軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

オルゴールを渡し終えた

リリウッドさんの所で昼食を頂いた後、折角なので少しユグフレシスの街並みを見学してから人界に戻ってきた。

のんびり帰ってきた事もあり、時刻は夕方に差し掛かっており、丁度いい感じではあった。

「はぐっ、あむっ、むしゃっ……すみませ~ん。次、メニューのここからここまで!」

「……」

そして現在俺の前で一心不乱に焼肉を貪っている馬鹿……もといアリスに視線を動かす。

本当にこの小さな身体のどこにあの大量の肉が入っているのかと思う程、アリスは物凄いスピードで肉を食べている。

その様子をお茶を飲みながら見つめた後、次の肉が来るまで箸休めをしているアリスにオルゴールを渡す。

アリスに贈るオルゴールに関しては、勿論アリスは詳細を知っている。紫色のアメジストを中心とした宝石。曲は楽しげで、どこか謎めいた感じがある物を作ってもらった。

「アリス、はい。色々助かったよ」

「ありがとうございます……って、軽ッ!? なんすかその、軽さ!? 私だけおかしくないっすか! もっとこう、ドキドキ甘酸っぱい感じはないんですか!?」

「……だってアリスだし」

「なんて冷たい言葉!? カイトさんは、ちょっと私の扱いが雑すぎなんじゃないっすか!?」

う~ん。そうは言われても、やっぱりアリス相手に畏まるってなんか違う気がするというか……なんだろう? 俺にとってアリスは、親友とか悪友とかそんな感じの存在なのかもしれない。

凄く気楽に話せるし、いちいち言葉を選んだりしなくて良い……信頼とでも言うのだろうか? なんだか不思議な安心感がある。

ただ、まぁ、感謝している気持に嘘偽りはない。

今回のオルゴール作成、アリスの力が無ければ成し遂げられなかった……曲の作成、デザインの相談、下書き……正直一番世話になったと思う。

「悪い、悪い、なんか少し照れくさくて……でも、本当に感謝してるよ。ありがとう、アリス……お前が居てくれてよかった」

「……な、なんすか、急に……」

「……うん?」

軽く頭をかきながらお礼の言葉を告げると、予想外にぶっきらぼうな声が返ってきた。

その様子に首を傾げながらアリスの方を見ると……何故かアリスは、斜め下に視線を逸らしている。

「……アリス? どうかしたのか?」

「い、いえ、別になんでも……」

「いや、でも、なんで顔逸らして……」

「あ~! 次のお肉はまだっすかねぇ!!」

……なんか、アリスの様子がおかしい。どうしたんだろう?

明らかに話題を逸らそうとしているアリスを不思議に思っていると、そのタイミングで新しい肉の乗った皿が運ばれてきて、それを受け取ろうとして……偶然同じタイミングで手を伸ばしていたアリスの手に、俺の手が触れた。

「わひゃぁ!?」

「……え?」

すると何故かアリスは叫び声をあげて飛びのき、仮面の下から見える目を激しく動揺した様子で動かす。

あれ? これ、もしかして……

「……アリス、お前、もしかして……照れてる?」

「ッ!? なな、なにをいってすんすかねぇ……わわ、私が、ちょっと、ストレートに褒められたぐらいで、て、てて、照れてるとか……カイトさん、お疲れなんじゃないっすか!?」

