軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

国王陛下が訪ねてきた

オーキッドとしばらく雑談をしていると、リリアさんによる三人の説得も完了したらしく、ダリアさんが俺の方を向いて頭を下げてくる。

「失礼致しました。ミヤマ様の居た世界の常識には疎いもので、てっきりこちらと同じようなものと思っていました」

「あ、いえ」

「リリアを『妾』として可愛がってあげて下さい」

「何も分かってないじゃないですか、母上!!」

穏やかな微笑みのままで告げられた言葉を聞き、思わず椅子から滑り落ちそうになった。

つまり、先程ダリアさんが後妻という発言をしたのは、俺の世界もこの世界と似た様なもので、俺の年齢であれば結婚しているだろうと思っての事だったらしい。

結婚はおろか、女友達もいなかったんだけど……うん、止めよう。自分で考えてて悲しくなる。

そのタイミングで、ダリアさんとアマリエさんに比べてあまり発言をしていなかったロータスさんが、ゆっくりと顎鬚を撫でながら口を開く。

「……ミヤマ殿、無礼かもしれませぬが、一つお伺いしても?」

「え? あ、はい。大丈夫です」

「では、失礼して……ミヤマ殿は、本日護衛を連れていないのですか?」

「……護衛、ですか?」

ゆっくりとしながらも確かな力強さを感じる声で尋ねられ、俺は首を傾げる。

確かに今、護衛は連れていない……アニマとイータとシータはついてくると言っていたけど、仰々しくなるのが嫌で連れてこなかった。

「ええ、例えば……実際にはあり得ぬ話ですが、仮に今、突如オーキッドが剣を抜きミヤマ殿に襲いかかったとします」

「え? 私が?」

「その場合は、当然リリアがオーキッドを止めるでしょうが……」

「え? リリア姉様と戦う? それ、私死ぬ未来しかないような……」

ロータスさんが告げた言葉に、オーキッドは冷や汗を流しながら答える。

リリアさんと戦うのは想像すらしたくないらしい……気持ちは大変良く分かる。

「ですが、その際に私がリリアでは対応できぬ数の兵を潜ませていた場合は、どうなるでしょう?」

「……」

「ミヤマ殿の価値は、貴方自身が思っているより遥かに高いです。余計なお世話とは思いますが、護衛を数人は常時付けた方が良いのではないでしょうか?」

「な、成程……」

全くそんな感覚はなかったが、元国王に言われると重みが違う。

俺としてはあまり沢山の護衛に囲まれて行動と言うのは嫌なんだけど、俺が何かに巻き込まれるとリリアさんにも迷惑がかかるし、考えた方がいいのかもしれない。

そう考えて頷こうとした時、室内に甲高い声が響いた。

「……必要ないっすよ? カイトさんには、私が居ます。何百人こようが、何千人こようが、ソイツらが生まれた事を後悔するだけですね~」

「ッ!?」

「……アリス?」

突如何処からともなく聞こえてきた声にロータスさんが驚いた表情を浮かべる。

この特徴的な敬語は、間違いなくアリス……何で声がいつもと違って甲高いんだろうか?

そんな疑問に答える様に、部屋の中心の景色が歪み鎖の付いた黒いローブで顔を隠し……幻王としての姿で、アリスが出現する。

「げ、幻王様!?」

「はい、こんにちは……私がカイトさんの護衛をしてる以上、他は必要ないっすよ」

「……アリス、お前いつの間に……」

「え? 最初っから居ましたよ? カイトさんに何かあったら大変ですしね」

全然気付かなかった……流石仮にも魔界の頂点である六王の一角。

そしてみんな驚く中で、リリアさんは一人死んだ魚の目になってるんだけど、何だろうあの表情……もうなんか色々諦めた感じの顔だ。

「げげ、幻王様が、みみ、ミヤマ殿の護衛に!?」

「その通りですよ~カイトさんは私が剣を奉げる主です。つまり、カイトさんに剣を向けるって事は……私と、私の軍勢に戦いを挑むのに等しい訳っすね~」

「……これは、失礼致しました。本当に余計なお世話でしたね。まさか、幻王様が護衛についておられるとは……」

「いや、俺も初耳です」

驚愕した表情のまま深々と頭を下げるロータスさんに、アリスは軽い口調で答えるが……俺もそんな事は初耳である。

「何言ってるんですか、カイトさん! 私はカイトさんの『体にあるホクロの数』だって知って――ぎゃんっ!?」

「……お前、プライバシーって言葉知ってる?」

「知ってますよ。シャローヴァナル様に気に入られた時点で、カイトさんから無くなったやつですよね」

「……ちょっと目眩がしてきた」

確かに言われてみれば、アリスだけでなく……今現在シロさんも見ている訳だ。

俺にプライバシーなんてなかった!?

(私もそこに行きましょうか?)

止めて下さい、大騒ぎになります。

「それじゃ、私は引っ込みます。御用の際はいつでも呼んで下さい! 御用が無くても、ランチとかディナーの際に呼んでいただいても結構ですよ!!」

「それお前が食べたいだけだろ……」

「豪華なランチを所望――痛いっ!?」

本当にアリスは安定のアリスで、俺に殴られた頭をさすりながら姿を消す。

うん、なんかアイツのノリが軽すぎてそんな気はしないけど、六王の護衛って……物凄いな。

「う、噂には聞いておりましたが……か、カイト様は凄まじい方ですね」

「アマリエ、良いですか……カイトさんは化け物です。カイトさんに常識は通用しません。カイトさんだからしょうがない……その言葉を胸に秘めておいてください」

「ちょっ、リリアさんっ!?」

「リリア姉様、顔色が優れませんが……」

「いえ……ちょっと胃薬を飲んできます」

苦痛の末に何かを悟ったような表情を浮かべ、リリアさんがアマリエさんに告げる。

その表情からは今までの苦労が滲み出ているみたいで、なんかとても申し訳なく感じた。

「……カイトも色々大変なのですね」

「ありがとう、オーキッド、なんかそう言ってもらえると嬉しいよ」

「相談や愚痴であれば、いつでも聞きますので」

「……助かるよ」

ポンっと俺の肩を叩き、同情した表情で話しかけてくるオーキッドの言葉をありがたく感じつつ、プライバシーが消え去った……いや、前から消え去っていた事に肩を落とした。

その後は比較的穏やかに雑談を交わし、豪華な夕食を一緒に食べてから、割り振られた部屋に移動した。

俺は本当に国賓のような扱いみたいで、割り振られた部屋は驚くほど広く、ベッドもキングサイズの巨大なものだった。

何というか分不相応に感じて落ち着かない。リリアさんの屋敷の部屋ですら広すぎる位なのに、それ以上の広さになると落ち着かない。

そして部屋の中で少し手持無沙汰になり、落ち着かずキョロキョロしたりしていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。

誰だろう? リリアさんかな?

「はい、どうぞ」

「失礼、夜分の訪問、無礼をお許しいただきたい」

「国王陛下!?」

部屋に入って来たのは、まさかのライズ国王陛下だった。

近衛騎士の一人も連れず単独で、いきなり現れた国王陛下を見て、俺は茫然と固まってしまう。

「ミヤマ殿とは、少し一対一で話をしておきたいと思っていましたので、お時間を頂いても構いませんか?」

「え? あ、はい。大丈夫です」

丁寧な口調で話しかけてくる国王陛下に緊張しながらも頷く。

拝啓、母さん、父さん――リリアさんの家族との雑談も終わり、用意された広い部屋で手持無沙汰にしていた訳なんだけど、何故かそこに突然――国王陛下が訪ねてきた。