軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

16話 メイヤーとの会談

翌日。

三人は身だしなみを整え、メイヤーの屋敷に向かった。

メイヤーは世襲制で、役所イコールメイヤーの屋敷ということだった。

エドワードが門の前に立つ衛兵に用件を告げると衛兵は驚き、飛んでいって確認する。

「よ、ようこそいらっしゃいでした! メイヤーがお会いするってことでございます!」

いろいろ間違っている敬語で衛兵が敬礼しつつ案内した。

メイヤーの屋敷は、この町では絢爛なほうだが他の栄えている町と比べればさほどでもなかった。というか、平均で言うと質素の部類に入るだろう。

使い込みを疑っていたエドワードは内心で首をかしげる。

――と、メイヤーらしき初老の男性がやってきた。

「お待ちしておりました!」

開口一番、感激したように言われ、三人が(何を?)と一致して考えた。

エドワードは気を取り直し、メイヤーと挨拶を交わしてシルヴィアを紹介する。

「我が主君であり、この度公爵家当主より城塞の城主となったシルヴィア・ヒューズ様です。――長年手つかずだった城塞の管理をシルヴィア様がされることになりましたので、今後はこの城塞都市もシルヴィア様の管轄になります。つきましては、メイヤーの協力の下、現在の状況の把握をしたいと思いまして本日は訪問しました」

シルヴィアは軽くうなずく。

――前もってエドワードに、

「シルヴィア様は、しゃべらないようにしてください。偉そうに見えるコツは、黙ってうなずくか、黙って首を横に振るか、です。交渉は私が行いますので、できるだけ背筋を伸ばして、顎を引いて、軽くうなずく、嫌なら首を横に振る、それだけを心がけてください」

と繰り返し説教されていたからだ。

違うことをするとエドワードが怖いので、シルヴィアは黙っていうことを聞いている。

メイヤーはソファを勧めると、ホッとしたような声で話し出した。

「いやぁ、本当に助かりました。いえ、ここの成り立ちを考えると仕方がないとは思いますが、それでも私たちは暮らしていますし、本当に離島のような状態で、このままですと隣国に助けを求めなくてはいけないかもと考えておりました。いやはや、忘れ去られていたわけではないようで、安心しました」

初っぱなから不穏なワードをぶちかますメイヤーに、エドワードは内心冷や汗をかく。ジーナもすました顔で控えているが、心にはハテナがたくさん浮かんでいた。

エドワードは思案の後、メイヤーに軽く頭を下げる。

「……大変申し訳ありません。実は、シルヴィア様も私も、侍女のジーナも、詳細を聞かされていないのです。公爵家当主から『城塞の城主に任命』との証書はありますがそれ以外の具体的な指示はなかったため、特に問題はないと判断していたのですが……」

事実を絡めた嘘八百を並べ、相手の反応を窺った。

メイヤーは啞然としていた。

「……歴代のメイヤー、もちろん私もですが、公爵家に嘆願の手紙を出しております。設備の老朽化……特に外濠の川を渡る橋が朽ちて流れて以降行き来が困難になり、ここは半ば孤島と化しているのです。大昔は徴税の役人が訪れていたということですが、毎回修繕の必要性を訴えていたせいなのか、いつしか現れなくなったということでした。仕方なく、修繕出来るところは歴代のメイヤー判断で修繕させていただきましたが……橋となると専門の建築技師が必要です。他にも外壁が朽ちて危険だったり、水路も壊れている箇所があったりと、大がかりな修繕を必要とする箇所がいくつもあるのです。毎年毎年それらを手紙に書いて送っていたのですが……」

エドワードは天を仰ぎそうになるのを必死で抑えた。

金を納めさせようと思ったが、むしろ金が必要だと言われたようなものだ。

さてどうするか、とエドワードが考え始めたとき。

「――ここに住むひとたち、全員がそれをのぞんでいますか」

シルヴィアがメイヤーに尋ねた。

エドワードは慌てたが、シルヴィアはメイヤーをまっすぐ見つめている。

メイヤーはシルヴィアが話したことにちょっと驚いたが、シルヴィアに力強くうなずいた。

「もちろんです」

「では、全員をあつめてください。みんなです。のぞむのなら、なおします。でも、それは、私を城主だとみとめたひとにです」

エドワードは、シルヴィアが何をする気なのかわかった。

城塞都市の住民すべてを支配し、そこから得る魔力で直す気だ。

……だが、大丈夫なのか?

「……シルヴィア様。危険では?」

そっとエドワードが尋ねると、シルヴィアがエドワードを見た。

「私は、城主になりました。なら、ジーナとエドワードだけにみとめられているだけじゃだめだとおもいました」

「その志は立派なのですが……」

シルヴィアの魔術は未知の魔術だ。

しかも、シルヴィア自身、幼い。

幼子がそのような大規模な魔術を使って大丈夫なのか? とエドワードは心配した。

ジーナにおいてはポーカーフェイスが完全に崩れてハラハラして見守っている。

二人とも、シルヴィアが倒れたのを目の当たりにしている。やらせたくない、と思っているが、シルヴィアは決めたようだ。

「あつめてください」

再度メイヤーを促し、メイヤーはうなずいた。

「わかりました。一週間後、全員を広場に集めます」