軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大切な存在になっていると思う

ある意味いつも通りと言えるゴタゴタが終わると、アリスはふと思い出したように口を開く。

「そう言えば、カイトさん。頼まれてたやつ、出来てますよ」

「え? もう?」

「ええ、バッチリです」

「ありがとう、助かるよ……いくら?」

以前アリスと焼肉に行った際、俺は帰り際にアリスへある品物の作成依頼をした。

正直時間がかかるだろうと思っていたが、流石というか何と言うかもう出来てるみたいだ。

「……私、カイトさんの部下になった訳ですし、別にタダでも……」

「いや、そこはちゃんと支払わせてくれ。親しき仲にも礼儀ありって……それに、アリスが部下で、俺が上司なら、俺はアリスに給料を支払わないといけないだろ?」

「……カイトさん……分かりました。じゃあ、白金貨2枚で、どうでしょう?」

「え? そんなもの? もっと高いと思ったけど……」

「今回は材料の追加はありませんでしたし、こんなもんですよ」

どことなく嬉しそうに感じる口調のアリスに、俺は白金貨を2枚渡して依頼していた品を受け取る……重っ!? 早くマジックボックスにしまわないと……

「それじゃ、また御用があればお呼びくださいな~」

「ああ……アリス、本当にありがとう。頼りにしてる」

「……そ、そういう、イケメン台詞は反則です。恥ずかしくなっちゃうじゃないっすか……」

そう言って仮面から覗く頬を微かに染め、アリスは姿を消した。

俺もこれ以上は特にする事もなかったので、ベッドに移動し眠る事にした。

王宮で一泊した後は、朝から胸焼けしそうな豪華な朝食をご馳走になり、昼前ぐらいまでリリアさんの家族と親睦を深めた。

そして昼前にリリアさんと共に、また来る事を約束して王宮を後にした。

「……リリアさんの家族は、本当に良い人ばかりでしたね」

「はい……カイトさんは、オーキッドと随分仲良くなっていましたね」

「ええ、楽しく会話が出来ました」

オーキッドは俺より一つ下の20歳であり、俺にとっては、この世界に来て初めて出来た同世代で同性の友人……話がとてもはずんだ。

オーキッドの性格も穏やかで話しやすい感じだったので、非常に気が合い、また必ず遊びに来ると約束した。

「オーキッドは、とても優秀ですし、愛妻家なので自慢の甥ですよ」

「……愛妻家? え? ちょっと待って、下さい。オーキッドって、結婚してるんですか?」

「ええ、妻が『三人』いますよ」

「……」

リリアさんがごくごく自然に告げた言葉を聞き、俺は茫然とする。

え? 俺より一つ下なのに、三人の奥さんが居る? なにそれ怖い……

というか、イケメンで性格も良くて、王族で妻も三人いるって、なにその勝ち組っぷり……物凄く自分が惨めに思えてくるんだけど!?

「えっと、カイトさん? 大丈夫ですか?」

「……リリアさん、俺ってやっぱり、オーキッドとかと比べると、男の魅力みたいなのは無い方なんですかね?」

「へ? あ、いえ、えっと……わ、私は、カイトさんの方が、素敵だと……」

「え? なんですか?」

「な、なんでもないです!?」

軽く落ち込みながら尋ねた言葉に、リリアさんは非常に小さな声で答えてきて、上手く聞き取れなかったので聞き返したんだけど……なにやら顔を真っ赤にして首をブンブンと横に振っていた。

その様子はとても可愛らしかったが、何だろう? なんか聞き逃すともったいない言葉だったような気がする。

屋敷に戻って来て、玄関でリリアさんと別れた後、俺は部屋には戻らずにある人物達を探す。

この時間だと、屋敷の清掃をしている筈だけど……どこに居るのかな?

