軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

とても不気味な存在だった

何と言うかどんどん話が進んで、いつの間にかリリアさんの屋敷の庭で宴会を行う事になった。

だが、事の発端となったメギドさんはと言うと……テキパキと準備を進める配下を置き去りにして、どこかへ消えてしまった。

配下達は気にしていない様で、どんどん準備を進めていくが……ある意味主役とも言える人が居なくて良いんだろうか?

っと、そんな事を考えていると……再び門の前に火柱が上がり、メギドさんが戻ってくる。てか、この方は転移する度に火柱上げるんだろうか?

しかしそんな疑問は戻って来たメギドさんを見てすぐに吹き飛んだ。

メギドさんは片手に『木を三本』、もう片方の手にメギドさん以上に巨大な緑色の鹿を抱えていた。

「おう、待たせたな!」

「……あの、メギドさん……それは?」

「うん? ああ、この肉がまた美味いんだよ。それと、俺は別に肉だけで良いだが、人間は果物もあった方が良いだろうと思ってな、一緒にとってきておいたぜ!」

俺の疑問に豪快に笑いながら答え、メギドさんはそれを軽々と持って庭の中央辺りに置く。

するとメギドさんの配下がテキパキと動き、巨大な鹿を解体していく。

「……ねぇ、メギド。アレってさ……フォレストホーンなんじゃない?」

「あん? 食い物の名前なんざ、一々覚えてねぇよ」

「……リリウッドに許可とったの?」

「なんで、リリウッドに許可取らなきゃいけねぇんだ?」

メギドさんが狩って来た鹿を見て、『クロ』が何やら呆れた顔で話しかける。

何故かリリウッドさんの名前が出てきたが……何と言うかとても、哀れな予感がする。

「フォレストホーンは個体数が少なくなってきたから、流通を制限するって言ってたじゃん」

「そうだったか? まぁ、んな細かい事いちいち気にしててもしょうがねぇだろ!」

「……今頃、リリウッド頭抱えてるんじゃないかなぁ……」

どうやらメギドさんは、リリウッドさんの領地? から無許可で鹿と木を取って来たらしい。

……メギドさんの性格を考える限り、一度目と言う訳ではなさそうだ……

魔界において最大の広さを誇る森……界王リリウッドが管理する地。

その一角で、森の王たるリリウッドは茫然としていた。

『……これは……一体……』

「あっ、界王様!? さ、先程突然戦王様が現れまして……宴会をするから、果物と肉を貰っていくと……」

『……』

眷族が慌てながら告げてきた状況を聞き、リリウッドは視線の先……何本もの木が根元から引き抜かれた光景を見て沈黙する。

持って帰る木を選んだのか、あちこちに引き抜かれた木が散乱している地獄絵図とも言える光景……リリウッドは体を震わせ、怒りの籠った表情で虚空に叫ぶ。

『メギドォォォォ!!』

宴会の準備が整い、楠さんと柚木さんも含めたリリアさんの屋敷に住む人達も庭に出て来た。

メギドさんが大きなコップを持ち、乾杯の音頭を取ろうとした時……屋敷の庭に木が生えてくる。

そして生えて来た木は蠢きながら形を変え、リリウッドさんが現れた。

『メギド!』

「おう、リリウッドじゃねぇか、お前も参加するか?」

『そんな話をしに来たのではありません! よくも私の森を荒らしてくれましたね!!』

「……そんな事したっけか?」

明らかに怒りに震えている様子のリリウッドさんに対し、メギドさんは特に気にした様子もなく首を傾げる。

そんなメギドさんの反応をみて、リリウッドさんは更に怒りを強くした様子で、鋭くメギドさんを睨みつける。

何と言うか……そちらはそちらで大変そうだが……庭に六王三体が現れてしまい、リリアさんの意識も旅立ってしまい、こちらもこちらで大変な状況になりつつあった。

『そこに転がってる木が何よりの証拠です!』

「ああ、そうか……果物貰ったぞ!」

『木ごと抜くんじゃありません!』

「その方が早いだろ?」

『……一体、何度同じ事を言えば普通に収穫する様になるんですか、この筋肉馬鹿!』

「あ゛?」

『なんですか?』

リリウッドさんとメギドさんのやり取りはどんどんヒートアップしていき、ついにメギドさんの声が低くなる。

しかしリリウッドさんの方も、流石六王の一角……一切ひるむことなく睨み返す。

そして両者の間に空気の軋む様な音と共に、魔力の暴風が吹き荒れる。

「……喧嘩売ってるんなら買うぜ? リリウッド」

『いいでしょう。どうやら貴方には、口で言うだけでは足りないみたいですからね……場所を変えますよ』

「望む所だっ!」

……宴会始まる前に喧嘩が始まってしまった。

リリウッドさんとメギドさんはここでは全力で戦えないと判断したのか、ほぼ同時に転移魔法で消えてしまう。

てか、温厚そうなリリウッドさんがあそこまで怒るなんて……これ、多分メギドさん同じような事したの、一回や二回じゃないな……

主役? が突然現れた六王と共に消えてしまった光景に茫然としていると、『クロ』が再び呆れた表情で口を開く。

