軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

確かな第一歩だと思う

土の月27日目。眼前に広がるのは、真っ白な氷に包まれた大地。シロさんの祝福のお陰で大丈夫とは分かっていても、なんだか寒そうだと感じてしまうのは屋外だからだろうか?

「……すみません。アイシスさん、急に押しかけてこんなお願い……」

「……ううん……カイトなら……いつでも……大歓迎」

「ありがとうございます」

「……うん……宝石が……必要……なんだよね?」

リリアさんへのプレゼントであるオルゴール作り、昨日アリスの所である程度デザインと細工も決まり、現在はその材料集めを行っている所。

まずはメインの細工を施す宝石を手に入れる為、アイシスさんを頼りにさせてもらった。

突然の訪問にも関わらず、快く迎えてくれたアイシスさんの優しさには本当に感謝の言葉もない。

「はい、どんな宝石が良いと思いますか? 俺、あまり宝石には詳しくなくて……」

「……細工……するんだよね? ……少し大変だけど……ミッドナイトクリスタルが……良いと思う」

「ミッドナイトクリスタル……ですか?」

「……うん……アイスクリスタルの中でも……特に深い青色で珍しい物を……そう呼ぶ……固いけど……崩れにくいし……魔力も……魔水晶程じゃないけど蓄えるから……細工しやすい」

成程、ミッドナイトクリスタルというのはアイスクリスタルの一種で、希少なアイスクリスタルよりさらに珍しいものらしい。

少なくとも以前アイシスさんの所に遊びに来た時、お遊び程度に採掘をさせてもらったが、それらしい物を見た覚えはない。

「……成程、中々見つからないって事ですね」

「……うん……でも……大丈夫……私なら……すぐ見つけられる」

「アイシスさん、お気持ちはありがたいんですが……出来るだけ、自分の力でやってみたいんです……あっ、勿論全部は無理ですが……」

「……分かった……カイトがそうしたいなら……応援する」

出来る限り自分の力で行いたいという俺の言葉を聞いて、アイシスさんは穏やかに微笑みながら頷いてくれた。

そしてその後で目の前にある氷の山に手をかざし、青白い魔力の閃光を纏う。

「……でも……少しだけ……手伝う」

「ッ!?」

次の瞬間アイシスさんの手から眩い閃光が、まるでレーザーのように放たれ、氷の山に複数の穴をあけていく。

さらにその後で内部に氷の柱が現れ、トンネルが崩れないように補強されていく。

ものの数秒で氷の山は、まるで鉱山のように変わり採掘が非常に行いやすくなった事が理解出来た。

「……今削った所には……無かった……でも……これで……掘りやすいと……思う……簡単な防御魔法も……かけておく」

「ありがとうございます! 助かります」

「……うん……頑張って……カイトが採掘してる間……ご飯用意しておく……あまり……無理しないでね」

「はい!」

坑道の整備に防御魔法と、本当になにからなにまでありがたい手助けをしてくれて、本当にありがたい限りだ。

優しく微笑みながら応援の言葉を告げてくれるアイシスさんに頷いた後、俺はツルハシなどの道具を持って坑道に入った。

まだまだ、材料集めは最初だし、出来るだけ早くミッドナイトクリスタルを入手しなければ……

そして、坑道に入って三時間が経過し、俺は肩で大きく息をしながら座りこんでいた。

「……み、見つからない……」

坑道に入ってから一心不乱に採掘を行い、それなりの数のアイスクリスタルを見つける事は出来た……が、それはどれも水色で、深い青色のミッドナイトクリスタルは見つかっていない。

単純に俺が採掘に慣れてなくてペースが遅いというのもあるだろうが、本当に何というか、深い青色どころか、青色っぽい物さえ見つかっていないとは……

寒さを防いでくれるシロさんの祝福も、流石に疲労まではどうにもならないので、ツルハシ等を振るい続けた俺はすっかり疲れ切ってしまっていた。

荒い息を整えながら、次はどこを掘ろうかと考えていると、フワフワと浮かびながらアイシスさんが近付いてくるのが見えた。

「……カイト……見つかった?」

「いえ、それが全然……なかなか難しいですね」

「……そう……少し……休憩しよ? ……お昼ご飯……もってきたから……」

「あ、ありがとうございます」

なんとアイシスさんは、すっかり時間を忘れていた俺の為に、食事を運んで来てくれたらしい。

そう言われてみると、疲れで隠れていたがお腹もかなり減っていたので、本当に素晴らしいタイミングだ。

アイシスさんは俺の傍まで来ると、魔法陣を浮かべ、机と椅子を用意してくれる。

そして机の上に大きめの皿を置き、状態保存の魔法を解除すると、暖かい湯気が立ち上る。

「……シチュー……作ってきた……食べて……結界張ってるから……冷めない」

「ありがとうございます。頂きます」

「……うん……はい……あ~ん」

「……え?」

アイシスさんが用意してくれたホワイトシチューは、美味しそうな香りを漂わせ、空腹の胃をガンガン刺激してくる。

そして改めてお礼を告げてから、頂こうとしたら……アイシスさんは、ごく当たり前のようにスプーンを手に持ち、シチューをすくって片手を添えながら差し出してきた。

え? コレはアレかな? また、自分の手では食べさせてもらえない感じなのかな?

