軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

同じ部屋に泊まる事になったみたいだ

アリスを叱り終え、レイさん達に気付かれる前に姿を消させると、丁度ジークさんの方も終わったみたいだ。

レイさんもフィアさんも、ボロボロの状態で正座してる。

「……まったく、帰ってくるなりコレとは……」

「「……面目ない」」

だけど絶対反省はしてないと思う。うん、それだけは確信できる……次もたぶん同じ事するんだろうなぁ。

そんな事を考えていると、レイさんとフィアさんは立ち上がり、先程とは違って穏やかな微笑みを浮かべる。

「……ともかく、お帰り、ジーク……元気そうで安心したよ」

「……父さん」

「ジークちゃんの声も聞けて、ついはしゃいじゃったわ……本当に、声が戻って良かったわね」

「……母さん」

やっぱり二人共ジークさんの事は、心から心配していたみたいで、ジークさんの声が戻った事が本当に嬉しいみたいだった。

家族の絆、みたいなものを感じて少し話しかけ辛くなっていると、レイさんとフィアさんは俺の方を向く。

「久しぶりだねミヤマくん。また会えて嬉しいよ」

「久しぶり、ジークちゃんの事……本当にありがとう」

「いえ、その、本当に良かったです」

レイさんとフィアさんは、少し……俺の両親に似ている。

普段は明るくてどこか抜けてるけど、我が子の事を心から大切にしてくれているというのが伝わってきて、どこか懐かしいような暖かさを感じつつ微笑む。

っと、そこで終われば良い話だったのだが……

「……ところで、ミヤマくん。ジークとはどこまで進んだのかな?」

「ッ!?」

「もぅ、駄目よレイ。若い二人にそんな事聞いちゃ」

「ははは、そうか! もう当然やる事はやって――ぶふっ!?」

レイさんの顔面に大変重そうな拳が叩き込まれた。

さっきまでの雰囲気が台無しである……重要な事なのでもう一度繰り返すが、台無しである。

「まったく! まだ懲りて無いようですね!」

「い、いや、待つんだジーク! ほ、ほら、私は父として娘の状況を確認して……」

「お、落ち着いてジークちゃん。レイも決して悪気があった訳では……」

そして再びジークさんによりレイさんが折檻される事になった。

しばらくそれを見ていると、ようやく終わったみたいで、レイさんが顔を押さえて立ち上がる。

エルフのイメージ通り本来かなりのイケメンの筈のレイさんの顔は、見るも無残な状況になっていたが、すぐに治癒魔法で元通りになる。

「……いや、娘の愛が重いよ。ところで、ミヤマくん」

「はい?」

「……君はもしかして、女性に興味が無かったりするのかい?」

「……は?」

おっと、舌の根も渇かない内にまたふざけた事を言い始めたぞ。

「いや、これは重要な事だよ。可愛いジークと一緒に居ながら欲情しないとは! もしかして男性としての機能に問題が……」

「……いや、と、というか、俺恋人いますよ」

「なにっ!? どういう事なんだそれは!!」

「ちょっ!? れ、レイさん!?」

大変不名誉な誤解を解く為に恋人が居る事を告げると、レイさんは険しい顔になって俺の両肩を掴み激しく揺らす。

い、意外と力も強い!? てか、俺が貧弱なだけか……

「こんなに可愛いジークを差し置いて、恋仲になるなんて……一体どこの馬の骨と……」

「……父さん。カイトさんの恋人って、冥王様と死王様ですよ」

「……」

流石の親馬鹿っぷりで、グイグイ来ていたレイさんは、ジークさんの言葉を聞いて停止する。

そしてあまりにも無駄の無い動きで、膝を、そして手を地面につく。

「……申し訳ありませんでした」

「……」