「……はぁ、コレしばらくかかるね。宴会はメギドとリリウッドが戻って来てからだね」

「……そうなるよな」

「まぁ、それまでカイトくんとお話しでもしてよっかな? ねね、カイトくん、ボクの魔獣モードについて感想があるんじゃないかな?」

「え? 別にないけど」

「無いのっ!?」

とりあえず二方が戻ってこなければ話も進まないので、それまで『クロ』と雑談をしている事にする。

期待を込めた表情で先程の魔獣の姿……曰く魔獣モードの感想を聞いてくるが、感想って言われても特に思いつかない。

「ほ、ほら、何かあるでしょ? カッコ良かったとか、恐そうだったとか!」

「……あんなにトゲがいっぱいだと動きにくくない?」

「そこぉっ!?」

いや、だって全身トゲだらけだったし……あんな格好で歩いたら、トゲが体に刺さりそうな気がする。

俺の言葉が予想外だったのか、『クロ』は驚愕した表情で硬直し……しばらく経ってから慌てた様に話しかけて来る。

「いやいや、でもほら、何かあるでしょ!? 今まで見せて無かった、魔獣モード見せたんだよ? ボクに何か聞きたい事とかあるんじゃない?」

「……う~ん。じゃあ、一つだけ聞いても良い?」

「うんうん。何でも聞いて!」

どうにも魔獣モードに対して感想を抱いてないのが気にらない様で、食い気味に質問がある筈だと告げて来る『クロ』を見て、俺は『クロ』がこの場に現れた時から聞きたかった事を聞いてみる事にした。

期待の眼差しでこちらを見る『クロ』……その金色の目を見つめながら、俺はゆっくりと口を開く。

「……『お前は誰だ?』」

「……え?」

俺の質問を聞き、今度こそ『クロ』は完全に硬直する。

しばらく重い沈黙が流れた後、『クロ』は困った様な笑みを浮かべながら口を開く。

「やだな~カイトくん、何言ってるの? ボクは――「クロじゃないだろ?」――ッ!?」

正直な話、何か根拠がある訳では無く、殆ど直感の様なものだったが……俺は確信していた。

今俺の目の前に居る。クロと同じ姿で、同じ声で、同じ魔力の存在は……クロでは無い。

「……一体何言ってるの、カイトくん。何を根拠にそんな……」

「根拠は無い。理由も分からない……でも、お前は違う。クロじゃない」

「……」

確信を持って、先程よりも強い口調で告げる俺の言葉を聞き、『クロ』は沈黙する。

そして再び少しの間沈黙が流れた後……今までとは違う声が聞こえて来た。

「……驚いたと、言わざるをえないな」

「ッ!?」

見た目はクロのままだが、声は先程までと一変し……聞き覚えのある甲高い声へ変わる。

「見破られたのは、初めてだ。貴方に対する評価を改める必要があるな……だが、今は賞賛しておこう。見事だと……」

「……幻王、ノーフェイス」

「その通り、いやはや、恐れ入った」

クロの姿のままで拍手をしつつ、幻王は俺に賞賛の言葉を投げかけて来る。

……信じられない。こうして正体が明かされた今でも、目の前に居る幻王とクロとの見た目の違いは一切分からないし、感じる魔力も間違いなくクロと同じ……

それ以前に最高神であるクロノアさんも、六王であるメギドさんも気付かない……気付けない、完璧な変装。

いや、もはやこれは変身やコピーとでも言った方が正しいのかもしれない。

「ミヤマ・カイト。見事戦王の脅威を退けて見せたな。まさかこれほど早く成し遂げるとは、思っていなかった。素晴らしい……私も誇らしい気分だ」

「……どの口が……」

「しかし、まだまだ、私は満足していない。もっと見せてくれ……貴方の可能性を」

「……」

気味の悪い声ながら、どこか楽しそうに告げた後、幻王は俺を真っ直ぐに見つめて微笑む。

「だがその前に……第二の試練を乗り越えた褒美を与えなくてはな……受け取ると良い」

「……これは?」

幻王はどこからともなく小さな……トランプ程のサイズのカードを取り出し、俺に差し出してくる。

「死王の居城に遊びに行くのだろう? なら、それはきっと役立つだろう」

「ッ!?」

本当にコイツは、不気味な上に腹立たしい。

あらゆる情報は幻王の元に集まるという話だが、どうやらその言葉に偽りはないみたいで……コイツは、そんなことまで知っている。

いや、そもそもコイツはほぼ誰にも分からない程の変装が出来る……もしかしたら、今までも、俺の近くに居る誰かに変装して、何食わぬ顔で俺の近くに居たのかもしれない。

改めて幻王の恐ろしさを感じていると、幻王はクロの顔のままで楽しげに笑う。

「期待しているよ。ミヤマ・カイト……その調子で試練を乗り越えてくれ」

「……」

「そうすれば、私は貴方の前に提示してあげよう……挑むべき深淵を……」

「ッ!? 待てっ!」

「……また会おう」

再び言葉だけを残し、幻王は煙のように消える。

前に会った時よりも、さらに不気味な恐ろしさを残して……

拝啓、母さん、父さん――気付けばいつの間にか紛れ込んでいる王。虚ろう幻影と言う言葉がしっくり当る幻王は――とても不気味な存在だった。