軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

君と見る星空

――いまから、この瞬間から始めよう! いままでと違うことを!

思い返してみれば、それが一番大きな始まりだったのかもしれない。

――君が――主人公の物語を!!

そう、確かにあの瞬間始まったんだ……。

カイトくんに宿泊施設を案内し終えると、いつの間にか夜と言っていい時間になっていた。広いからね、ここ。

うん、正直ボクもちょ~っと気合入れ過ぎたかな~とか思わないわけじゃないけど、カイトくんのためにって思うとついつい張り切り過ぎちゃった。

本来ならそのまま晩ご飯だけど、その前にボクはカイトくんと一緒に行きたい場所があった。事前に言っておいたかいもあって、カイトくんはご飯の前にボクの行きたい場所へ行こうと言ってくれて、ボクとカイトくんは二人である場所へ移動した。

すっかり日が落ち星の光が満ちる空。ここは、中央塔の屋上……ここら一帯で一番高い場所。

「……いや、だから、なんで畳?」

「あはは、やっぱり『オツキミ』はタタミだね!」

「……でも茶請けはベビーカステラなんだろ?」

「もちろん!」

なんだか懐かしい言葉に、思わず笑顔になる。

そのままボクはタタミの上に移動して座り、カイトくんの方を見ながら膝を軽く叩く。

「でも、お菓子食べる前に……カイトくん、ここ」

「……はぁ、どうしたんだ急に……」

どこか呆れたように苦笑しながら、それでもカイトくんはボクの望み通り、ボクの膝に頭を乗せて寝転がる。

膝枕……ボクはそれをカイトくんにするのが、すごく好きだ。膝に感じる温もりと肌の感触は、カイトくんと一緒に居るんだって強く実感させてくれる。

寝転がったカイトくんの頭を優しく撫でながら、ボクはそっと視線を空に移す。

「……ねぇ、カイトくん?」

「うん?」

「覚えてる? カイトくんが初めてこの世界に来た夜……こうして一緒に月と星を眺めたよね」

「……ああ、ちゃんと覚えてるよ」

心地良い夜風が優しく頬を撫で、穏やかな雰囲気に包まれる。

それ以上特に言葉を交わすこともなく、ボクは頭を撫でて、カイトくんは気持ち良さそうに目を閉じる。

「……カイトくん、そのまま少し寝ていいよ?」

「……うん。ここが、クロの行きたかった場所なのか?」

「うん。ボクさ、こうしてカイトくんと星を見るの……すっかり好きになっちゃったんだ」

「……そっか」

今日は……まぁ、ボクにも少し原因はあると思うけど、色々あったから疲れてるのかもしれない。

ボクの言葉を聞いたカイトくんは、少し眠そうな声で優しく話しかけてきた。

本当に他愛の無い雑談。それを、どうしようもなく幸せに感じる。それはもちろん、カイトくんと一緒だからだね。

初めて君と星を見た夜は、こんな風になるなんて夢にも思ってなかった。

カイトくんはまだなにも知らない雛鳥で、手を伸ばせば届くものを怖がっているみたいに見えた。

だから、ボクは……君を育てようと思った。いままで数え切れないほどそうしてきたように……。

君がいつか翼を得て飛び立つとき、その翼はどんなに綺麗なんだろうって……それを近くで見るのが、すごく楽しみだったよ。

でも、君はボクの想像なんて簡単に超えちゃった。君が広げた翼は、ボクが思っていたよりずっとずっと大きくて、眩しいぐらいに綺麗だった。

雛鳥を育てるばかりで『自分が飛ぶことを諦めていたボク』を『一緒に連れて行ってくれる』ぐらい……。

ねぇ、カイトくん? 覚えてるかな?

