軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

少しだけ仲良くなれたよ

時間も遅く、明日は神殿に祝福を受けに出かけると言う事もあって、リリアさん達との話は30分ほどで切り上げられ、各々入浴等就寝の用意をすませる。

丁度そのタイミングで、ノインさんから貰ったお土産の事を思い出しリリアさんに話をしてみると……折角の故郷の食べ物なのだから三人で分けて下さいと言ってくれ、その言葉に甘える事にして楠さんと柚木さんに声をかけて俺の部屋に集まってもらった。

部屋の作りは三人共一緒なので正直どの部屋に集まっても変わらないのだが、いくら仮屋とは言え女性の部屋にお邪魔するのは気が引けた。

「それで、宮間さん。お話とはなんですか?」

「ああ、実はさっき言い忘れてたんだけど……ノインさん。元日本人の方にお土産を貰ってね。その事を話しておこうかと」

微かに石鹸の香りが漂わせながら楠さんが聞いてきたので、簡潔に答えた後マジックボックスを取り出して簡単に機能を説明した後で、メインとなるおにぎりとたくあんを取り出す。

「「ッ!?」」

案の定というかなんというか、俺と同じで二人の視線はテーブルの上に置かれた白米に釘付け、流石に俺みたいに生唾を飲み込んだりはしてなかったが、今の二人にこのおにぎりはさぞ神々しく映っている事だろう。

「み、みみ、宮間先輩!? こ、これって、アレですよね……お米、ですよね!」

「あ、うん。ノインさんが個人的に栽培してるものらしくて、俺達の事を気遣って沢山分けてくれたんだよ。おにぎりだけじゃなくて普通に炊いた状態の白米もあるし、味噌や醤油なんかの調味料とかも分けてもらえた」

「わ、私達も頂いてよろしいんですか?」

食い気味に尋ねてくる柚木さんに説明をすると、楠さんもおにぎりを凝視しながら尋ねてくる。

「それは勿論。このマジックボックスに入れて保存しておく関係上、食べたい時は俺に一声かけてもらう事になると思うけど、本当に沢山いただいたし、リリアさんにも一通り話は通してあるから、なんだったら明日の朝食からでも食べられるよ」

「おぉぉ、凄い。感激です!」

「あはは、味噌汁は具材の好みもあるだろうからって材料で色々貰ってて、残念ながら豆腐はまだ無いんだけど、葱とかも貰ってあるし、結構いろいろ作れると思う」

話しているうちに柚木さんのテンションはどんどん上がっており、それに比例するかのようにぐいぐいこちらに近づいてくる。

うん。嬉しいのは分かるけど、風呂上がりの薄着でそう言う動きは止めよう。どこがとは言わないが、大変豊かに実ったものが揺れてるので、目のやり場に困る。

そこでふと今すぐにでも取り出せる物がある事を思い出し、柚木さんの動きに俺の目が泳いでいるのに気が付いたのか、先程から少しずつ冷たい物へ変わっている楠さんの視線を戻す為にそれを人数分取り出す。

「まぁ、ほらこれでも飲んで落ち着いて……」

「これって、もしかして」

「うん。緑茶……団子とか羊羹も貰ってるけど、寝る前だし今はこれだけで我慢してほしい」

緑茶を渡したおかげで興奮気味だった柚木さんの動きも止まり、それはもう小動物の様に可愛らしい笑顔を浮かべながらお茶を飲み始める。

楠さんも柚木さんの様子を見てお茶を飲み始めたみたいで、どうやら俺が軽蔑されるとかそういう展開にはならずに済んだ様だ。

ここは俺の名誉の為に言っておくが、別に俺は巨乳好きだとかそう言う訳ではない。寧ろどちらかというとスレンダーな体系の方が好みと言えば好みである。

しかし悲しい定めと言うか、男の性というか……柚木さんの平均的な女子高生より大きめの胸が目の前で動けば、ついつい目を向けてしまいそうになるのは抗えない本能なので、そこは容赦して頂きたいものである。

……一体誰に言い訳をしているんだ俺?

