軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

45 騎士団長はただ静かに暮らしたい

目が覚めるとそこにはエリーの優しい笑顔があった。

「おはよ、ウォーレナ」

「……終わったのか?」

「うん。全部、おわったよ」

「相変わらず滅茶苦茶な強さだよね、さすがお館様の加護」

どうやらエリーの膝の上に頭を横たえているようだが、エリーも、隣で苦笑いしているライザも服がずいぶんはだけてボロボロになってしまっている。

あわてて起き上がり二人に向き合う。二人は胸元を押さえ、恥ずかしそうに目をそらす。

「二人も随分やられたのか? 大丈夫か?」

「私たち? ううん、ほとんど無傷だけれど……あ、この服を見て言ったの? ……本気?」

エリーがいぶかし気に問いかけてくる。

「ああ、えと、どういうこと? あ、もしかしてその……」

「さすが二回目ともなると気づくわよね。そう、あなたにやられました」

「ホント、ご主人様ったら強引で、全然言うこと聞いてくれなくって」

ライザも泣きそうな表情で言い募る。

「え!? なに? 俺まずいこともしちゃった?」

「私たち、ずっとやめてって言ってたのに……何度も、何度も……ひどい」

エリーはそういってうつむく。

「え、本当か? あの、えと、すまん、いや何と言ったらいいのか」

そこで我慢できないといった様子で二人が吹き出す。

「あっははは! ご主人様騙され過ぎ!」

「大丈夫、今回も未遂よ。私たちの服をこんな風にしてすぐに気絶しちゃったわ」

「こんな時にもヘタレなんだよねぇ」

「ねー」

そしてエリーとライザが笑いあう。

「お前らな……」

でもよかった。今回もなんとか最悪の状況にエリーを追い込むことにならずに済んだ。

「起きたか、主よ」

クロエがやってきたところでようやく気付いたのだが、屋根がない。壁も一面吹き飛んでいる。これはいったい……。

「ああ、この壁とかか? お主が帝国兵何人かもろとも壁を吹き飛ばして、我が屋根を殴り飛ばした」

屋根というか……この部屋から上の構造物すべてを、ってことだよな? 三フロアくらいなかったか? 殴り飛ばした? クロエ、こえー。

「そ、そうだパトリック」

「ああ、あの小童のことか。もちろんすり潰したぞ。ほれ、玉座に張り付いておるじゃろ」

クロエが親指で指した先。パトリックは謁見の間の玉座に、文字通り張り付いてこと切れていた。胸には深々とドラゴンスレイヤーが。すでに怪しげな雰囲気は霧散し、ただの古めかしい剣然としている。

パトリック。野望を持って様々な策謀を繰り広げたこの男の命運もここで尽きたらしい。しかしこんな大それた事件。たった一人の欲望だけが原因なのだろうか。

「最後、どうなったんだ?」

「どうなったもないわ。あの小童が『守護する国はもうない』とはっきり言った段階で 制約(縛りプレイ) は解放。我の突きで玉座までふっ飛んで行ったから、傍らに落ちていた 忘れ物(ドラゴンスレイヤー) を返してやっただけよ」

後は天井方向に残党の気配を探知したので建物ごと吹き飛ばした、と。相変わらずだ。

「まったく、我を倒して称号を得るなどと大言壮語を吐きおって。まさか一撃で沈むとは。武器だけ良くてもなんともならぬな。期待して損したわ」

クロエはそう軽口を叩くものの、攻撃ができず俺を待つだけの間は大変だったとおもう。おそらく自身だけ逃れようと思えば逃れられただろう。けれど俺たちのことを考え危険な囮となってくれた。

「ありがとうな、クロエ」

「ん? 何のことかわからんが? でもまあ恩を感じておるのなら、また共に風呂に入ろうぞ。今度は素面でな? ほれ、おっぱいも好きなだけ揉ませてやるぞ」

などとニヤつき自らの胸を抱えて揺らす。どこまでもクロエはクロエだった。

「なんでそうなるんだよ、ったく。とりあえず生き残っている王国の連中を探そう。まずは地下牢から……っとその前に、まずは二人の着替えを探そうか」

地下牢には相当な人数が収容されていた。

多くはパトリックに逆らった議員と貴族たち。そして北鷹騎士団の見知った顔もあった。

現在の団長、ギルバートは最後まで騎士団を率いて抵抗を続けていたようだが、最後に副長のソニアの裏切りにより瓦解、全員捕らえられ収容されたようだった。

そして奥の牢の一室では、タリン姫の変わり果てた骸が放置されていた。

王族は帝国軍が入城してしばらくの後、赤子まで係累ことごとく処刑されたらしい。

逆に恭順を示した議員たちはというと、これらも王族とおなじく処刑されたとのこと。

「簡単に寝返る奴なぞ信頼に値せぬものなあ」

クロエがのんびりと冷たく言い放つ。

我が王国は名実ともにその後継を永遠に失ってしまったのだ。