5分程屋敷の中を歩いていると、進行方向に目的の二人を発見する事ができた。

「イータ、シータ」

「これは、ご主人様。おかえりなさいませ」

「おかえりなさいませ……です」

両者とも赤い髪で、長い髪をポニーテールにしているイータと、短い髪をヘアピンで可愛らしく止めているシータは、どちらもメイド服姿がよく似合っている。

メギドさんの一件以降、屋敷に使用人として住む事になった二人は、もうすっかり馴染んでいるみたいで、慣れた手つきで掃除を切り上げ、全く同時に俺に頭を下げる。

「ご主人様、何か御用でしょうか? お茶の用意でしたら、直ぐに……」

「あ、いや、二人に渡したいものがあって、探してたんだ」

「私達に、ですか?」

シータのお茶を用意するかという提案は、非常に魅力的ではあったが、今は別の用事があるので遠慮しておく事にする。

そして俺の告げた言葉にイータが不思議そうに呟き首を傾げるのを見ながら、俺は口を開く。

「二人共、以前の戦いで武器が壊れちゃったんだよね。代わりは見つかった?」

「あ、いえ、まだ……です」

「私達の力に耐えられる武器となると、中々良いものが無くて……」

イータとシータは、以前俺を襲撃した際に、それぞれジークさんとアニマに武器を破壊されている。

そしてどうも二人共かなり良い武器を使っていたみたいで、代わりが見つからないと嘆いていたのを小耳に挟んだ覚えがあった。

最初は俺を襲ってきた相手ではあるが、俺に仕えると言ってからは、屋敷の仕事等も嫌な顔一つせずに手伝ってくれているみたいだし、感謝している。

少し困った表情を浮かべている二人に対し、俺はマジックボックスから昨日アリスから受け取った品を取り出す。

竜王……マグナウェルさんの鱗で作られた、真新しい大槍と大盾を……

「ご、ご主人様……こ、これは……」

「す、凄い魔力……です」

「いつも頑張ってくれてる二人に、俺も一応主らしい事しなきゃって思ってね。たまたま竜王の鱗が手に入ったから、それで二人の武器を作ってもらったんだ」

「「竜王様のっ!?」」

やはりマグナウェルさんの鱗というのは凄い素材みたいで、二人は目を丸くして驚愕の表情を浮かべる。

そしてしばらく固まった後、イータがどこか慌てた様子で口を開く。

「い、いけません! このような高価な品を、一介の配下である我等が受け取るなど……」

「お、恐れ多い……です」

明らかに恐縮して首を横に振る二人、どこか可愛らしいその様子に苦笑しつつ、俺は穏やかな声で告げる。

「俺が持ってたとしても、こんな重いの使えないから……二人にはいつも頑張ってもらってるし、これからも色々お世話になるだろうから、受け取って欲しい」

「……ご主……人様……」

俺の言葉を受けて、イータが茫然と呟いた後で、手を微かに震わせながら大槍を受け取り、直後に片膝をついて深く頭を下げる。

シータも同様の動きで大盾を受け取り、イータと同じく片膝をつく。

「ありがとうございます! ご主人様、このような素晴らしい一品を 下賜(かし) していただけるとは……」

「お優しいご主人様にお仕えできる事、至上の喜び……です」

「い、いくら何でも、おおげさな……」

感動に打ち震えているといった感じで、目に光る物を浮かべながら告げる二人。

そのややオーバーとも言えるリアクションに苦笑する俺に、二人は更に大きな声で告げる。

「頂いたこの武器は、ご主人様からの期待の表れと受け取ります! この槍に恥じぬ働きをする事を、ここに誓います!」

「う、うん、頑張って……」

「私達の、身も心も……永遠に、ご主人様ただ一人のもの……です」

「え、えっと、あ、ありがとう?」

本当に二人のテンションは上限を突破しているみたいで、あまりにも幸せそうな表情を浮かべていた。

そしてその武器を早く使ってみたいと、他の使用人達に許可を取り、俺に再び深く頭を下げてから大急ぎで庭に向かっていった。

なんというか、新しいおもちゃを貰った子供みたいで大変可愛らしかった。

去っていった二人の様子を思い浮かべて微笑んでいると、ふと視線を感じて振り返る。

「……」

「……え? アニマ、いつのまに?」

「あ、い、いえ、偶然通りかかりまして……け、けけ、決して覗き見をしようとした訳ではありません!?」

「あ、うん」

そう告げるアニマの表情はどこか寂しげで、イータとシータが去っていった方向を羨ましそうに見つめていた。

たぶん、というか、間違いなく……二人が俺から武器を贈られたのが羨ましかったんだろうが、自分にも何か下さいなどとは、無礼なので口が裂けても言えないといった感じだろうか?

そして寂しそうな表情はたぶん、自分は武器を使わないから、何も貰えないと思っているからだろう……そんな訳ないのに……

捨てられた子犬のような表情を浮かべているアニマを微笑ましく思いながら、俺はアニマに近付いて、そっとその黒い髪に触れる。

「……そんな寂しそうな顔しなくても、アニマにもちゃんと用意してるよ」

「え? あ、いえ!? じ、自分は!?」

「アニマには、なんだかんだでいつも助けてもらってるからね……」

「え? こ、これは……」

そう言いながら、アニマの髪に竜王の鱗で出来た、綺麗な髪飾りを付ける。

アニマは武器を使わないので、何か装飾品をと用意した赤い花の形をした髪飾り……それをアニマの髪にそっと付ける。

「……これで、よしっと」

「ご、ご主人様!? し、しかし、自分に、このような装飾品は……分不相応で……」

「そんなことないよ。アニマは可愛いんだから、凄く似合ってるよ」

「か、可愛っ!? ここ、光栄でしゅ!?」

微笑みながら告げた俺の言葉を聞いて、アニマは目に大粒の涙を浮かべて頬を染める。

なんだろう? アニマは元ブラックベアー……熊の筈なんだけど、なんか千切れんばかりに尻尾を振ってる子犬の幻影が見えた気がする。

その反応がとても可愛らしかったので、俺は頭に乗せた手をゆっくりと動かし、サラサラと手触りの良い黒髪を撫でる。

「はわ、はぅ……ご主人様ぁ……」

「アニマ、本当にいつもありがとう」

「ふぁぁ……勿体ない、お言葉です……自分は、ご主人様に仕える事が出来て……本当に……本当に幸せです」

嬉しそうに獣耳をピクピクと動かしながら、幸せそうに笑うアニマ。

まるで子犬が甘えているように可愛らしく、俺はしばらくアニマの頭を撫で続けた。

拝啓、母さん、父さん――最初は配下だとか、ご主人様だとか、色々戸惑ったものだけど……何だかんだで、今となってはアニマもイータもシータも……いつの間にか、本当に――大切な存在になっていると思う。