軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第57話 上級使用人を雇う

上級使用人の候補が訪れた。

さすがはオノフリオ侯爵の推薦だけあり、皆、礼儀正しく振る舞いも問題がない。

まずはカロージェロが自己紹介をする。

「オノフリオ侯爵の紹介とはいえ、さまざまな事情を抱えている方はいらっしゃると思います。私は神官長でもありますので、もしよければこれを機に懺悔をし、贖罪なさってください」

しょっぱなからとんでもないことを言われ、候補者は面食らうか顔を見合わせる。

カロージェロは戸惑う候補者に、さらに追撃をかました。

「そして、この城塞の城主であるシルヴィア様は、非常に素晴らしい方です。彼女に忠誠を誓ってください。神の次にシルヴィア様を崇めましょう」

候補者は、ドン引きした。

エドワードは『何言ってんだコイツ?』と内心でツッコんでいるが、にこやかにしていて顔にいっさい出さない。

上級使用人ともなれば、主人と接する機会が非常に多くなる。カロージェロほどの極振りではないにしろ、敬う心を持ち合わせてくれないと困るのだ。

それに、カロージェロのあの口ぶりからすると、候補者たちに釘を刺している様子だ。

……ということは、問題視するほどの犯罪歴は見つからなかったがグレーゾーンの奴がいるな、とエドワードは考え、笑顔で伝えた。

「これから、シルヴィア様と面会していただきます。シルヴィア様は幼いながらも非常に鋭敏な方でいらっしゃいます。もしも、シルヴィア様が『ノー』と言った場合、それはシルヴィア様への忠誠心の足りなさ、あるいはシルヴィア様を不敬にも侮っているから、その心をシルヴィア様に見透かされたのです。……オノフリオ侯爵の紹介ですので事を荒だてるような真似はしませんが、そのような方は雇用できません。先にお断りしておきます」

エドワードの言葉を聞いた候補者が引き締まった。背筋を伸ばし、キリッと顔を引き締め、エドワードについて執務室へ向かう。

扉を開け、候補者を中に入れる。

シルヴィアは奥にある執務机に着いていた。

重々しい雰囲気を出そうとしてか机に肘を置き手を組み口元に持っていっているのだが、いかんせんシルヴィアがやっても幼女が背伸びをして格好つけてるだけにしか見えない。

ジーナがそばに静かに控えているが、笑いをこらえるのにそうとう無理をしているだろう。

エドワードは、ある意味かなりの試練だよな、と思いながらシルヴィアのところへ歩き、やや前方、机の横に控えた。カロージェロは反対側につく。

さらには候補者が暴れたときのために、警護の者を臨時で雇って数人ドア付近に立ってもらっていた。

シルヴィアが、手を組むのをやめて、机に置いてある紙を引き寄せた。

「わたしにつかえることをきぼうするものときいた。そのきもちはほんとうか?」

読み上げたのが丸わかりの棒読みだった。

試練、試練だな。

などと考えながらエドワードは真面目な顔を作り、必死で笑いをこらえる。

ジーナも耐えているが、どちらかというと失敗しないかハラハラしているようだ。

候補者たちも、この試練に打ち勝っているようだ。

真面目な顔で「はい」と返事をしている。

シルヴィアは顔を上げて無感情で候補者たちを見た。

候補者たちは、むしろこのシルヴィアの、なんの感情も乗っていない空っぽの眼差しを見て感情を動かしたようだった。多少のたじろぎを感じているらしい。

シルヴィアが椅子から降りようとしたので、すかさずジーナが椅子を引き、エドワードが手助けをする。

机の前に立つと、シルヴィアが唇を開いた。

「『私が城主で、あなたがたの主です、【 支配(ドミナント) 】』」

ステッキをトン、と叩くと魔術が広がった。

とたんに、候補者たちはシルヴィアに膝をついた。

エドワードは、これはイケたな、これだけの反応をすることは今までなかったし、と考えたのだが、

「えーと、はしの人はダメです、私に仕えるのをいやがってます」

と、シルヴィアが左端の候補者を指さした。

エドワードもジーナも驚いた。

全員が、ほぼ同時に膝をついたのだ。

なのに、魔術を拒んだって?

左端の候補者も驚いたのだろう。弾けるように顔を上げた。シルヴィアを見つめたが、シルヴィアは相変わらず感情のない瞳で候補者を見つめていた。

エドワードがカロージェロに視線を送ると、カロージェロが微かにうなずく。

……どうやら、グレーなのは奴だったか、とわかった。

それも見えていたらしい左端の候補者は、諦めたようにうつむいた。