ボクはあの時君に言ったよね。ここから『君の物語』を始めようって……。

でも、いまはさ、こう思うんだ。あの時始まったのは『君とボクの物語』だったんじゃないかってね。あはは、少し自惚れが過ぎるかな? でも、そう思っちゃうぐらい君はボクに沢山のものをくれたんだよ。

君と二度目に星を見た夜……あのバーべ―キューの日から、君は変わったね。今までよりずっとカッコ良くなって、すごく強くなった。

ううん、たぶんカイトくんは初めから誰よりも強かったんだよね。だけど、その強さを忘れてしまってた。ボクがそれを思い出す手伝いをしてあげられたのかな? してあげられてたら……嬉しいな。

三度目に君と一緒に星を見たのは……宝樹祭の時だったかな?

思い返してみれば、そのころから、ボクにとって君という存在がどんどん大きくなり始めてたのかもしれない。

そんな君を大好きになるまで、時間はあんまりかからなかったね。

そして……君はボクに挑んできた。

ボクという化け物を、それでも好きだと……必死に手を伸ばしてくれた。どんなに嬉しかったか、ボクはいまだにあの時の感動を表現する言葉を見つけられてないよ。

君との関係が友達から恋人に変わって……世界が、いままで以上に綺麗に見えるようになった。

それこそ、数え切れないほど見たはずの星空も、カイトくんが傍に居るってだけで全然違う景色に感じられた。

その時になってさ、ボクはようやく気付いたんだ。成長してるのは君だけじゃないって、君のお陰でボクの心も、いままでよりずっと強くなれたって思う。

それこそ、いまのボクならシロにだって……ううん。ボクはカイトくんのためなら、誰にだって勝てる。誰よりも強く輝いていられる。そんな風に思うんだ。

カイトくん……君は、本当に凄いよ。

たった半年、君と出会ってからの時間は、ボクの今迄から考えると瞬きほどに短い。だけど、ボクはその短い時間がいままでで一番強く印象に残ってる。

目を閉じて君の顔を思い浮かべれば、どんな言葉を交わしたかまでハッキリと思い出せるほどに……。

そして君は、ボクだけじゃなくフィーアまで救ってくれた。ボクが出来なかったものを、ボクが落としちゃったものを……当り前のように拾い上げて、ボクの前に差し出してくれた。

君への想いを伝えきるのは本当に難しいね。好きだって気持ちが大きすぎて、どう言葉にしていいか分からない。

いっそボクの心がそのまま君に伝わればいいのに、なんて……そんな風に考えたりもするよ。

ボクはいま、毎日毎日が楽しくてしょうがないんだ。君の笑顔を見る度、君と言葉を交わすたび、どんどん君を好きになる。限界なんてないんじゃないかって思うほど、君が好きで好きでしょうがない。

こういう気持ちを、なんて言うんだろうね? ああ、きっと……こう言うんだよね。

「……カイトくん。愛してるよ」

穏やかな寝息をたてはじめたカイトくんに、そっと囁く。

大切な家族達に向けていたものとはまた違う。見守り、守ってあげるんじゃなくて……共に歩き、支え合いたいって気持ち。

大好きな人を愛するって、こんなにも幸せなものなんだね。ふふふ、長く生きてきたつもりだけど、ボクもまだまだ知らないことばっかりだなぁ~。

ねぇ、カイトくん? 覚えてるかな? ボクは鮮明に覚えてるよ。君と一緒に初めて見た夜空を……君と交わした言葉を……。

そして、君と見るこれからの未来は、いままで以上に幸せなものになる。

これは、予感じゃなくて確信……だってボクは、カイトくんが居てくれればいつまでも心からの笑顔を浮かべられるからね。

ほら、視線を上げてみる星空はどこまでも広がってる。世界は、こんなにも広い。

「……これからも、色々なものを見よう。いっぱい笑顔になろう。誰よりも、なによりも愛しい君と一緒に……」

「……んんっ……クロ……」

「うん。ボクはここに、カイトくんのそばに居るよ。これまでも、そして……これからも」

眠るカイトくんの頬に軽く口付けをして、ボクはまた星空へと視線を向ける。

うん、今日の星空は……いままでで一番綺麗だね。