軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第60話 雇った使用人たち

雇った上級使用人は、非常に有能だった。

さすが専門職、しかも侯爵家紹介なだけある。

全員が隣国もこの国の言葉も両方話せるのも素晴らしい。

雇った中で、一番有能なのがベッファだった。

カロージェロの下に付き、さまざまなことをこなしているが、さすがに忠義の篤い一族の男。忠誠を誓った主のため、役立つようにこまやかに気を利かせて動く。

情報を集めるのも得意らしく、

「隣国はもちろん、ご要望をいただければこちらの国も容易に集められますよ。そのように鍛えられておりますので!」

と言っていた。

有能すぎて、エドワードは逆に心配になった。

「……オノフリオ侯爵とお前の家族、お前を取り返しにくるんじゃないか? どう考えても、家令候補の兄貴よりお前の方が有能だろ。俺もやってるからわかるが、情報を集めるのって結構大変なんだぞ? こっちの国のも集められるってことは、ルートがあるんだろ?」

「ははは。エドワードさんに評価されるとうれしいですね! あと、大変さを認めてくださりありがとうございます! そうなんですよ、築き上げるのに結構苦労しました。そしてこのルートは、私独自のもので一族も侯爵家もいっさい使っていませんのでご安心ください!」

「ますます安心できないだろ。お前がいなくなったら情報が取れないってことじゃねーか。そのうち困った事態になって、難癖つけて『返せ』って言ってくるぞ」

エドワードが心配したが、ベッファは軽く手を横に振る。

「オノフリオ侯爵の推薦でこちらで働くように言われたのですから、取り返しにくるのは無理でしょう。そもそも、エドワードさんほど私を買ってくださってないからこそ、こちらに送ったのですし。万が一言ってきても無視をすればいいのです。私は、生涯雇用していただくことになりましたから! もしも家族が何か言ってきても、魔術で縛られている、と、そう言って追い払いますよ」

確かに、魔術で縛られているのでどうにもならないのだが……。

ただあの契約魔術って罰則がなくて、単にシルヴィア様が呼ぶ声が聴こえるだけなんだけどね。いや、俺にとっちゃかなりの罰則だったけど……あ、コイツにもそうかも。シルヴィア様に呼ばれたらすぐ飛んでいきそう……と、エドワードは考えた。

それでもエドワードは念のため、

「……それでも、念には念を入れて、家族の動向を探っておいた方がいい。俺もそうしている。血の繋がりなんて、父親の面子の前には儚いもんだ。忠誠心篤いお前の父親が、お前の忠誠心がシルヴィア様に向いたってことを知ったら、面子を潰されたってんでお前を連れ戻しにかかるか、最悪の場合、お前を処分しにかかるぞ」

と忠告した。

真剣なエドワードの顔を見たベッファは驚いた後、苦笑した。

「……確かに、迷惑をかけるわけにはいきませんね。一応探っておきます」

と、答えた。

さらに、エドワードはオノフリオ侯爵へ手紙を書いて送った。

『送ってくれた候補者は全員採用させていただいた。皆、非常に優れた働きをしてくれて、特に働きのめざましい者には生涯雇用を契約してもらった。これは、魔術契約なので覆せないのだが、快く契約してくれた。オノフリオ侯爵には感謝の念が絶えない。これからも友好な関係を築いていきたいと願う』

これでどこまで察してくれるかわからないが、送られた者は全員戻らないってことだけはわかってもらえただろう。

上級使用人の働きにより、ぐっと貴族らしさが出てきたところでエドワードは家庭教師として送られてくる侯爵令嬢への対策を考えることにした。

まさか、家庭教師に【支配】をかけるわけにはいかない。

使用人も領民でもない、『客人』の扱いになるからだ。

侯爵令嬢ならなおさらだった。

まず、シルヴィアに部屋を改装してもらうために相談する。

「客室は、エントランスに近いここですね。侯爵令嬢が間者の真似事をするとは思いませんが、侍女などの従者に間者が紛れ込んでいるかもしれません。そして、侍女も教育係の一人、かつ侯爵令嬢のお世話もあります。……城塞内での立ち入り区域に制限をかけたいですが……」

エドワードが悩むと、シルヴィアのそばで聞いていたジーナが案を出す。

「使用人は増えましたし、いらっしゃった侯爵令嬢に新しく来た上級使用人の方をつければいいんじゃないですか?」

実は、今回雇った中に上級侍女が二人ほどいたので、その女性たちにジーナが教わるということで、侍女の教育に関しては問題をクリアしてしまったのだ。

現在は、その侍女二人、ダフネとロミーと、元からいるジーナとエンマがシルヴィア付きの侍女となっている。

二人ともさすがに優秀で、ジーナもエンマも学ぶところが多かった。

しかも、ちゃんとジーナとエンマを立てている。

エドワードは演技かと考えたが、カロージェロが何も言わないので本心からなのだろう。

カロージェロもしばらく使用人たちの動きを見ていたが、特に問題はないと判断した。むしろ、カバーしてくれる者が増え、非常に楽になった。