軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11 古竜さんとスローライフの危機

さしものミミも竜は見慣れないのか顔色を失くしている。ただ恐慌にはいたらず相手の出方をうかがっているのはさすがというべきか。

「ねえ兄さん。この竜って……」

エリーが問いかけたその時、近くの木にとまっていたコウモリが一斉に飛び出した。ちょうどねぐらに帰る時間だったのか自分たちより遥かに大きな生物の登場に驚いたのか、理由はわからない。だが群れは次から次へと竜の顔をかすめ飛んでいく。

突然のことで竜は驚いたのか、前足をばたつかせながら乱暴に着地した。周辺の木やらなにやらをなぎ倒し、乱暴に踏みつぶす。たまらずといったメグの悲鳴。バランスを崩しながらもなんとか着地したところで安堵からか一息大きく息を吐き出す。その後二度三度ゆっくりと羽ばたいたあと翼をたたんだ。

「おいおい……」

余りの出来事に言葉が出てこない。こいつ……突然やってきてなんなんだ。

「いや驚いたぞコウモリどもめ。ここでなければ追いかけて焼き払うところじゃった」

忌々し気に空をみる竜。しかも古竜と呼ばれる最上位種族。そんな竜が再びこちらに視線を向けると口を開く。

「さて……久方ぶり、とでも言えばいいか。我が 主(あるじ) よ」

「ああ。元気そうでなによりだ……クロエ」

途端に周囲に驚きの声が響き渡る。

「お師匠! こんなでっかい竜の主なの!?」

ビル、お前いろいろ失礼。

「うっそダンくんすっごーい! ドラゴンライダーなんだ!? これもう完璧超人過ぎるでしょ、やば……マジむり……」

ミミ。この竜には危なすぎて乗らないけれど、ドラゴンライダーってのは正解だ。

「主の魔力を辿ってここまで来たが、聞いたぞ。軍を辞したそうじゃな……今はこの地で暮らしておるのか」

「ああ、そうなんだが先ほど 少(・) し(・) 事情が変わった」

「ふむ。その事情とやらはさておき、主はどちらにお住まいなのか? 先ほどから周りを見まわしているのだがそれらしき建物が見当たらぬ。おおそうか、賊避けに隠ぺいでもしておるのか? なるほど物騒じゃからな」

事情とやらをさておくな。目下俺にとっちゃ一番の関心事だ。

「ああ。 お(・) 前(・) の(・) 足(・) の(・) 下(・) だ」

「む? どういうことじゃ?」

「さっきお前が踏みつぶした」

「何をじゃ」

「俺たちの家」

「……それはまことか」

「残念ながら、な」

「あー、それはー、なんというかー、そのー……すまぬ」

家の中に誰も居なくて本当に良かった。

目の前にはみんなの視線を一身に受けた、小柄な少女がちんまりと切り株に座っている。身長がメグにも満たないその子はおもちゃのお姫様のようなフリフリのドレスを身にまとい、頭から足先までだいたい黄色と黒で彩られている……先ほどの古竜がヒトに変身した姿だ。

「ホントにすまなんだ! ……地面近くが暗くて足元がよう見えなんだのじゃ」

しょんぼりと先ほどの竜――クロエが頭を下げる。

「え? は? ホントにこの子が、さっきの竜?」

ビルは信じられない様子で彼女に指をさして尋ねてくる。まったく失礼なやつだ。

「じゃからさっきからそう言うておる。それより 童(わっぱ) 、控えよ。我は南天の古竜、クロエであるぞ」

「えっ、神話に出てくる四天竜の!? 作り話ではなかったんですね……これは恐れ多い」

今度はメグが驚きの声を上げた。こちらは畏敬の念を込めた物言いだ。クロエはそのちいさな鼻の下に指をあてがい満足げな様子だ。

「だがいまは俺ん家を踏みつぶした極悪竜だ。そうだよなクロエ?」

そのままクロエにデコピンを食らわす。ふぎゃ、と一声鳴いておでこを押さえる様子からは、

よもや四天の一柱を預かる伝説級の竜とは想像もできないだろう。

「んなぁ主よ。わざとじゃないんじゃ。ほれ、この通りじゃ、許してたも」

「まあ説教は後だ。まずは今夜の寝床づくりだな。がれきから冒険用の道具をとりだそう。使えればいいんだが」

その後なんとか冒険で使うテントなどを無事に引っ張り出すことができたので、今日は自分の敷地内でキャンプと相成った。双子はあまりない体験でそれなりに楽しんでいるようだ。

「ウチは別に外でもいいけどね。あの木の上とか……あ」

ミミは庭の大きな木を指差してあっけらかんと言う。やはり彼女たちはたくましい。が、その直後慌てて言い直す。

「や、でもぉ、外だとやっぱり一人で寝るの怖いからぁ~。ウチ、ダンくんと一緒に寝る~」

「はいはい、ミミは私と一緒に寝ましょうね~」

えー、なんでぇー? などと抗議の声を上げるミミを尻目に淡々と段取りを決めるエリー。なんだか……

「母親っぽい……とか思ってないわよね、兄さん?」

エリーってば、最近読心スキルでも獲得したんだろうか。

結局バーベキューはできず、使える食材でスープを作るのがせいぜいだった。まぁ家がまるまる破壊される事故があったのだから仕方ない。クロエには後できっちり落とし前をつけさせよう。

夜も更け、焚き火の周りにはエリーとクロエだけが残った。双子とミミは早々にテントに潜り込んで今はぐっすり夢の中だ。クロエの登場で随分興奮していたようだったからな。

「主……いやダンよ。なぜ軍を辞したのじゃ」

おそらく一番聞きたいことなんだろう。クロエが装飾なしに聞いてくる。

「あー、浮気されたからさ。ガキもいるんだと。んでお前は邪魔だってクビになった」

だから俺も誇張なしに事実のみを伝える。

「なんとまぁ、それは業腹な。なら我が明日にでも王城を焼いてきてやろう。それかあの小娘をさらって血祭りにあげればよいかの?」

ちょっとまって? なんで俺の知り合い、こうも好戦的なの?