軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第79話 ノマーニの帰還

翌日。

ノマーニは戻ってきた。

「……一族の中には、商売で成功したため移住しない者もいます。そこに預けてきました」

ノマーニが、エドワードと仲間にそう報告した。

エドワードは、一睡もしてない様子のノマーニを見て言う。

「シルヴィア様は、昨日こうおっしゃった。『見張り探るような真似をしなくても、勝手に住まわせることはない。そのような者たちではない』と。――なので、俺も他の皆も、お前を信頼することにする」

ノマーニは絶句した。

そして、深く頭を下げる。

「もちろん、その信頼に応え、もしもまたアレが現れるようでしたら、手ずから落とし前をつけさせます」

エドワードは苦笑する。

「禍根を残したくないし、後味の悪い思いもさせたくないので、無断で侵入しようとしたら追い出すだけでいいけどな。それだけは徹底してくれ」

「はっ!」

ノマーニは短く返事をした。

……マリアーノは、結局のところ甘ったれたいのだ。ノマーニはそう思い返す。

幼少期から忙しく働いていた両親に構ってほしい。

親が裏稼業をやっていたせいで肩身の狭い思いをしていたことをわかってほしい。

皆に自慢出来るような職業に就いてほしい。

一族の長と言いながら周囲にへりくだってるのがわからない。

長ならもっと威張りちらしてほしいし自分も長の息子として威張りちらしたい。

長だからと仲間ばかりに関心を向けていないで、自分に関心を向けてほしい。

そういう思いがあるのがわかっていた。

だが、わかっていてもノマーニは、長という立場と暮らしぶりからマリアーノを甘やかすことはできない。特に妻が甘やかしているのなら、より厳しくしなければ、いつかきっと犯罪を行う。

仕えてきた主君の子息がまさしくそうだったからだ。

司法官長に目をつけられるくらいに美しかったが、ゆえに両親から溺愛され、そのまま育っていたら先が思いやられるとノマーニは考えていた。

それに、自分たちよりひどい境遇の者などいくらでもいる。

実際、自分が打算で助けたベッファだってそうだ。

マリアーノだってベッファの境遇を知っている。あれと比べたら、文句など出るわけがないはずなのだが……。

そう考えながら、ノマーニは重いため息をついた。

ノマーニは、妻は息子と住むかと思っていた。

マリアーノは十四歳、一つ上のジーナは侍女頭としてシルヴィアについているし、ベッファも十歳のときにはすでに働いていた。もっと幼いシルヴィアも、立派に城主として働いている。もちろん、他の一族の息子娘も親の手伝いや他の店で働いたりしていた。

なのに、息子はいまだに親のすねをかじりながら文句ばかりで何もしないでいるのが情けなかった。

妻はきっとマリアーノを甘やかして、マリアーノが「今のところでは働きたくない」と言って辞めてしまえば、それ以上働けとは言わず養おうとするだろう。だが、ノマーニと二人で働いてもカツカツだったのだから、より極貧になる。わがまま者のマリアーノがそれに耐えられるわけがない。

仕送りはするつもりだが、マリアーノも働かねばやっていけない程度にする予定だった。

てっきりそう考えていたのだが、妻は息子を預けることに賛成し、ノマーニについてきた。

「……私が一緒にいると、ダメになりますから。あの子はきっと、やればできる子です。なのに私といたら、ずっと貧乏暮らしのまま、文句を言うだけの子になってしまいます」

悲しげに言う妻の言葉を、ノマーニも否定できない。というか、その通りの未来になるだろう。

自立して、生活する大変さを知り、己の発言を反省してほしい、もしも反省できたなら、長としての教育を始めよう――そう考えた。

ノマーニたちナルチーゾ族の受け入れも完了した。

マリアーノ以外にはシルヴィアの魔術を受け入れない者は出なかった。

以前の場所から追い出され裏稼業で日銭を稼いでいたのに、住み処を与えられ『騎士団』という肩書きを得られたのだ。本来なら文句など出るはずがない。

文句を言いそうな者は、はじめから連れてこなかった。

「俺たちを迎え入れてくれた主君に対して不満や文句があるのなら、主君や上司の前に俺が受け入れない。主君の手をわずらわす前に、ここで袂を分かつ」

そう言い切り、金を渡して置いてきた者もいた。

受け入れられた者たちは、シルヴィアに感謝している。

いろいろと破格の条件なのだ。

「シルヴィア様! 貝がたくさん採れましたから持っていってください!」

「菜っ葉もありますよ!」

「そこの木になっていたベリーです。ぜひ食べてくださいね!」

シルヴィアが牛車で巡回すると、移住したナルチーゾ族が続々と出てきて声をかけ、収穫物を渡す。

「ん!」

ジーナは、「シルヴィア様は愛されていますね!」と、ニコニコだ。

エドワードを団長にした騎士団もうまくいっている。

仕事内容は、『騎士団というよりもちょっと立派な警備隊』といった感じなのだが、制服は公爵家の騎士団のアレンジなので非常に格好いい。

支給され、着用したときは、

「なんかこう……心が躍りますね」

と、皆がつぶやいた。

さらに、護衛の三人は特別になっている。

ジーナいわく、

「シルヴィア様の護衛だとひと目でわかるようにです!」

と、いうことだった。

もちろん、エドワードの制服は輪をかけて特別仕様だ。

元服飾工房で頭を張っていたジーナとしては、服に関しては妥協しない。

エドワードも含めた騎士団全員が、「わりとどうでもいい」と思っているところまでこだわりぬいた。