軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

また苦行を味わう事になったよ

さて、フェイトさんをなんとか仕事に送り出し、シアさんとハートさんの勧誘から逃れた俺は、即座にダッシュして街に出た。

目的は単純、先程フェイトさんをやる気にさせる為に告げた、プレゼントを用意しているという言葉……それを現実にする為に早急にプレゼントを用意しなければならない。

しかし、街に出てすぐに気が付いた……な、なにを買えば良いか分からない。

フェイトさんが喜んでくれるもの、フェイトさんが好きな物……なんだろう、全然これといったものが思い浮かばない。

「……アリス」

「はいはい。なんすか?」

ここで手段を選んではいられないので、アリスを呼び出して聞いてみる事にする。

フェイトさんとの会話の中で、フェイトさんが多く口にするのは間違いなくアリスだし、たぶん二人は仲が良いんだと思う。

「アリスって、フェイトさんと仲が良い……よな?」

「ええ、そりゃ勿論。私とフェイトさんはソウルフレンドですからね!」

確認するように尋ねてみるとアリスは小さな胸を張りながら頷く。

やはりアリスとフェイトさんは仲が良いみたいだ。助かった……これならきっとフェイトさんの好きな物も知っているだろう。

いや、それを抜きにしてもアリスは世界一の情報通だし、心強い味方だ。

「そ、そうか……じゃあ、アリス。教えてほしいんだけど、フェイトさんの好きな物ってなにかな?」

「さあ?」

「さあっ!?」

しかし返ってきたのは、アリスにしては珍しく真面目な表情で首を傾げての返答だった。

「……え? あ、アリス。フェイトさんの好きな物、知らないの?」

「はい。申し訳ないっすけど……フェイトさんってだらけてるだけで、何か欲しがったりしませんし……」

「す、好きな食べ物とかは?」

「フェイトさんは基本的に食事しませんし……私がなにか持っていけば食べますけど、特に好き嫌いはないみたいです」

「……しゅ、趣味とかは?」

「あると思います?」

「……思わない」

やばい、思った以上にフェイトさんが強敵だ。

神族で食事の必要が無いので基本的に食事はせず、なにかを買いに出かける事もなくダラダラしている……隙が無さ過ぎる。

というか本当に駄目人間……うん? 駄目人間……人を駄目にする……

「……アリス。ものは相談なんだけど……」

「はい?」

そうだ思いだした。以前フェイトさんの神殿に行った時にチラリと見えた部屋の中……クッションだらけの部屋。そこにこそプレゼントのヒントがあった。

「少し変わったクッションを作って欲しいんだけど……」

「クッションですか? ええ、それぐらいならすぐに作れますが……どんなものですか?」

「ええっと、簡単に説明すると……」

そして俺はアリスに、小さなビーズを大量に使った人を駄目にするクッションの概要を伝えていく。

アリスはしばらく説明を聞いた後、納得したように頷き、材料さえあればすぐに作れると言ってくれた。

という訳で、店を回って材料を集め、アリスにプレゼント制作を任せる事にした。

プレゼントの用意も出来て安心した俺は、光永君の演説を軽く見学してから宿に戻る事にした。

流石にもう数ヶ月間やってるだけあって、光永君は堂々としていて詰まることなく立派に演説をしていた。

その後で少し話す機会があったが、どうやら次の街に向けて明日の朝一番で旅立つらしく、見送りをする約束をしてから宿に戻ってきた。

するとタイミングが良いのやら悪いのやら、少し休憩していると扉がノックされた。

もう誰が訪ねてきたのかは分かっている。一昨日の事を思い出しながら、そっと射線上から退避しつつ、ゆっくりと扉を開けると……

「カイちゃあぁぁぁぁぁん!」

「なっ!? げぶぁっ!?」

ば、馬鹿な……た、確かに射線上から退避していた筈なのに……直角にカーブして、正確に俺の鳩尾を捕らえてきた……だと……一体俺の鳩尾になんの恨みがあるんだ!?

「カイちゃん! 疲れたよぉぉぉ! 私、頑張ったよ~褒めてぇぇぇぇ!」

「お、お疲れ様です。が、頑張りましたね」

再び鳩尾にダメージを追いながら、なんとかフェイトさんに労いの言葉をかける。

「さっ! カイちゃん、約束だよ。ねっとりたっぷりマッサージ!」

「……ねっとりはないですが、分かりました」

抱きしめてくれと言わんばかりに両手を広げているフェイトさん、しかし俺はそれを軽やかにスルーして椅子を用意して、どうぞ座って下さいと促す。

しかし、フェイトさんも即座にこれをスルー! ベットに移動してうつ伏せの体勢で寝転がる。

それを見た俺は大きく溜息を吐きつつ、頷いてフェイトさんに近付いた。

言葉は無かったが、実は今、俺とフェイトさんの間には声のない駆け引きが行われていた。

――カイちゃん、頑張ったご褒美に抱っこして!

