作品タイトル不明
白神祭夕方⑥
ガイアさんとの遭遇があったあと、俺たちはスカイさんの案内でいくつかの場所を回り、時間をみて俺は皆とは別行動となった。
シロさんとの約束は夜の6時からだが、フェイトさん曰くクロノアさんたちが用があるとのことで、15分前に来てほしいという話だった。
なので、一旦上層に転移魔法で移動する。仮に神域に直行するならシロさんに呼んでもらうとか、一度家に戻って転移門を使うとかの方法もある。
まぁ今回は一度上層を経由するので、最高神の神殿にある魔法陣で神域に転移する形だ。
特にどこの神殿にという指定は無かったので、初めは通いなれたフェイトさんの神殿に向かう。フェイトさんは今回の白神祭に関しては、基本的には監修担当で直接の実行はクロノアさんとライフさんが主体みたいなので、ふたりに比べれば手が空いてる形だ。
勝手知ったる神殿の廊下を歩き、最奥の巨大な扉を軽くノックすると、巨大な扉が音もなく開く。中にはいつも通り宙に浮かべたクッションに寝転がっているフェイトさんの姿があり、フェイトさんはこちらを見て……不思議そうに首を傾げた。
「あれ? カイちゃん? もう来たの? まだ5時にもなってないけど……」
たしかにフェイトさんに指定された時間までは、まだ1時間以上ある。実は、皆とは早めに別れてここに来た。
というのも、ある目的があったからだ……いや、別に大層な理由ではないのだが……。
「いや、フェイトさんは割と手が空いてるって聞いたので」
「え? うん、私は監修だけだし、いまの時空神と生命神なら注意することもほとんどないからねぇ。結構ダラダラしてるよ」
「ええ、なので早めにくれば、フェイトさんとゆっくり過ごせるかなぁと思って早めに……途中に露店で軽く食べれるものとかも買ってきました」
「はえ? え? あっ、そういう……」
そう、俺が早めにここに来た理由は単純で、恋人であるフェイトさんと少しゆっくり話したいなぁと思ったからだった。
ここまでで十分にいろいろ回ってお祭りは楽しんだし、休憩も兼ねてのんびり雑談とかいいなぁと思ったわけだ。
もちろん、フェイトさんが忙しそうなら一旦出直すつもりではあったが……。
フェイトさんは俺の言葉を聞いてキョトンとした表情を浮かべたあと、少しして楽し気な笑顔を浮かべつつ俺を手招きした。
「カイちゃん、ちょっとこっち来て」
「こっち? このあたりですか?」
「もうちょっと、あと二歩ほど前かな」
「……二歩っと――「うりゃっ」――うぉっ!?」
フェイトさんに言われるがままに近づくと、突然フェイトさんは俺の手を掴んで勢いよく引っ張る。もちろん俺の力程度で最高神であるフェイトさんに対抗できるはずもなく、引かれるがままに俺の体は前のめりに倒れる。
するとそこにあるのは、フェイトさんが乗っている宙に浮かぶクッションであり、柔らかな感触と共に俺の体はクッションにダイブする形で倒れ込んだ。
突然の状況に混乱しつつも、空中に浮かぶクッションに顔からダイブというのも新鮮な体験だなぁとか、ビーズクッションなだけあって滅茶苦茶柔らかいなぁとか、そんな関係のない感想も頭に浮かんだ。
しかしそんな悠長な感想は、フェイトさんが寝転がった俺にガッシリと抱き着いてきたことで一気に引き戻される。
「フェ、フェイトさん!?」
「もぅ、カイちゃんはいっつもそうやって私を喜ばせるんだから、ホントそういうところズルいよね」
「い、いや、その前にこの状況はいったい」
「いいじゃん、いいじゃん、一緒に寝転がってダラダラしようよ」
「え? あ、コレってそういう感じなんですか……いきなり何事かと」
気のせいとかではなくクッションのサイズも大きくなっており、たしかに俺とフェイトさんがふたりで寝ころんでも余裕はありそうな感じだ。
フェイトさんは俺の腕を抱えるように抱き着きながら、なんとも楽しげな表情を浮かべているが……その姿勢だと、大変豊満な胸に俺の腕が埋まって気が気ではないのでちょっと困る。
フェイトさんに邪な気配はまったく無く、純粋に俺がフェイトさんと過ごすために早めに来たのを喜んでくれているみたいでニコニコと無邪気な笑みを浮かべている。
……まぁ、こうやって寝転んですごすのもいいかな? というか、宙に浮かぶクッションに寝転がるって初めての体験だけど……これ滅茶苦茶寝心地いい。
なんか雲の上で寝転がっているみたいで、フェイトさんがだらけるのも分かる気がする快適さである。
「そういえばさ、カイちゃんはどこ回ってきたの?」
「えっと、下層では初めに……」
本当に嬉しそうな顔で話しかけてくるフェイトさんを可愛いなぁと思いつつ、俺は白神祭での出来事を順にフェイトさんに語っていった。