「……あ~ん」

「あ、あ~ん」

「……どう?」

「暖かくて、凄く美味しいです」

決して熱すぎず舌触りの良い温度のシチューは、クリーミーで優しい口当たりと共に胃に吸い込まれ、じんわりと体の中から温めてくれた。

まるでアイシスさんの優しさそのものみたいに、どこかホッとするような美味しさ……

「……良かった……いっぱい……食べてね」

「……はい」

やはりまだ気恥ずかしくはあるが……心の奥底まで温めてくれるような、アイシスさんの優しい気遣いを堪能しながら、心から一時の休息を満喫した。

アイシスさんの美味しい手料理を堪能した後、いざ採掘の再開だと立ち上がったタイミングで、ふとアイシスさんが思い付いたように告げる。

「……そういえば……カイトには……感応魔法が……あるんだよね?」

「え? あ、はい」

「……ミッドナイトクリスタルは……魔力を蓄えるから……感応魔法を使うと……探しやすいかも?」

「……そ、そんな方法が!?」

「……う、うん……出来るかどうかは……分からないけど」

その発想は盲点だった。今まで俺は感応魔法を、相手の感情を読み取る用途でしか使用していなかった。

けどこの魔法は元々感知能力に特化した力であり、微弱な魔力を感じ取ることにも使える筈だ。

アイシスさんの話では、ミッドナイトクリスタルは魔水晶には及ばないものの、魔力を蓄える性質があるらしい……それはアイスクリスタルにも言える事だが、どうやら、ミッドナイトクリスタルの方が少し多く蓄えるみたいだ。

「やってみます!」

アイシスさんのアドバイスを聞いて、俺は感応魔法の力を使って周囲の魔力を探り始める。

あまり魔力が大きくない俺では、それほど広い範囲は捜索できないが……半径数メートル程なら十分に可能。

意識を集中してみると、確かに坑道のあちこちから微弱な魔力を感じる事が出来た……ただ、すぐにはその差異までは良く分からないので、しばらく神経を集中したまま歩きまわってみる事にした。

30分程坑道を進んでいると、少し、ほんの少しだが、それまでより強めの魔力を感じ、その場所に向かってツルハシを打ち付けてみる。

結構深い位置にあるみたいで、それなりに時間がかかったが……しばらく掘ると、岩の隙間から深い青……紺色の宝石が微かに覗いた。

「あっ!?」

「……うん……間違いない……それが……ミッドナイトクリスタル」

無事ミッドナイトクリスタルを発見した俺は、宝石を傷つけないように道具を変えながら慎重に採掘し、数センチ程の宝石を掘り出す。

ようやく見つかったミッドナイトクリスタルに思わず感動してしまうが……一個目で細工が成功するとも限らないので、予備も含めてまだいくつか手に入れておきたい。

「……って……あ、あれ? 力が……」

「ッ!? カイト!」

この調子でどんどん掘っていこうと考えた瞬間、フラッと足元から力が抜け倒れかける。

素早く反応したアイシスさんが俺の体を支えてくれるが、なにやらかなりの倦怠感が体を襲う。

「……広域の探知は……魔力を沢山使うから……1時間位は休憩」

「……な、成程……分かりました」

「……運ぶ」

「え!? ちょっ、アイシスさん!?」

「……カイト……疲れてる……私が……運ぶ」

「そ、それはありがたいんですが……」

「……うん?」

「な、なんでもないです」

いくらアイシスさんの方が強いからといえ、お姫様だっこで運ばれるのは男としてとんでもなく恥ずかしい。

しかし真剣に俺を心配してくれているアイシスさんに、恥ずかしいから降ろして下さいなんて言う事が出来ず、結局俺はそのまま羞恥に耐えながらアイシスさんに運ばれる事になった。

うん、次はちゃんと魔力の配分考えよう……絶対気をつけよう……

拝啓、母さん、父さん――オルゴールの素材集めの第一弾として、アイシスさんの所に宝石を探しにやってきたよ。目的とするミッドナイトクリスタルはやっとこさ一つ手に入れただけだけど、それでも――確かな第一歩だと思う。