そんな自分でも良く分からない言い訳を頭の中で並べていると、お茶を飲み一息ついた柚木さんがこちらに何やらきらきらした目を向けてくる。

「……私は、宮間先輩は決める時は決めてくれる先輩だと思ってました!」

「……はい?」

「同感です。正直、少し評価が変わりました……さすが年長者だけあって頼りになります」

「……」

それはもうキラキラした尊敬の視線を向けてくる柚木さんに、楠さんもしみじみと頷きながら同意する。

ちょっと待って欲しい。なんか白米一つ――いや、白米だけじゃないけど、日本の食材を持ち帰ったと言うだけで、俺の株が物凄い勢いで上昇してる!?

というか、今まで君等の中で俺の評価がどんだけ低かったのか小一時間ほど問い詰めたいんだけど!!

「ま、まぁ……ともかくそう言う事で、食べたくなったらいつでも言ってくれればいいから。そう言えば、結局さっきは俺の話だけで終わっちゃったけど、そっちはどうだったの? 光永君は元気にしてた?」

「はい。流石王宮ってだけあって凄く豪華なパーティでしたが……私達は委縮してしまって、お恥ずかしながら会話とかはほぼリリアさん頼みでした」

「正義は……なんていうか、完璧調子に乗ってましたね」

一先ず白米等の話は説明し終えたし、別に俺の功績という訳ではなくノインさんの気遣いのお陰ではあるが、少し二人との関係が和らいだ事もあって、折角なので王宮での話を聞いてみた。

う~んやっぱりというか何というか、二人の表情を見る限りあまり楽しむ余裕は無かった感じかな? いや、まぁそれも当然か……周りは見知らぬ貴族ばかりだったんだろうし、委縮するなって方が無理がある。

「そっか、光永君は国賓扱いだったんだっけ?」

「ですね~たぶんよっぽど良い待遇なんでしょうね。何か物凄い上から話しかけてくる感じで、二三発殴ろうかと思いました」

「ま、まぁ、ほら、これからあちこちに出向いて忙しくなるみたいなんだし、元気が無いより良いんじゃないかな?」

「まぁ、それはそうですけど……」

う~ん、光永君の事はよく知らないけど……召喚時の様子を見る限り、何となくだけどその手のライトノベルとか読んでいそうな雰囲気だったし、この世界は平和な上色々ちやほやされれば舞い上がっちゃう気持ちは分からなくもない。

けど、柚木さんって意外と辛辣? 確か光永君とは幼馴染だって言ってたし、遠慮ない関係なのかもしれない。

ふむ、しかし光永君って、見た目はいかにも文系男子って感じだけど……柚木さんと幼馴染で楠さんの後輩だったよな?

改めて考えるまでも無く楠さんも柚木さんも美少女だ。そんな二人と登下校する程親しくて、柚木さんに至っては幼馴染という素敵属性――あれ? 結局、元の世界から普通に勝ち組なんじゃね?

「まぁ、私も後輩が元気そうで安心しました。近く王都を出てあちこちの国を回るみたいなので、タイミングが合わなければ次に会えるのは当分先ですしね」

「私は正直、あの馬鹿は多少痛い目にあった方が良いんじゃないかって思ってますけどね」

「ふむ……光永君って、楠さんか柚木さんの恋人だったりって訳ではないのかな?」

「え? ありえないです」

「ただの後輩ですよ?」

折角の機会なので気にはなっていた部分を聞いてみたが、返ってきたのは脈の欠片も感じない様な真顔でのNOだった――何かごめん、光永君。リア充爆発しろとか変なこと考えて……

そんな事を考えていると、柚木さんが俺に近付き小声で話しかけてくる。

「ここだけの話、正義がうちの部活に入ったのって葵先輩狙いでなんですよ。ほら葵先輩って美人で成績も良くて凄く人気ありますから……まぁ、葵先輩の方に脈はまったく無い感じですけどね」

「あ~成程」

「……?」

確かに楠さんはモテそうな感じがする。お手本みたいな高根の花ってイメージだしね。

でもモテそうって言うなら柚木さんもそうだろう。明るく元気で誰とでもすぐ仲良くなりそうな感じだし……あ、そう言えば一緒に下校してた男子がもう一人いたっけ? 何となく複雑な四角関係を想像してしまうのは、ゲームとかの影響を受けすぎかな?

