさんと合流しにきました」

「ありがたいです。正直知り合いが見当たらないのは不安で……」

リリアさんが合流してくれたのは本当にありがたく、少し気が楽になった。その思いを伝えようと口を開いたタイミングで、なにやら別の声が聞こえてきた。

「……む? そこに居る若者は……」

「へ?」

声のした方に視線を向けると、そこにはマリンブルーの髪のマーメイド族……少し前にフィーア先生の件で助けてくれたラグナ陛下の姿があった。

「おぉ! やはり、リリア嬢にカイトか!」

「これは、ラグナ陛下」

「おお、リリア嬢。あの一件以来じゃな、いや~その時も思うたが、随分腕を上げたのぅ? こりゃ、人界最強の名も、油断しておったらリリア嬢に持っていかれるのぅ」

「いえいえ、私などまだ若輩者です。ラグナ陛下には、いまはまだ及びませんよ」

ラグナ陛下は俺達の姿を見ると、嬉しそうな笑みを浮かべて近付いてきて、リリアさんと軽く言葉を交わす。

……ていうか、あれ? 俺、この方に名前教えたっけ? いや、まぁ、不本意ながらいろいろ有名になったし、知っていてもおかしくはないのかな?

ま、まぁ、それより、せっかく会えたんだし……あの時に助けてもらった件に関して、お礼を言っておこう。

「えと、ラグナ陛下。初めまして、宮間快人と申します。先日はお力添えいただいて、ありがとうございました」

「うん? なに、気にするな! 『ワシとお主の仲』じゃ、あのぐらいいつでも力になるぞ……それよりも、その他人行儀な話し方は止めてくれ、ラグナっと呼び捨てでよい」

「……へ?」

あれ? なんか、ラグナ陛下……いや、ラグナさんの反応がおかしくないか? ほぼ初対面のはずなのに、えらく気安いと言うか……まるで以前にも会ったことがあるみたいな話し方だ。

ラグナさんの言葉に反応し、リリアさんの目がスッと細められたが、俺は慌てて首を横に振る。いや、本当にリリアさんに隠してたわけじゃなくて、俺も心当たりがないんです!!

身ぶり手ぶりでそれをリリアさんに伝えると、どうやら理解してくれたようで、リリアさんは首を傾げる。

「……えっと、ラグナ陛下? 陛下は、カイトさんとお知り合いなのでしょうか?」

「おぉ、そうじゃ、共に強敵と戦った……いわば戦友じゃな! いや~あの時からよい男じゃと思っておったが、先の一件でますます気に入った! のう、カイト。やはり『前に言った通り』婿にこんか?」

「……は? え? い、いや、ちょっと待ってください!? ラグナへ……さんと、俺は……フィーア先生の件で、初めてお会いしましたよね?」

「……なぬ? お、おぉ、そうじゃった!」

本当にラグナさんの言葉が理解できず、慌てて聞き返すと、ラグナさんは怪訝そうな表情を浮かべ……少しして、なにかに気付いたように手を叩いた。

「そうじゃった、すまんすまん。この姿ではそうじゃな……ワシじゃ、ハイドラ王国で一緒に釣りをしたジジイじゃよ!」

「……え?」

「いや~姿を変えておったのを忘れておった!」

「えぇぇぇぇ!? あ、あの時のお爺さん!?」

「うむ!」

ハイドラ王国に滞在している間、ほぼ毎朝釣りをしながら世間話をしたお爺さん。なんか偉い感じだったから、てっきり議員だと思ってたけど……ラグナさんが姿を変えていたのか……。

ああ、なるほど……共に強敵と戦ったって、魚のことね。

「……カイトさん。私はいま、この感情をどこへ向ければいいのでしょうか? カイトさんが嘘を言っていたわけじゃないですが……結局会ってた……もう三世界の頂点コンプリートしてた……カイトさん……怖ぃ」

「い、いや、なんていうか……本当にすみません」

拝啓、母さん、父さん――うん。結果としてリリアさんが危惧していたことは、完全に当っていたわけだ。いや、今回に関しては俺が怒られる事態ではないけど、いや、でも、なんか――ごめんなさい。