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世の中「○○協会」が多すぎだよなwww

作者: エタメタノール

本文

「よぉ、コーちゃん!」

挨拶とともに、 川村(かわむら) 融也(ゆうや) がやってきた。

俺の目の前に座る。

「おお、ユーヤ」

俺は笑顔で応じる。

ここは街角の喫茶店。

この俺、 山里(やまざと) 幸二(こうじ) とユーヤは小学校の頃からの幼馴染で、お互いに今は社会人一年目。会社は違うが、今でも休みの日にはこうしてちょくちょく会う仲だ。

できれば一生の友達であり続けていたいと思ってる。

俺もユーヤもブレンドコーヒーを注文し、雑談を交わす。

話題なんてなんでもいい。会社のこと、昔のこと、恋愛話、俺たち以外の連中の近況、最近のニュース、スポーツの結果、天気の話……どんな話題でも楽しめる関係性が俺らの間にはできてるからな。

俺はふと、スマホでニュースを見る。

すると、話のタネにちょうどよさそうなのがあった。

「なんだこりゃ。『日本ジェントルマン協会』の会長が、女性にセクハラ行為をして解任だってよ」

「ジェントルマンがセクハラって終わってるね」

ユーヤも苦笑いする。

「ああ、この協会、これから先活動なんてできるのかねえ?」

「『日本セクハラ協会』としてやっていくんじゃないの」

「そりゃいいや」

ユーヤの考えた新しい協会に、ハッハッハと笑い合う。

それにしても、と思う。

「世の中『○○協会』が多すぎだよな」

「それは思う」

「たとえば色んな競技には、大抵何とか協会って元締めみたいな組織があるし」

「職業なんかにも協会があったりするよね」

「今俺らはこうして喫茶店でコーヒー飲んでるわけだけど、喫茶店に関する協会やコーヒーに関する協会もあるだろうしなぁ」

「どうしてこんなに多いんだろうね?」

「うーん……」

俺は自分なりに考えてみる。

「まあ、やっぱり同じことをやってる者同士、集まった方が助け合えるし、巨大な力になるってのはあるんじゃないか?」

「それはそうだね。単独で活動するより、寄り集まった方がいいに決まってる」

「その分しがらみなんかもあるんだろうけどさ」

「ああ、協会に会費を払わないから冷遇される……とかね」

俺はわざとらしく小声で話す。

「それとあまり大きな声じゃ言えないけど、そういう協会があった方が、引退した後にそこでいいポジションにつけたり」

「よくあるよね。現役を引退した人が、どこどこ協会の幹部に収まる……みたいな」

「そうそう、いわゆる天下りみたいなやつな」

「おーっと、コーちゃん、ホントに気を付けた方がいいよ。消されちゃう」

ユーヤが人差し指を立てたので、俺も慌てて両手で口を押さえる。

こういうノリに付き合ってくれるのもこいつのいいところだ。

「せっかくだ。世の中にはどんな協会があるか、調べてみないか?」

「面白そう!」

俺たちはさっそくスマホをいじり始める。

「おっ、『揚げパン協会』なんてのがあるぞ!」

「美味しそう! 僕も『折れ線グラフ協会』なんてのを見つけたよ」

「ハハハ、他のグラフは無視かよ。円グラフとか棒グラフとかさ」

これがなかなか面白い。

「『フロッピーディスク協会』なんてのもある。どんな活動してんだろ」

「『消しゴムのカス協会』もあるよ。ひたすらカスを集めるのかな?」

「『バッグクロージャー協会』? ……ああ、食パンの袋留めるやつか」

調べてみると、世の中わけの分からない協会が本当に多い。

石を投げれば協会に当たるんじゃないかって感じだ。

「『鼻くそはおやつに入るか協会』だってさ。そもそも食うものじゃないだろ」

「『できる限りエアコンつけずに耐えよう協会』もあるよ。熱中症で倒れそう」

「『昨日の翌日は協会』……ただのダジャレじゃねーか!」

「『ミステリー小説の犯人ネタバラシ協会』だいぶ悪質な協会だね」

おふざけで設立されたような協会も多い。

一種のネタでホームページだけ作って、実際に活動なんかほとんどしてないんだろうけど。

とはいえ、世の中の知らなかった部分を垣間見ることができてなかなか興味深くはあった。

ここで俺はふと、こんな思いつきをした。

(『山里幸二協会』で検索してみるか)

すると、本当に『山里幸二協会』なる協会が出てきた。

(うお、あるのかよ! すげー!)

この時はまだ、俺は「俺と同姓同名の人に関する協会なのだろう」とタカをくくっていた。

ところが――

(え……?)

ホームページを開くと、俺の写真がでかでかと載っていた。

間違いなく俺だ。見間違いなんかじゃない。

スマホを持つ手が震える。

この協会のホームページには俺の個人情報が全部載っていた。

年齢、住所、身長、体重、趣味や特技、学歴、勤めてる会社、恋愛歴、好物は何か、どんなゲームをやるか、どんな本を読むか、健康診断の結果、さらには性癖まで……。預金額まで把握されてるじゃないか。

呼吸が荒くなる。

(なんだこれ!? この協会の目的はなんだ!?)

活動理念にはこう書いてあった。

『山里幸二の全てを知り、そっと見守り、愛でる協会です』

冷えた汗が背中を流れた。変な話だけど『山里幸二に恨みがある協会です』とかの方がまだよかった気さえしてくる。

さらに「山里幸二のスケジュール」という項目をタップする。

そこには俺の一日一日のスケジュールがびっしり網羅されていた。しかも情報が早い。今日のことまで記載がある。今朝起きてから何を食べて何をして何時に出かけて、喫茶店でユーヤと会うことまで書かれている。

危うく俺は悲鳴を上げそうになった。

恐る恐る「協会員」の項目をタップする。

会員数は……男女合わせて86名。多いな。100人を目指しているらしい。

この世に86人も俺の全てを知って、愛でて見守りたいなんて連中がいるのかよ。

(じゃあ、この『山里幸二協会』の会長は!? 会長(ボス) はいったい誰なんだ!?)

会長名の欄。そこには俺がよく知っている名前が書かれていた。

俺は目の前に座っているユーヤを見た。

ユーヤは目を細め、俺に向かってうっすらとした笑みを浮かべた。