軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話・六王~動き出す思惑~

広大な魔界の中央……そこは魔界に住む者達からは、禁忌の地と呼ばれていた。

そこにはなにもない……木々も花もなく半径数十キロに渡り荒野だけが広がり、生物は一匹も住んでないとされており、魔族ならこの地に近付いてはいけない事は子供でも知っている。

この地は、六王が集結し会議に使用される場所であり、同時に六王達が喧嘩の際に使用する事が多い場所でもあった。

絶大な力を持つ六王同士の戦いが行われる可能性のある地、そこに不用意に踏み込む事は自殺に等しい行為と言えた。

そして今その地に集結するのは、魔界の頂点である六体の魔族。

最古の魔族であり、実質的な魔界のトップでもある……冥王・クロムエイナ。

魔界のみならず人界、神界からも恐れられる……死王・アイシス・レムナント。

六王の良心と呼ばれ、世界の橋渡し役となっている……界王・リリウッド・ユグドラシル。

戦いを愛し強者を求め猛る、戦いの申し子……戦王・メギド・アルゲテス・ボルグネス。

世界最大の生物であり、天を突くほどの体躯の巨竜……竜王・マグナウェル・バスクス・ラルド・カーツバルド

世界中に根を張り、あらゆる情報を手中に収める……幻王・ノーフェイス。

勇者祭を除き、全員が集まる事は非常に稀な六体の王は、ゆっくりと慣れた様子で魔界の中央に陣取る。

マグナウェルの頭に他の五体が乗り、どこからともなくテーブルと椅子が現れ、それぞれ席に座る。

「……それじゃ、始めようか」

「……うん」

「クロさん、今回の召集はクロさんがかけたんすよね? それで、議題はなんなんすか?」

『……シャルティア、そう慌てても仕方なかろう』

クロムエイナが会議の開始を宣言すると、さっそくシャルティアが今日の議題について尋ねる。

やや急いでいる風にも見えるシャルティアの様子に、マグナウェルがのんびりとした口調で尋ねると、シャルティアはすぐに口を開く。

「私は、早く会議を終わらせてカイトさんの護衛に戻りたいんですよ。だっから、さっさとして下さい。ハリアップです!」

『シャルティア、貴女……このタイミングでの集合でしたら、勇者祭の件でしょう……世界にとっても重要な会議ですよ。一応聞きますが、世界とカイトさんどっちが……』

「そんなの、10対0でカイトさんに決まってますよ」

「……同感」

『……分かっていました……分かっていましたけどね……』

迷うことなく世界よりカイトが大事だと宣言したシャルティアと、それに便乗して手を挙げるアイシスを見て、リリウッドはガックリと肩を落とす。

そして唯一会話に加わっていないメギドは、一人持ってきた酒を飲んでいた。

『メギド、お主は参加せぬのか?』

「あ゛? 会議なんざ興味ねぇよ……テメェらで好きに決めろ。俺はクロムエイナの決定に従う」

「……ある意味、メギドさんが一番賢いっすね」

メギドは会議に参加する気はないらしく、クロムエイナの決定に従うと告げて再び酒を飲み始める。

そんなメギドを見て苦笑を浮かべた後、六王を集めた張本人であるクロムエイナはゆっくりと口を開く。

「……今回は、勇者祭についての話し合いじゃないんだ」

『え? そうなのですか? では、一体……』

「……重要な議題があってね。急いで集まってもらった」

「……なにか……あったの?」

どこか重々しさを感じる雰囲気で話しだすクロムエイナの言葉に、リリウッドとアイシスも表情を引き締め、クロムエイナの真意を探る。

「あったって言うか……あるべきなんだよ!」

『あるべき? なにがじゃ?』

「魔界に、もっと大きなお祭りがあって良いと思うんだ!」

「……お、お祭り……っすか?」

勢い良く宣言するクロムエイナを見ながら、マグナウェルとシャルティアはやや戸惑った様子で聞き返す。

するとクロムエイナは真剣な表情で頷いた後、その真意について話し始める。

「……魔界ってさ、あちこちで小さなお祭りはいっぱいあるけど、魔界をあげてのお祭りってないよね?」

「そうっすね……そもそも魔界には、人界でいうところの国みたいなものはありませんからね。街はあちこちにありますけど、国って単位で纏めて無いっすし、地域毎にバラけますね」

「うん。だからこそ、魔界で大きなお祭りを行う事は、魔界の活性化にもつながると思うんだ」

『……成程、つまりクロムエイナは魔界でも大規模な祭りを行うべきだと?』

「うん! 勿論初めは手探りになるから、いきなり魔界全体規模ってのは難しいから、まずはボク達で舵をとって……そうだね『六王祭』って名前で、お祭りをしようよ!」

クロムエイナの提案とは、三界において最大の住民が居る魔界で、大規模な祭りを開催しようという事らしい。

その提案を聞いて、他の六王達……メギドを除いて、考えるような表情を浮かべる。

「……具体的になにするとか、いつするかってのは、決まってるんすか?」

「う~ん。勇者祭が天の月だから……今から準備して、光の月中にやれたらなぁって思うんだ。それで、折角ボク達六人いる訳だから、六日間やってさ、それぞれがお祭りをしようよ」