――それは約束してません。あくまでマッサージです。さっ、こちらの椅子へどうぞ……

――むぅ、肩揉みで済ませる気? 却下! 断固として却下!!

――ぐっ、ベットにうつ伏せに……

――マッサージは約束のうちだからね!

――わ、分かりました……

とまぁ、視線と行動での応酬があり、結果としてうつ伏せになったフェイトさんへマッサージを施す事になった。

正直肩揉みぐらいならともかく、こうした全身マッサージはやった事が無いが……まぁ、イメージは分かるのでやるだけやってみよう。フェイトさんだって素人の俺に、そこまで上手なのは求めてないだろうし……

「じゃ、行きますよ」

「ど~んとこい!」

「その返事はおかしくないですか?」

「あはは」

どことなくご機嫌なフェイトさんに苦笑しつつ、まずは肩からとフェイトさんの肩に手を当てる……うわっ、柔らかい。

その女性らしい柔らかさにドキッとしながらも、出来るだけ平静を装いながら肩を揉み始める。

「……んっ……ふぅ……」

「痛くないですか?」

「あはは、カイちゃん。私最高神だよ? カイちゃんが本気で握ったって痛くないよ。だからもう少し強くても良いよ~」

「了解です」

ゆっくりと肩を揉みつつ、親指で肩に近い背中を指圧していく。

そこでふと、ある違和感に気が付いた……なんか、この部分を押した方が良い気がする。

「ふぁっ……カイちゃん……そこ、気持ちいい」

あれ? なんだこれ? この感覚は……どこをマッサージすれば良いかが分かる? って言うか、フェイトさんが何処をマッサージして欲しいか分かるような気がする。

これは、もしかして、アレか……感応魔法か!? フェイトさんの微弱な魔力の変化とかを感応魔法が読みとって、どこをマッサージすればフェイトさんが気持ちよくなるか分かるって事かもしれない。

「あっ、んっふぁ……カイちゃん、上手……気持ちいぃ~」

「……」

これは本当に意外な使い方というか、もしかしたら俺はマッサージ師になれるのかもしれない。相変わらず力が発揮されるのが目立たない部分というのは俺らしいが、この状況ではありがたい。

この調子でマッサージを……

「あんっ……くぅぅん、ふぅ……あぅ、うっ……はぁ……あぁぁ……」

「……あの、フェイトさん? 色っぽい声出さないで貰えます? 集中できないんで」

「えぇ~だって、気持ちいいんだもん~あぁん」

「……」

いや、違う。確かに気持ちいいのは事実かもしれないが……声は絶対わざと出してる! 明らかに大袈裟すぎるし、わざと色っぽくしてる気がする。

これはアレか? 誘惑されてるのか? ……直接攻撃だけじゃなく、こんな搦め手まで使い始めてきたか、フェイトさん……恐ろしい方だ。

ともかく今はひたすら心を空にするんだ! 俺は今、マッサージをするだけの機械、感情なんてない。無心だ。無心で手だけを動かせ……

「ふぁうっ……あぁっ……んっ……カイちゃんっ……カイちゃぁぁん」

「……」

こら、名前を呼ぶな……しかも妙に色っぽい声で……精神がガリガリと削られていくから本当に勘弁してほしい。

肩周りをマッサージしつつ、ゆっくりと背中を滑らせていき、背中のマッサージに移行していく。

しかし、この体勢は……色々不味かった。フェイトさんの服装はシロさんやクロノアさんと同じ法衣であり、薄い素材のせいかこうして寝転がっていると、やけに体のラインがハッキリ分かる。

しかもうつ伏せの体勢だからか、フェイトさんの大きな膨らみがベットに押しつけられれ形が代わり、気持ち良さそうに声をあげて体を動かすたびに、形の良いお尻が扇情的に揺れる。

「あぁぁ……ああっ! ふゅっ、ぁぁぁぁあ!」

「……」

今、チラリとこっちを見た……絶対楽しんでやがる。なんか顔がやたら熱い気がするし、どんなに無心になろうとしても、フェイトさんの声がやたら大きく聞こえてくる。

フェイトさんもそれが分かっているのか、俺を動揺させようと妙に艶かしく体を動かしてるし……ぐぐっ、これは辛い。頑張れ、俺……

拝啓、母さん、父さん――約束通りフェイトさんのマッサージをしているんだけど、どうやらフェイトさんは強引に迫る以外の手段を覚えたらしく、やけに色っぽい声をあげてきた。まさかの場面で――また苦行を味わう事になったよ。