「というか、私もてっきり光永君と陽菜ちゃんは恋人なのかと思ってた」

「やめて下さい葵先輩。本当に鳥肌が立つんで……」

「そ、そこまで?」

どうも照れ隠しとかではなく、本気で嫌らしい。やっぱりそうそうゲームみたいな話にはならないらしい。

あ、でも……ゲームと言えば、高校時代にハマってたネットゲームでもそんな感じのクエストがあったな~幼馴染同士で、男の方は恋愛感情を抱いてるけど、女性の方には完全に脈が無い。でもそれに気付かず男の方が色々アプローチするのを手伝うってストーリーだったっけ?

結局男の恋は実らず空回りばかりってオチだったけど、クエスト中に出てくる他のNPCとかの台詞が独特で面白かった覚えがある……たしか……

「「幼馴染ってだけで、一点先取してるようなものなのに――え?」」

「はい?」

あれ? 何か今、奇妙な事が起こった気がする。

そう俺は今かつてハマっていたネットゲームでの展開を思い出し、頭に残っていた台詞が思わず口を衝いて出た訳だが……なぜか、この場でいちばんそう言うのと縁がなさそうな子と完璧にハモった。

俺と同様というか全く同じ台詞を口にしようとしていた楠さんも、俺の方を見て信じられないと言った感じで目を大きく見開いている。

そして状況に付いていけず首を傾げている柚木さんの前で数秒沈黙した後、楠さんは躊躇いがちに口を開く。

「……宮間さん。一つ質問して良いですか?」

「う、うん。どうぞ」

「初心者が狩場を探してます。スライム、ゴブリン、オーク……どれを勧めますか?」

「……街で店売り装備買って、オーク」

「「……」」

楠さんが口にしたのは多くのゲームで登場するであろう、非常に有名なモンスター。名前を並べられただけならスライムが最も弱いと印象を受ける人が多いだろうが、俺が返答したのはオーク。

何故かと言うと、俺がプレイしていたネットゲームではスライムは海辺のフィールドかダンジョンに出現するモンスターで、それなりのプレイヤーでないと生息地にたどり着けないし、ステータスもかなり高めの中級モンスターと言って良い存在だった。

そしてゴブリンは単体でのステータスこそオークより低いが、ゴブリンの居るフィールドにはゴブリンキングというボスモンスターが出現する上、ゴブリン自体の数も多く囲まれやすいので初心者には勧められない場所だった。

それに比べてオークは街でNPCから購入できる装備で倒せ、なおかつ出現フィールドが街から近いので補充や回復が行いやすく初心者でも手軽に狩れるモンスター。

しかもそことは別にハイオークという上位種が出現するフィールドがあって、ボスモンスターであるオークキングはそちらに出現するので、通常オークのフィールドにボスは出てこない。

なので初心者は店売り装備買ってオークでレベル20ぐらいまで上げると言うのは、俺がプレイしていたネットゲームではテンプレと言って良い鉄板の育成コース。

「……俺の方からも聞いて良いかな?」

「どうぞ」

「パーティを組んでアースドラゴンを狩りに来ました。楽な編成は?」

「盗賊で壁、僧侶でバリア、魔導師で火属性魔法です」

「「……」」

ちなみにアースドラゴンは攻撃力がべらぼうに高い上級モンスターだが、近接物理攻撃しか行わず、なおかつ極端に魔法に弱いという弱点があった。

その為騎士等の高防御高HP職よりも、近接物理攻撃を一定確率で回避するスキルを持った盗賊と近接物理攻撃を一定回数までブロックする僧侶のバリアというスキルとの組み合わせが非常に効果的で、最小3人パーティで狩れて経験値も美味しい人気のモンスターだった。

うん、まぁ、つまりそう言う事で間違いないだろう。俺が高校時代にハマっていたネットゲームを楠さんもプレイしていた。しかも、たぶん結構な上級プレイヤーだ。

世界とは何とも奇妙な所に共通の話題が転がっている物で、俺と楠さんは顔を見合わせ――苦笑した。

拝啓、母さん、父さん――白米のお陰とではあるけど、同郷の子達と――少しだけ仲良くなれたよ。