軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第27話 世界樹酒だよ

そういえば久々に、モッコロが来た。

モッコロは人間姿の俺に驚くと、感動のあまり飛び跳ねて、俺の手をきつく握ってきた。

「おお! これがセカイ様の本当のお姿なのですね……!? なんとも神々しい……! 今後とも、よろしくお願いします!」

「あ、ああ……こっちこそ、よろしくな」

モッコロには、野菜や、酒を売りつけた。

そして代わりに、香辛料などを売ってもらう。

ゴブリン酒にエルフ酒、売れるものはたくさんある。

人間たちも珍しい酒が飲めるということで、大人気らしい。

「そういえば、世界樹酒を造ったんだ」

「世界樹酒……ですか」

俺の幹からわずかにとれる、世界樹のしずく。

それから、世界樹の葉、それらをつかって、世界樹酒というものを、街をあげて開発した。

これが非常に美味く、疲れもとれるということで、すでに街では大人気だった。

「ふむ……たしかにこれは美味しいですね。これは売れそうです」

「だろ?」

モッコロは、世界樹酒にかなりの高額な値をつけた。

このとき、俺たちはまだ知らなかった。

世界樹酒に、とんでもない効能があることを……。

モッコロが街に帰り、酒を商店に並べると、すぐに世界樹酒は売れていった。

世界樹酒を買ったのは、とある町娘だった。

彼女の名は、シーナ。

シーナには、病気の父がいた。

父、エドワードは、不治の病にかかっている。

そのせいで、もはや外を歩けないほど弱っていた。

身体も苦しく、一日中ベッドで寝ているしかない生活。

なにも楽しみもなく、生きる希望もなかった。

エドワードは、病気になる前から、とんでもない大酒飲みだった。

酒が唯一の楽しみというほどの、酒豪だった。

しかし、病気になってからは、医者に酒をとめらていた。

だが、最近、死期が近づいていることが、はた目にもわかるほど、彼は弱っていた。

すると、どうせ死ぬのだからと、自暴自棄になり、エドワードはまた酒を飲みだした。

ベッドで寝ているしかない身体だ。

もはや酒を浴びることくらいしか、楽しみがなかった。

シーナは最初こそ、酒を飲むのを止めようとしたが、あまりにもエドワードが不憫なので、もう言うのをやめにした。

どうせ治らない病なら、最後くらい、好きに酒を飲ませてやろうと思ったのだ。

エドワードを不憫に思ったシーナは、せめて最後に好きなだけ酒を飲ませてやろうと思って、せっかくだから、珍しい酒でもと思い、いろんな酒を買って帰るようになった。

モッコロの店は、最近いろんな珍しい酒をとりあつかい始めた。

ゴブリン酒やエルフ酒、それらを買ってかえると、エドワードはとても喜んだ。

そんなある日、世界樹酒というとても珍しい、聴いたこともないような酒を見つけたのだ。

すこし値は張るが、せっかくなのでと、シーナはそれを買って帰った。

「お父さん、これは世界樹酒ですって。ちょっと高かったのだけれど、きっと美味しいはずだわ」

「おお、シーナ。ありがとうな」

エドワードはどんな酒なのかと、わくわくしながら、それを口にした。

すると、みるみるうちに元気が湧いてくるではないか!

エドワードの弱った体に、力が湧いてくる。

そして、一口、また一口と飲んでいくと、どんどんと病状がよくなっていった。

「な、なんだこれは……!?」

「どうしたの!? お父さん!?」

「すごいぞこれは……! なんだか元気になった気がする……!」

そういうと、エドワードはおもむろに立ち上がった。

そしてこれ見よがしに、上腕二頭筋を隆起させる。

「お父さん、そんな、立ち上がって大丈夫なの……!?」

「ああ、なんだかすっかり元気になった気がするぞ!」

それから、不思議に思った二人は、医者にもう一度みてもらうことにした。

すると、医者は思いがけないことを口にした。

「あ、ありえません……! 完治しています……!」

「ええ……!?」

なんと、エドワードの病気はすっかり消え去っていたのだ。

二人は顔を見合わせた。

「すごいぞ! あの酒のおかげだ!」

「どういうことなの……!?」

「ありがとうな、シーナ! おまえのおかげだ……!」

「でも、ほんとうによかったわ。お父さん」

それから、シーナはこのことを、モッコロに伝えた。

「えぇ……!? それは本当ですか!? お客さん!」

モッコロは、これはおそらく、世界樹の効果なのだろうと思った。

世界樹の実には、人の体力を回復させたり、モンスターを進化させる効能があった。

なら、世界樹のしずくにも、なにか効果があってもおかしくないはずだ。

なるほど、世界樹のしずくには、病気を治す効果があるのか、とモッコロは納得した。

「これはとんでもないことになったぞ……」

さすがに、このまま世界樹の酒を売ることはできないと判断したモッコロは、一度販売をとりやめた。

そして今度は、一度セカイに相談をしようと思い、街へとやってきた。

「……と、いうことなんですが……。どうしましょうか……?」

「どうって、別にいいんじゃないのか? 病気が治るなら、それで」

「このまま売り続けてもいいですかね?」

「うん、俺は気にしないよ」

「わかりました。ありがとうございます」

ということで、モッコロは世界樹の酒を大々的に売り出すことにした。

ただし、その値段はそれなりに高く設定しておいた。

病気が治る万能の酒ということで、それは飛ぶように売れた。

そしてなんと、傷口や体力を回復する効能もあり、冒険者たちにもポーション代わりに売れた。

上級回復ポーションよりも値は張るが、かなりの深い傷も治るということで、重宝された。

街中の人は、病気が治って、あちこちで喜びの声があがった。

中には、貴族まで買いに来ていたようだ。

それに普通に酒として飲んでも、絶品だということで、あっというまに世界樹酒は大人気になった。

この世界樹酒がのちに、エリクサーと呼ばれ伝説になるのは、また別の話である――。