あまりにも洗練された淀みの無い土下座である。

どっちに対してなのかは分からないが……いや、予想は出来るけど、レイさんの肩は小刻みに震えている。

「……どど、どうか、死王様にこの事は……」

「……言いませんから」

やっぱり怖がってたのはアイシスさんの方みたいで、レイさんはそれはもう可哀想なほど顔を青くして震えていた。

レイさんがアイシスさんの恐怖から立ち直り、ようやく俺達はリグフォレシアの街を歩き始める。

「というか、レイさん、フィアさん、本当に泊めてもらっていいんですか?」

「勿論だよ。もう既に部屋は準備してあるからね」

「ええ、遠慮せず自分の家だと思ってくつろいでくれて良いわよ」

「ありがとうございます」

今回俺はレイさんとフィアさんの家に泊めていただく事になっている。

初めはジークさんはレイさん達の所で、俺は宿に泊まろうとしていたのだが……お二人からの勧めもあり、泊めて頂く事になった。

そんな話をしながらリグフォレシアの街を歩いていると……奇妙な事が起こり始めた。

「あっ、も、もしかしてミヤマ様!」

「え? あ、はい」

「戻ってこられたんですね! あっ、良かったらどうぞ、うちで採れた果物です」

「え? えと、あ、ありがとうございます」

果物を売っている店の店主に話しかけられ、何故か果物を頂いたり……

「きゃぁ! ミヤマ様よ!」

「え? 本当!? あっ、ミヤマ様!!」

「へ? あ、えと……」

「私達、ミヤマ様のファンなんです」

「あ、握手して下さい!」

「ファン!?」

若いエルフの女性達に、何故か握手を求められたり……

「これは、ミヤマ様。ようこそリグフォレシアに」

「えっと、お、お久しぶりです」

「お時間がありましたら、是非長老達の元へもお顔をお見せ下さい。皆喜びます」

「あ、は、はい」

以前収穫祭の打ち上げで会った高齢のエルフに、恭しく挨拶をされたりと、会う人皆が物凄く好意的な視線を向けてくる。

「……あの、これ、一体どういう……」

「ああ、ミヤマくんはリグフォレシアでは大人気だからね」

「……何故?」

「そりゃ、収穫祭でかつてないほどの大記録を打ち立て、界王様にリグフォレシアの復興を願ってくれた。そのおかげで街を囲う壁もより強固になったし、精霊族からの親交もいまだかつてないほど厚くなって、さらには界王様の覚えもめでたい……もう殆ど英雄みたいな扱いだよ」

「……」

レイさんが告げてくる言葉を聞いて、俺は茫然とする。

い、いやいや、だって、街を直したのはリリウッドさんだし、収穫祭で凄い記録だったのもリリウッドさんのお陰の筈なのに、まるで全部俺が凄いみたいな事になってるとは……

「あっ、ちなみに、多くの住民の中では、ブラックベアーを駆逐したのもミヤマくんって事になってるわよ」

「なんでっ!?」

「それに、ミヤマくんの活躍を題材にした本や劇もあるね」

「本っ!? 劇っ!?」

どうも、俺が思っている以上に凄い事になっているらしい。てか、俺ブラックベアーの時は気絶してただけなんだけど!?

でも確かにレイさん達の言う通り、会う人達皆、まるで憧れのアイドルにでも出会ったかのように好意的である。

己の知らぬ所で英雄に祀り上げられていたとは、なんとも落ち着かないというか……頭の痛くなる話ではあるが、これだけ広まってしまっていては俺にはもう、どうする事も出来ない。

アリスに頼んで誤解を解いて貰うか? いや、もし悪い方向に行けば、界王だけでなく幻王にも交流があるってばれてしまう。

「……そう言えば、ミヤマくんを題材にした本を、死王様が買いに来て、とても褒めていたらしくて……続刊の発行も決定したらしいよ」

「……」

アイシスさん! 何やってんの!?

