軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リリアさんの本気を見てみたいと思った

リリウッドさんの居城から、リリアさんの屋敷へ戻ってきた。

使用人の人に聞くと、リリアさん達は訓練場の方に居るらしいのでそちらへと向かうことにした。

葵ちゃんや陽菜ちゃんはよく午前中から昼ぐらいにかけて訓練場を利用しているが、実はそれには理由がある。

午後からは、屋敷の警備を担当している人達が利用することが多く、邪魔になってしまう可能性があるからだ。

ちなみに見学は自由にしてくれて構わないということで、俺も何度か見学させてもらったことがある。

リリアさんやルナマリアさんはもちろん、アニマやイータ、シータも参加することがあるらしい。

少し歩いて屋敷の裏手にある広い訓練場に辿り着くと、剣と剣がぶつかるような音が響いて来ていた。

見てみると警備の人達が離れて見守る中、訓練と呼ぶにはあまりに凄まじい戦いが繰り広げられていた。

短めの槍を片手に持ち、もう片方に細身の剣を持つルナマリアさんの攻撃を、ジークさんが二本の剣で華麗に捌く姿も凄いが、それよりもう一方の戦いに目が奪われた。

爪を伸ばし、圧倒的な膂力で振るわれたアニマの腕を、その細い体には不釣り合いな大剣で受け止めるリリアさん……パワーバトルとでも言うのだろうか、一撃ぶつかる毎に凄い音が響いている。

いままで俺が見た訓練では、アニマはイータとシータの訓練を行っており、リリアさんと戦っている所は初めて見た。

アニマはかつてシータと戦って勝利したが、実はアレは、まったくアニマの強さの参考とはならない。

なにせあの時のアニマは、リグフォレシアでの警備隊の仕事を終えたその足で、不眠不休で山をいくつも越えて走ってきた状態で、顔には出さなかったが凄まじく疲労していた。

実際、ジータが俺に仕えるようになった後の模擬戦では、アニマがワンパンで勝利していた。

アニマの戦闘力は子爵級高位魔族に匹敵するぐらいだというので……リリアさんの屋敷に居る者の中で、アニマが一番強いんじゃないかと思う。

しかしこうして本気では無いにせよ、アニマと正面から打ち合っているリリアさんも流石というべきだろう。

そんなことを考えながら二人の戦いを見学していると、ジークさんとルナマリアさんが一段落したみたいで、俺を見つけて近付いてきた。

「……リリアさんとアニマの戦い、凄いですね」

「ええ、アニマ様は流石ですね。あのお穣様と正面から戦えるとは……」

俺の発した言葉にルナマリアさんが反応し、アニマを称賛する言葉を返してくれる。

アニマが褒められるのは、俺も自分のことのように嬉しく、思わず口元に笑みが浮かぶ。

「そういえば、前から聞いてみたかったんですけど……ルナマリアさんはともかくとして、ジークさんもリリアさんには敵わないんですか?」

「ミヤマ様、ミヤマ様? 発言に悪意を感じますが……」

「ルナの強みはオールラウンダーなところですからね。直接戦闘で一歩劣るのは仕方ないですよ……それで、質問の答えですが、私がリリと戦って勝負になっていたのなんて、リリが『16歳』ぐらいまでですよ」

「え? そうなんですか!?」

俺はてっきり、リリアさんとルナマリアさんとジークさんは、三人共同じぐらいの力量をもっていて、リリアさんが少し総合力で上回っているんだと思っていた。

実際リリアさんは宝樹祭の時にそんな風なことを言っていたが……いまのジークさんの口振りだと、リリアさんだけ突出して強いように聞こえる。

驚く俺を見て、ルナマリアさんはフッと微笑みを浮かべながら説明してくれた。

「……以前、ミヤマ様が知り合った魔族が冥王様だと分かっていなかった時……爵位級の高位魔族だと考えていた際に、お嬢様はこう言いましたよ。『出来ればそのクラスの魔族と戦いたくはない』と……」

「え、ええ、俺も戦うことにならなくてホッとしたというのは聞きました」

「……お嬢様は、『戦って勝てない』とは一言も言っていませんよ?」

「……あっ」

確かに言われてみれば、リリアさんはクロの正体を知る前に、高位魔族と敵対するようなことにならなくて良かったとは言っていたが、自分が勝てないとは言っていなかった。

「……リリは、なんというか……変なところで見栄っ張りですから、あまり野蛮なところは見せたくないのでしょうね。本気で戦うことなんて、そうありません」

ジークさんの言葉になるほどと頷く。確かにリリアさんは淑女らしさとかを気にしている。というか、相手に怖がられたりするのが嫌みたいで、そういう強い部分は隠そうとしている……まぁ、隠せてないのが大半だけど。

「お嬢様は、こと戦いにおいてはまさに天才……『人間族最強』と呼ばれるほどですからね」

「……人族でリリとまともに戦えるのは『人界最強』のラグナ陛下ぐらいでしょうね」

確かハイドラ王国の国王陛下で、かつて初代勇者のパーティメンバーだった方だったか?

そんな凄い人と比較対象に……いや、1000年以上生きる人界最強の人に、20代で並ぶほどと考えると、その才覚は異常なレベルだろう。

「……ちなみに、アニマとリリアさんではどっちの方が強いんですか?」

「本気を出せば、間違いなくリリでしょうね」

「そんなに……」

どうも俺が思っていた以上にリリアさんは強いみたいだ。

ジークさんとルナマリアさんも、国内では最強クラスのはずだが、それでもリリアさんには全く敵わない……う~ん。凄い。

いつか、そんなリリアさんの本気の戦いを目にする機会があるんだろうか? と、そんなことを考えながら、いまだ続くリリアさんとアニマの戦いに視線を戻した。

拝啓、母さん、父さん――リリアさんが強いというのは知っていたけど、まさかアニマより強いとは思わなかった。しかし、聞いてみると……怖いもの見たさというのか、一度――リリアさんの本気を見てみたいと思った。