軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ちょっとはやまったかもしれない

クロとフィーア先生を二人にしてあげようと、ノインさんとエデンさんと一緒に勇者の丘から離れて歩く。

天気もよく、時折吹く風が走ったりなんだりで火照っていた体には気持ちがいい。

「でも、本当に良かったですね」

「ええ、同感です。これでフィーアの肩の荷も少しは軽くなるでしょう。ところで……カイトさん」

「はい?」

「その、えっと……ですね……先程から『射殺すような眼光』でこちらを見ている、とんでもない魔力の方はどちらさまでしょうか? 体が震えてまともに歩けないのですが……」

俺には感応魔法があるので忘れがちだが、強大な魔力というのは、アイシスさんの死の魔力程ではないが圧迫感となって感じられる。

尤も体が纏う魔力だけでプレッシャーを与えられるのは、それこそ六王クラスでなければ無理だろうけど……エデンさんは、それを上回る力を持ってるわけだから、ノインさんの感じているプレッシャーは相当のはずだ。

クロみたいに威圧しないように魔力を抑えているのも居れば、シロさんみたいに抑える気がない方もいるわけだが、エデンさんは後者のタイプ……ノインさんの体はさっきから小刻みに震えている。

「えっと、こちらはエデンさんといって……えと、俺達の居た世界の神様らしいです」

「……そ、そうですか……そ、それで、なぜ、私は睨まれているのでしょうか? え、エデン様?」

恐る恐るといった感じでノインさんが尋ねると、エデンさんはジッと真顔でノインさんを見つめたまま……ポツリとこぼした。

「……微妙」

「へ? え、えと、カイトさん?」

「すみません。俺もこの方がなに考えているかは全然分からないんです」

そう一言呟くと、興味を無くしたようにノインさんから視線を外し、俺の方を見てから……口元を三日月のように深く歪め、凶悪な笑みを作る。マジで、この方の笑顔が怖すぎるんだけど……。

ま、まぁ、それは置いておいて……ちゃんと助けてもらったお礼は言っておかないと……。

「と、ともかく……エデンさん、今回は力を貸して下さってありがとうございました」

「礼、不要、協力、当然」

「……出来れば、普通に喋ってください」

「母が子を助けるのは当然のこと、礼など言う必要はありませんよ……『愛しい我が子』」

その言葉を聞いた瞬間、俺は即座に身を翻して走り出した。

明確な理由は無いが、エデンさんの瞳の中に見えたどす黒いハートに本能が反応したのだろう。

「まぁ、とても元気なのですね。でも、駄目ですよ。急に走って転んでしまっては大変です」

「……あ、はい」

走り出したと思ったら何故か抱きしめられてたんだけど!? 駄目だこれ、逃げれない!?

捕まってしまったことで、俺の頭の中でレッドアラートがけたたましく鳴り響いたが……意外なことにエデンさんはすぐに俺の体を離して、微笑みを浮かべた。

「……えっと……」

エデンさんはなにも言わず、俺を見つめながらひたすらニコニコ笑っている。おかしいな、大変美しい笑顔のはずなのに、寒気が止まらないんだけど……自分の四肢がいまだ自由であることが、不思議でしょうがないんだけど……。

と、ともかく、この沈黙は精神衛生上しんどいので……なにか言わないと……。

「……その、エデンさんは構わないといいましたが、折角助けていただいたわけですし、なにかお礼を……あっ、そ、そうだ! エデンさん、良かったら六王祭に参加しませんか? その、俺の招待状で招待できると思うので……」

言ってから後悔した。なんで俺は自分の首を絞めているんだろうと……しかし、時すでに遅く、エデンさんの笑みがより一層深くなる。

「まぁ、我が子よ。母を誘ってくれるのですね。ああ、とても嬉しいです。もちろん、喜んで受けさせていただきますよ……ああ、安心してください。我が子にも予定があるでしょうから、私は私で観光します。この世界が我が子にとって良い環境なのか確かめないといけませんからね。ええ、もちろん我が子の目を疑うわけではありません。しかし、母は心配症なのです。我が子に害を成すゴミが居ないか、心配で心配で仕方ないのです。ええ、そうです。我が子を傷つける存在などあってはいけない、そんな存在は私が許しません。我が子の身も心も神聖なものなのです。そう、汚されることなどあっていいはずがない、そう、そうです……そういえば、今回『我が子に手間をかけさせた愚か者共』が居ましたね。私としては消すべきだと思いますが……優しい我が子が悲しんでしまいますので、そのようなことはしません。ただ、『教育』はしておくべきですね。ええ、そうです。教育を……」

「エデンさん! ストップ! ストォォォプ!」

やっぱこの方超怖いんだけど!? ノインさんが生まれたての小鹿みたいになってるから、殺気の籠った魔力は止めてあげて!?

「え、エデンさん、お、お気持ちは凄く嬉しいですが……だ、大丈夫ですので! そんなことしないでください。お願いします!」

「……そうですか。我が子がそういうのであれば、止めにしておきましょう」

「あ、ありがとうございます」

「それでは愛しい我が子、私はこれで失礼します。また用があれば、いつでも呼んでくれていいですよ。母はいつでも貴方の味方です」

「……は、はい」

なんとか分かってくれたエデンさんを見て、俺はホッと胸を撫で下ろす。

しかし、やっぱりちょっと意外だ……こうもアッサリ帰ると口にするとは思わなかった。というかそこの説得が一番大変だと思ってたんだけど、自分から言い出すとは……って、ああ、そうか『クロが近くに居る』からか……。

エデンさんは俺にも一度微笑みかけてから、光に包まれて姿を消した。

うん、この切り札……『エデンさんをいつでも呼び出せる羽根』は大変強力ではあるが、俺の精神をガリガリと削る諸刃の剣でもあるな……使用は控えよう。

しかし、うん……流れでエデンさんも六王祭に誘うことになったけど……だ、大丈夫だろうか? 大丈夫だと……願いたい。

拝啓、母さん、父さん――エデンさんは、その、俺のことを良く思っているというのは痛いほどに伝わってくるんだけど……好感度の数値が振り切れてるみたいで、本当に恐ろしい。うん、なんていうか――ちょっとはやまったかもしれない。