もう、本当に……どうしてこうなった。

何とも落ち着かない英雄扱いをされながら、ようやくレイさんとフィアさんの家に辿り着く。

なんていうか、ノインさんの気持ちが少しわかった気がする……コレは恥ずかしい。

「思ったより時間がかかったね。そろそろ夕食の支度をした方がいいかもしれないな」

「そうね。私がしておくわ。レイはミヤマくんを部屋に案内してあげて」

「ああ、任せてくれ」

昼過ぎには到着した筈だが、なんだかんだで長くなってしまい、もう少しで夕方になる。

フィアさんはそのまま食堂に向かい、レイさんは俺とジークさんを連れて二階へと上がる。

「……あの、父さん?」

「うん? なんだい?」

「……うち、そんなに沢山部屋ありましたっけ? どこにカイトさんを泊めるんですか?」

ジークさんの言葉通り、レイさんとフィアさんの家はそれほど大きくはない。

三人で住むには十分な広さだが、部屋数は少なく、客室のようなものも無いらしい。

「……ああ、それなら大丈夫。ミヤマくんには、ここに泊まってもらうからね!」

「……あの、父さん?」

「なんだい?」

「……ここ、私が前に使ってた部屋なんじゃ……」

そしてレイさんに案内されて辿り着いた部屋は……なんと、ジークさんの部屋らしい。

ジークさんは現在はシンフォニア王国に住んでいるが、レイさんが宮廷魔導師になる前はリグフォレシアに住んでいたので、部屋がある事自体はおかしい事じゃない……が、え? ここに、俺が泊まる? それって、ジークさんは?

「あの、レイさん……俺がここに泊めていただいたら、ジークさんは?」

「え? 何言ってるんだい? ジークも勿論この部屋だよ」

「なっ!?」

恐る恐る尋ねた俺の言葉に、レイさんは当たり前のようにジークさんもこの部屋に泊まると返してきた。

「な、何言ってるんですか! 父さん!!」

「いや、ほらうちは部屋の数が少ないからね……ああ、安心してくれ、ベッドはちゃんとダブルサイズに変えてあるから!」

「なぁっ!? そ、そそ、そういう問題じゃなくて、わわ、私と、か、かか、カイトさんが同じ部屋に……」

「頑張るんだジーク。お父さんは応援しているぞ!」

「なんでそういう話になってるんですか!?」

俺とジークさんを同じ部屋に泊めるというレイさんに対し、ジークさんは顔を真っ赤にして慌てて詰め寄るが、残念ながら全く話は通じていない。

「あの、レイさん……やっぱり俺、宿に……」

「……折角フィアも私もミヤマくんが、泊まってくれるのを楽しみにしてたんだ……そんな悲しい事を言わないでくれ」

「え? あ、はい。すみません」

「カイトさん!? 流されないで下さい!!」

「え? ああ、えと……」

「ジークも、まさか、ミヤマくんを家から追い出そうなんて酷い事は言わないよね?」

「そそ、それは……い、いや、でも……」

流石レイさんというべきか、俺の弱い所をよく把握している……そんな悲しそうな顔されたら、断るのは無理だ。

そしてジークさんも、なんか、この調子だとレイさんに丸めこまれてしまいそうだ。

「そもそも、同じ部屋に泊まるだけだろう? 別に何をしろと言ってる訳じゃない……それとも、同じ部屋だと、何か間違いが起るのかな?」

「お、おお、起こりません!!」

「じゃあ、問題無しだね」

「へ? あ、いや、違っ……」

もう完全にレイさんのペースである。これは断るのは難しそうだ。

まぁ、俺が床で寝たりすればいい訳だし……断るのは諦めて、出来るだけジークさんに迷惑をかけない方法を考えていよう。

「ああ、そうそう、ミヤマくん」

「はい?」

「安心したまえ、部屋は完全防音だ……後は、分かるね? それと、ジークの下着は入って右のタンス、三段目だ……状態保存の魔法は引き出しを開けると解除される仕組みになっている。別に一枚ぐらい持って帰っても――がふっ!?」

「~~!?!?」

サムズアップしていたレイさんの顔に再び鉄拳が撃ち込まれる。

何故この父親は、自分の娘の下着が収納されている場所まで把握しているのだろうか……いや、ツッコミは止めておこう。

またもジークさんに殴られているレイさんを見ながら、ふと思った……あれ? なんか、泊まるかどうかの話題からジークさんの意識が遠ざかってるような……

拝啓、母さん、父さん――リグフォレシアで俺は英雄扱いらしく、なんとも落ち着かない歓迎を受けた訳なんだけど、その動揺も完全に吹っ飛んでしまった。なんて言えばいいのか、ジークさんと――同じ部屋に泊まる事になったみたいだ。