軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白神祭夕方①

フェニックスさんとティアマトさん、暴走するふたりの前に現れたアリスは明るい笑顔のままで、いっそ寒気すら感じる優しい声で告げた。

「……フェニックス?」

『す、すす、すみません。つ、ついテンションが上がって調子に乗りました。マジすみません、アレだけは……』

アリスに名前を呼ばれたフェニックスさんはガタガタと体を震わせつつ、震える声で謝罪の言葉を口にする。

あの極まったドMであるフェニックスさんが明らかに怯えているというのも不思議な光景だが、アリスぐらいになればフェニックスさんの性癖を満たすことなく罰を与えることも可能なのだろう。

「……ティアマト?」

「自制が効いていませんでした。恥ずべきことです。つい気持ちが高ぶってしまい……いまは大丈夫です。気持ちどころか血の気もすっかり引きましたので、悲しいほどに冷静です」

ティアマトさんの方もアリスに名前を呼ばれただけで顔を青ざめさせており、相当の恐怖を感じているというのが伝わってきた。

このふたりにここまでの恐怖を与えられるのは、正直本当に凄いと思う。アリスはふたりの言葉に笑顔で頷いたあと、静かに告げる。

「……なるほど、誰しも失敗はありますもんね。それは仕方ないですね、問題は失敗したあとどうするかですね……それで、賢明なふたりは、私にお仕置きされないためにどうするんですか?」

『帰ります! 即座に、速やかに!』

「帰って自主的に謹慎します。数日ほどは確実に……」

どうにもアリスのお仕置きはよっぽど恐ろしいらしく、即座に帰ると告げる。

以前からなんとなく疑問を感じていた。

十魔はかなり個性の強い面々で、フェニックスさんやティアマトさんのようにヤバい方も居る。そんな個性的な面々が最大の配下数を誇る幻王陣営の幹部として成立している理由は……王であるアリスは手綱を握れるからなのだろう。

「そうですか、そうですか……じゃあ、私が笑顔の内に……さっさと帰りなさい」

『「お疲れさまでした!!」』

アリスが告げた直後、まさに脱兎という言葉があう速度でフェニックさんとティアマトさんは逃げ出した。

これは、正直本当に助かった。仮に俺ひとりであれば、まだある程度大丈夫だったが……皆がいる状況では、あのふたりはヤバすぎる。

スカイさんが懸念している通り、葵ちゃんや陽菜ちゃんとかは精神的なショックを受けかねない。まぁ、だからこそ、アリスも今回は早く動いてくれたのだろうが……。

「……うちの変態が迷惑をかけました。まぁ、これで数日は大人しくしてるでしょう……アレでも、数日経ったら元通りなのは頭が痛いですが」

「ああ、うん。助かった、ありがとう」

呆れたような表情を浮かべながらアリスは再び姿を消した。これでひとまずは解決ではあるのだが……。

「スカイさん、結構注目されているので、移動しましょうか」

「そうですね、次の場所に移動しましょう」

直近の脅威は去ったとはいえ、結構注目を集めてしまったので、このままここに居るのは気が引ける。まぁ、ここにはまたあとで来るとして、次の場所に移動するのがいいだろう。

スカイさんも俺の考えをくみ取ってくれ、すぐに了承して次の場所へ移動することになった。

メインステージのある広場から離れて歩きながら、スカイさんに次の目的地を訪ねる。

「次は礼拝堂を見学してみようと思っています。今回の白神祭でもかなり人気の場所で、抽選の倍率も相当でした。皆さんに関しては、入れるようにこちらで手配しておきました」

「なるほど、シャローヴァナル様への祈りというわけか……それは是非行いたいのだが、スカイ殿。自分はあまり正しい祈りの作法などを知らないのだが……」

「安心してください、それほど難しいものではないので必要であれば私が指導します」

礼拝堂は事前に人気があるだろうと話を聞いていた場所で、シロさんの膝元と言っていい神界……神域に近い場所で祈りを捧げられる貴重な機会ということで、敬虔な信者を中心に申し込みは殺到したらしい。

そんな礼拝堂に行けると聞いてテンションを上げたのはアニマだった。というのも、実はアニマは結構しっかりとシロさんを信仰している。

月に一度人界にある神殿に足を運んでいるほどであり、あまり正しい作法を知らないとは言っていたが、実際は俺たちの中で一番詳しいレベルだと思う。

まぁ、アニマにとってシロさんは己を生まれ変わらせてくれた相手なわけだし、信仰する気持ちもわかる。表には出していなかったものの、以前の海水浴でも結構緊張していたらしい。

……まぁ、実際アニマ以外でシロさんを近くで見たことがあるのは、ジークさんとリリアさんぐらいだろうか?

俺がよく会っているので勘違いをしそうになるが、世界の頂点であるシロさんに会う機会は、普通の人は一生に一度すらないというレベルなのだろう。