「……じゃあ、ちょっとこっち向いてみ」

「……いや、それはちょっと……」

どうやらアリスの様子がおかしかったのは、俺が素直に褒めた事で照れていたらしい。

顔を逸らしたまま動揺した様子で話すアリスの耳は、微かに桜色になっていて、なんだか慌てふためくその様子が面白くて笑みがこぼれた。

「はは、なんか……結構可愛い所あるよな、アリスって」

「にゃっ!? な、なに言ってるんすか、アリスちゃんはいつでも清く可愛いですよ。か、カイトさんも、ようやく私の魅力に気付いたんですかねぇ」

「うん、そうかもしれない」

「それはいつもみたいにツッコミ入れてくださいよ!! まともに顔見れなくなるじゃないですか!!」

そういえば、よくよく思い返してみると、アリスって素顔を見られるのを恥ずかしがっている一面もある訳だし、実は結構照れ屋なのかもしれない。

普段のふざけた言動に隠れていたが……もしかしてアレって、変に褒められたりしないように、わざと自分の事を美少女だとかなんとか持ち上げてたんじゃ……

これは、うん、少し面白い弱点を握った気がした。

「……うわぁ、カイトさん。悪い顔してますよ」

「……失敬な」

「……はぁ、言っときますけど……こんな風になるの、カイトさんが相手の時だけっすからね。もう本当に、自分でも困ったもんすよ」

そう言って溜息を吐いた後、アリスは肉を焼いて食べ始める。

なんだか意外な所で、アリスが隠していた本心を聞けた気がして、不思議と少し……嬉しく感じた。

すっかり日も沈んだ夜に、俺はベッド……ではなくソファーで横になっていた。

「むぅ……なんかコレが定位置になってる気が……」

「うん? ボクは嬉しいよ」

俺を膝枕した体勢のまま、クロは優しく俺の頭を撫でつつ微笑む。

くすぐったさと幸せが一体になったような感覚と共に、俺の耳には優しげなオルゴールの音が聞こえてくる。

クロに贈ったオルゴールは、クロの美しい瞳をイメージしたイエローダイヤモンドで装飾を施したもの。

そして曲に関しては、俺が唯一アリスに一度作り直してもらったものだ。

というのも最初アリスは、太陽をイメージして明るく楽しげな曲を作ってくれた。確かにそれもクロのイメージにピッタリで、素晴らしい曲だったんだけど……俺が、綺麗な月明かりと優しげな光をイメージして作り直してくれないかと頼み込んだ。

その甲斐あって、俺の思い描くクロのイメージ通りの、優しく暗闇を照らしてくれるような曲になった。

「……ありがとう。カイトくん、ボク、凄く幸せだよ」

「……クロが喜んでくれたなら、嬉しいな」

クロにはオルゴールを作っていた事はバレていたが、クロは俺が渡したオルゴールを本当に幸せそうな笑顔で受け取ってくれ、今も机の上で音を鳴らすソレを、愛おしげに見つめていた。

「そう言えば、カイトくん。ゆっくり休めた?」

「あぁ、まぁ、色々あったけど、かなりのんびりできたよ」

「そっか、それなら良かった……あんまり無理しちゃ駄目だよ?」

「うん」

本当にクロが相手だと、なんて言うか凄く素直になれるとでも言うのか……う~ん。気恥しくはあるけど、なんだかんだで甘えちゃってるんだろうなぁ。

俺が思い描くクロのイメージは、暗い闇を照らしてくれる月明かりや星明かり……暗い気持ちを柔らかく癒してくれ、また頑張ろうと前を向かせてくれるような……そんな存在だ。

「……でも、そういう話を聞いてたら、ボクもカイトくんと旅行に行きたくなっちゃうね」

「俺としても、クロと旅行に行けたら楽しいだろうとは思うけど……クロ、忙しいんじゃない?」

「う~ん」

クロは俺の前でそんな様子は見せないが、六王として非常に忙しくしているんだと思う。

それは、クロが基本的に夜にしか来ない事からも伝わってくるし、特に最近は忙しそうにしている。

「まぁ、今年は勇者祭があるからね。無い年はもっと余裕あるんだけど……勇者祭の年だけは、色々調整とか面倒だね」

「そっか……リリウッドさんも忙しそうにしてたしな」

「あ~えっと、まぁ、最近忙しいのは他の事もやってるからなんだけど……」

「他の事?」

「今はまだ、な~いしょっ」

そう言って悪戯を企む子供みたいな笑顔を浮かべるクロを見て、思わず苦笑してしまう。

「まぁ、光の月が過ぎたら、ちょっと余裕もできるし……カイトくんさえ良ければ、一緒にどこかに行こうよ」

「ああ、それは楽しそうだ……うん、是非お願いするよ」

「うん!」

窓から差し込む柔らかな月明かり、見上げると目に映る優しい笑顔、頭を撫でてくれる暖かな感触……そんな幸せに包まれながら、俺はゆっくりと瞼を閉じた。

拝啓、母さん、父さん――今日は本当に色々あった。リリウッドさんやアリスの新しい一面を見たり、アイシスさんの可愛らしさや、クロの優しさを再確認したり……ともあれこれで――オルゴールを渡し終えた。