『成程のぅ、面白そうではある……それに、確かに魔界の活性化にもつながるじゃろうな』

『……そうですね。最近は平和で、悪く言えば内輪で固まってしまっている種族も多いですからね』

クロムエイナの言葉を聞き、マグナウェルとリリウッドは悪くない案だと頷くが、シャルティアは何故か怪訝そうな表情でクロムエイナを見つめていた。

そしてクロムエイナがある程度話し終ったタイミングで、シャルティアは口を開く。

「……で、クロさん……『本音』は?」

「……『カイトくんとお祭りデート』したいっ!! でも、普通のお祭りじゃ人多すぎて、認識阻害魔法使っても騒ぎになるから出来ない!!」

「……そんな事だろうと、思いましたよ……」

そう、シャルティアの予想通り、魔界の活性化の為とかその辺は全部建前で……本音は、クロムエイナが快人と祭りでデートをしたいだけだった。

先程までは賛成ムードだったが、クロムエイナの言葉を聞いて、シャルティアだけでなくリリウッドとマグナウェルも呆れたような表情を浮かべる。

「で、でも、良い案なんだよ。普通ならボク達がお祭りに参加したら騒ぎになっちゃうけど、最初だからって事で、殆どボク達の身内で固めれば……それこそ、出店を全部爵位級高位魔族で固めたら……アイシスだって、カイトくんとお祭りデート出来るんだよ!!」

「ッ!?!? さ、賛成! 賛成!!」

『……アイシス……貴女は……』

ただし、アイシスは速攻で賛成した。確かにクロムエイナのいう通り、爵位級の高位魔族で固めれば、尚且つそれが六王の配下のみで構成されていたなら……アイシスを恐れたとしても、逃げない。

つまり、快人とデートが出来る。それだけで、アイシスにとって賛成の理由は十分だった。

アイシスは空気を切り裂くような勢いで手を伸ばし、賛成と何度も宣言する。

その言葉を聞きながら、シャルティアは顎に手を当て考えるような表情を浮かべた後、鋭い目をクロムエイナに向けた。

「……クロさん、一つ大事な事を確認しておきたいんすけど……」

「うん? なに?」

「私達の配下で出店を固めるって事は、必然的に配下が一番多い私が主導になる訳です……となると、売上の配分は!?」

「ボク、別にお金はいらないよ。というか、準備にお金が要るならボクが出すよ」

「ッ!?」

クロムエイナは世界最大の富豪でもあり、そもそも彼女の目的は快人とのデートなので、売上に関しては全く興味が無い。

その言葉を聞いたシャルティアは大きく目を見開き、他の六王達に視線を向ける。

「……私も……いらない」

「ッ!?」

『私も、必要以上の金銭を得る気はありません。必要なだけあれば良いです』

「ッ!?!?」

クロムエイナと同じく、世界でも屈指の大金持ちであるアイシスも売り上げの配分は必要ないと告げ、基本的に自然のままに過ごす事をよしとするリリウッドも同様の返答をする。

「あ゛? 金なんざ興味ねぇよ」

「ッ!?」

『そも、ワシの体で硬貨なんぞ使えると思うか? 便宜上人族とは金銭ありきで契約しておるが、そもそも使っておらんわ』

「……って、事は、つまり?」

「ボク達はいらないから、シャルティアが貰えば?」

「……仕方ないですね! 私も、魔界の為に一肌脱ごうではありませんか!!」

売り上げが全部自分のものになる。それを聞いた瞬間、シャルティアの中ではクロムエイナの提案に賛成の意思が固まった。

「ふふふ、これでまた山ほどギャンブルが……」

「カイトくんに、また怒られるよ?」

「うぐっ」

「……カイトに……ハミングバード……送っておく」

「あぁっ!? 待って、アイシスさん!? それだけはっ……」

ハミングバードで、快人にシャルティアの事を報告しようとするアイシスに、シャルティアが縋りつく光景を見ながら、リリウッドは軽く溜息を吐く。

『……賛成が3……メギドも入れて、4……決定ですかね?』

『そうじゃのぅ……』

「……別に、うだうだ悩む必要なんてねぇだろ?」

『『え?』』

半数以上が賛成の状況を見て、リリウッドとマグナウェルが会話していると、いつの間にか酒樽を何個も転がしているメギドが口を開いた。

「クロムエイナが、俺らのリーダーがそうしてぇって言ってんだ……なら、俺等がどうするかなんてのは、考えるまでもねぇだろ?」

『……そう、ですね』

『うむ、やはりなんだかんだで、貴様は賢いのやもしれんな』

メギドの言葉……クロムエイナが望んでいる。その一言で、リリウッドとマグナウェルの心も決まり、深く頷く。

そして、ここに前代未聞の六王全員による祭典……六王祭の開催が決定した。

「……あれ? なんだろう? 今、寒気が……」

そしてまだ、その前代未聞の祭りが開催される原因となった青年は、その事を知らなかった。