軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白神祭夕方⑨

シロさんと手を繋ぎ、夕焼けに照らされる石畳の道を歩く。当たり前ではあるが、神域はとても静かで祭りの最中とは思えない雰囲気だ。

履いている下駄が石畳を歩くと小気味いい音を立て、夕日も相まってどこか哀愁が漂うような雰囲気ではある。

「……こうやってゆっくり神域の花を見る機会はあまりありませんでしたけど、結構ひとつひとつ特徴的ですね」

「その時々の思い付きで作っているので、我ながら多種多様だとは思います。一番新しいのだと……あそこにある花ですね」

「形はマリーゴールドに似てる感じですけど、夕日で分かり辛いですが……色は銀っぽいですね」

いつもは漠然と綺麗だなぁと思って眺めていたが、今日白神祭を回ったことで神域に咲く花がいかに貴重か分かったせいか、いつもとはまた少し違って見える気がする。

というよりは、最高神ですらゆっくり見ることが難しいと思われる神域の花畑を、こうしてゆっくりと見ることができるのは本当に幸せなことだと思う。

そんなことを考えつつ、チラリと横に視線を向けると、シロさんの横顔が見えた。夕日に照らされるシロさんの顔は、なんというか神秘的な美しさが更に際立っているように思えた。

……本当になにより幸せなのは、こうして他の人が見ることができないシロさんの一面を近くで見れることだと感じた。

もちろんシロさんが圧倒的な美しさを持っているのはよく分かっているが、それだけではない。近くで見る機会があるからこそ分かるのだが、他の人にとってはほぼ変わってないように見えるかもしれないが、俺にはシロさんはいまどんどん変わっているように感じる。

昔の近寄り難い現実離れした美しさではなく、圧倒的な美貌の中にも柔らかな温かさを感じるというか……間違いなく言えるのは、昔のシロさんより今のシロさんの方がずっと魅力的だということだ。

しかも日々変化しているので、今日のようにいままで見たことがないような新しい発見があったりするのも、なんだか嬉しいものだ。

「……言葉に出してもいいんですよ? 出すと私が喜びますし、手を握る力が少し強まりますよ」

「それはとても魅力的ですね」

まぁ、本当に心が読まれるのでこっちの考えは筒抜けなのだが……別に不快だったりストレスだったりすることはない。

時々気恥ずかしかったりするが、問題ないと感じているのはシロさんへの深い信頼があるからだろう。

「……今日のシロさんはいつも以上に綺麗ですし、花を見てるつもりがついシロさんに見惚れてしまうほどに魅力的ですよ」

「今日の快人さんはいろいろ素直に言ってくれるので、とても嬉しいですね」

「いや、恥ずかしいのは恥ずかしいですが……ま、まぁ、こうしてデートしている時ぐらい恋人をしっかり褒めたいですよ」

シロさんは本人がそう宣言したように、とても嬉しそうに微笑んだあとで、ほんの少しだけ俺の手を握る力を強くした。

……いや、本当に恥ずかしいのは恥ずかしいのだが、シロさん相手だと心の中を読まれているので隠すだけ無駄だという軽い開き直りの感情もあって、わりと素直になりやすい。

そのままシロさんとしばらくふたりきりの時間を満喫しつつ、散歩をしていると……フッと電気が消えるようにいきなり暗くなった。

視線を上げてみると星空が広がっており、神界が夜に切り替わったということが伝わってきた。夜になったタイミングで、花畑の花々が淡い光を放ち始めたおかげで足元とかはまったく問題ない。

しかし、空が夜に切り替わったってことは……。

「……夜になったってことは、そろそろ花火が始まるんですかね?」

「ええ、もう少しですね」

「それじゃあ、花火が見えるところに……どの辺がいいんですかね?」

「この先に、花火がよく見える『芝生の丘を創ってある』ので、そこで見ましょう」

「……なるほど、それはよく見えそうですね」

うん。そうだよね、シロさんだもんね。大体なんでもアリだよね。そりゃ芝生の丘ぐらい簡単に作れるだろう。

う~ん、しかし、花火……芝生の丘……前のデートとかから、シロさんは割とコテコテのシチュエーションを実行しようとすることが多いと考えると……。

「……並んで座ってみる感じですか?」

「おおむねその通りです」

「おおむね?」

「普通に並んで座ると、私の肩が空いてしまうので、由々しき事態になってしまいます」

シロさんがこの言い回しをするということは、なにかしてほしいことがある場合である。えっと、隣に並んで座って花火を見るシチュエーションで、肩ってことは……。

俺がシロさんの肩を抱いて花火を見る……ということだろうか?

そう考えつつチラリとシロさんの方に視線を向けると、なんとなく楽しそうな表情を浮かべている気がした。

「おそらく快人さんであれば、すでに対策は考えているのでしょうし、まったく問題はありませんね」

「……そうですね」

さすがにここで「肩を抱いた方がいいですか?」なんて聞くのは無粋極まりないので自分で考えて実行することにする。まぁ、シロさんの反応を見る限り、間違いなく正解だろうけど……。

それにしても、なんというか……嬉しそうだなぁ、なんか声に抑揚が無くてもウキウキしてるのが伝わってくるというか……こういう可愛らしいところも、普通は気付きにくいシロさんの魅力かもしれない。