軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ガードが緩すぎるんじゃないか!?

クロノアさんの不憫さを哀れに思いつつ、しばらくシロさんと泳ぎ……というより、のんびり海に浸かってから、砂浜に戻ると……そこには本当に海の家があった。

木造りの簡素な外観に、海の家と書かれた看板……妙に古めかしい所まで完璧に再現された海の家、クロノアさんすげぇ!?

中に入ると、畳の匂いまでしてくる始末……本当にどうやって作ったんだろうかコレ。

そしてシロさんと向かい合う形で席に着くと……シロさんはいつの間にかポニーテールに変わっていた。

たぶん長い髪が砂につくのを避ける為だろうが、それにしてもどんな髪型になっても似合うというか、また違った魅力があるので凄いと思う。

「シャローヴァナル様、どれになさいますか?」

「では、『微妙に美味しくない焼きそば』で」

「……」

う、うん。確かに海の家の焼きそばってそんな感じだけど、それハッキリ言っちゃうの!? あ、後ちゃんと美味しい所もありますからね……たぶん、きっと。

「畏まりました。ミヤマは、何にするのだ?」

「えっと……クロノアさん、あそこに書いてるメニュー、本当に全部作れるんですか?」

「問題無い」

「……じゃ、じゃあ、カレーライスで」

「うむ」

本当にカレーライスとか、この短時間で作れたの? い、いや、確かにクロノアさんは時間を操れるみたいだし出来ない訳ではないだろうけど……あんま料理するってイメージでは無いんだけど。

若干の不安を抱きつつ、注文をしようとした所で……俺の感応魔法が、ある気配を捕らえた。

成程……クロノアさんは、あの方に頼んだのか。

だとしたら、出てくる料理は全く問題なさそうだ。

その俺の予想を肯定する様に、直ぐに俺とシロさんの前にカレーライスと焼きそばが置かれる。

いただきますと口にしてから、カレーライスを一口食べると……うん、流石『アインさん』、微妙に安っぽい感じまで完璧に再現されてる。

確かにこのカレーライスは、まぎれもなく海の家のカレーライスだ。

「シロさん、どうですか?」

「微妙に美味しくないですね。成程、これが海の家の焼きそばですか」

「……というか、フォークで食べてるんですね」

「箸という物を使った事がありません。ですが、そうですね。やはり割り箸とやらで食べなければ、真に食した事にはなりませんか」

「……いや、そんな事は全然ないと思いますけど?」

シロさんは焼きそばをフォークを使い、まるでパスタのように食べていた。

この世界の方達にとって箸は一般的では無い訳で、それは別に何か可笑しいという訳では無く、単純に世間話のつもりで言ったのだが……次の瞬間、シロさんは信じられない事を言い始めた。

「なので、快人さん。箸で『食べさせて下さい』」

「……はい?」

「一度箸で食べてみたいので、食べさせて下さい」

「い、いや、それは流石に……」

「一度箸で食べてみたいので、食べさせて下さい」

「で、ですが……」

「一度箸で食べてみたいので、食べさせて下さい」

「……分かりました」

リピート再生やめて下さい。マジで怖いので……

う~む、なんか今日はやたら羞恥プレイばかりされている気がする。

ただ、本当に幸いながら、この海の家にはクロノアさんとアインさんしかいないのでそこは助かった。

俺は観念してテーブルに置いてあった割り箸を手に取る……てか、割り箸も作ったの? 本当に完璧に再現してるなクロノアさん。

って、ちょっと待てよ? 食べさせるって……この対面に座った状態で? このテーブルが大き目だからかもしれないが、凄くやりにくそうな感じなんだけど……

「隣に座れば良いのでは?」

「……え、ええと……わ、分かりました」

確かに隣に座れば簡単に食べさせる事が出来るだろうけど……重大な問題として、現在のシロさんは水着であり、素肌が大変露出している。

その状態で隣に座るのは、相当の覚悟がいるのだけど……ここで断ったとしても、延々とリピート再生みたいに繰り返されるだけなのは目に見えてる。

意を決して、席を立ちシロさんの横に座るが……予想を遥かに上回る光景だった。

殆ど同じ位の身長のシロさんの隣に座ると、艶のある美しい髪もさることながら、深い谷間を作っている胸がハッキリと見えた。

あまりにも美しく柔らかそうな肌に、どこからともなく漂ってくる心地良い香り、そしてすぐ近くに見える絶世の美女以外に表現が浮かばない美しい顔……心臓がバクバク鳴ってるのが自分でも分かった。

お、落ち着け、大丈夫だ。

ちゃんと少し間を開けて座ったし、目のやり場にさえ注意すれば……

「……」

「なぁっ!?」

何で、肩が触れそうな距離まで詰めてきたの!? 折角距離開けて座ったのに!?

素肌が触れ合いそうになり、さらに大きく心臓が跳ねるが、シロさんは特に気にした様子もなく無表情のまま。

お、落ち着け、冷静になれ……深呼吸だ。深呼吸をして……

だが、俺が冷静になる事をシロさんは許してくれなかった。

「そんなに、コレは良いものなのですか?」

不思議そうに首を傾げながら、シロさんは流れる様に俺の手を取り……その手を自分の胸に触れさせ――えぇぇぇぇ!?

「へ? なっ!?!? しし、シロさん、なな、何を!?」

「いえ、興味深そうに見ていたので」

「~~!?!?」

何やってんのこの方!? や、柔らか……じゃ無くて!? まま、まずいまずい、はは、早く手を離さないと、完全にセクハラ……

「貴方が触れたいというのであれば、私は構いませんよ?」

「そう言う発言は止めて下さい!? と、とにかく! 手っ!? 離して下さい!?」

「分かりました」

顔が燃えるように熱くなるのを感じながら必死に叫ぶと、シロさんはアッサリ手を離してくれる。

ま、まだ手に感触が残ってる……な、何てとんでもない天然行動をするんだこの方は!? 一瞬で理性が焼き切れるかと思ったんだけど!?

しかし当のシロさんは……分かりきっている事だが、全く気にした様子もなく焼きそばの皿を差し出してくる。

「では、食べさせて下さい」

「……はい」

精神がガリガリと削られていくような感覚を味わいつつ、俺はシロさんの顔をまともに見る事が出来ずに俯いて皿を受け取る。

そして割り箸で焼きそばを掴み、それをシロさんの口に運ぶ。

「成程、やはり箸で食べた方が美味しく感じますね」

「そそ、そうですか……」

「しかし、これでは快人さんがカレーライスを食べられませんね」

「あ、いや、それは別に後でも……」

「なので、どうぞ」

「なっ!?」

相変わらず抑揚の無い声で淡々と感想を告げた後、シロさんは俺のカレーライスの皿を持ち、スプーンですくって俺の方に差し出してくる。

ちょ、ちょっと、待って!? コレはアレか!? まさか交互に食べさせ合うとか、そう言う事をしろと言ってるのか?

「はい」

「い、いや、はいって……」

「どうぞ」

「……」

「どうぞ」

「……い、いただきます」

やはりシロさんは譲ってくれない。もう俺には、この沸騰しそうな羞恥プレイに身を委ねるしか選択肢は無くなってしまった。

シロさんが差し出してきたカレーライスを食べ、今度は俺が焼きそばを食べさせる。

拝啓、母さん、父さん――シロさんと海の家で食事をした……訳なんだけど、思いっきり振り回されてしまっている。本当にシロさんは天然と言うか、何と言うか……ともかく――ガードが緩すぎるんじゃないか!?

「貴方だけが特別ですよ」

「……だから、そういう発言は……」